前回は「試してカッテン」と題して、カスタムイメージ Special Edition「夏天(KATEN)」の実力を三浦半島で撮影した写真をお見せしながら紹介した。青い空に広がる海、おそらくこれは開発者が想定していた一番のシーンだと思う。つまり夏天の得意とするシチェーションだ。それでは逆に、普通の街中や都市部ではその相性はどうなのかと思うのは自然の流れである。
今回は夏天を使って都市風景を撮影してみたレビューと、後半ではHD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WRについて所感を述べようと思う。9月になっても厳しい残暑が続きそうだが、まだまだ夏天映えするということで好都合なことだ。
結論から言えば、都市風景と夏天の組み合わせには相当苦労した。海外から来た人がよく言うように、日本の街には様々な色で溢れている。夏天の特徴である「空の青」や「木々の緑」を強調させるということは、その補色である赤から黄色にかけての影響が強く出てしまうということだ。三浦半島のような自然しかない所では問題ないが、街中ではそういう色はこれでもかというぐらい溢れている。特に赤色が強く出てしまうと不自然な印象になってしまうのだ。
夏天をベースに編集で補正するという人もいるだろうが、撮影時に夏天ですべて完成させたいという人もいるだろう。あれこれ試行錯誤して自分なりにその解決法が分かったので参考にしてみて欲しい。夏天と都市風景の組み合わせた絵は独特で不思議な世界観になる。
・「夏天(KATEN)」をカスタマイズしよう
色飽和をさけることが一番重要。高コントラスト=色の濃度が増すので気をつける。
彩度-1、色相-2、キー+1、コントラストは弱めといったカスタムが良いだろう。コントラストに関しては天候にもよるので最初に数カットで決めてみよう。
・色温度を一定にする
夏天の特性上特に気になるのは赤色が引っ張られること。特に街中では看板から壁、また意外かもしれないがアスファルトといった中にも赤成分が入っているので、赤浮きしないようにホワイトバランスはオートではなく色温度指定にした方が安定する。
夏天は晴れている日でないとその特性をあまり発揮できないので、5200Kあたりに設定するといいだろう。
・被写体が日陰に入らないように構図を考える
陽が当たっていると発色がよくなるので、日向と日陰が混在するような場所ではメインが日陰に入らないようにしよう。もしくは日陰に欲しい被写体がある場合、工夫して画面全体を日陰に収めよう。
色は露出によるところもあるので、都市風景×夏天は、空のバランス、被写体に当たる光をよく見極める必要がある。これを言い換えれば、夏天を使いこなせるようになれば光を読むことができるということになる。スナップでは最も重要なスキルだ。
以上のことを注意すれば夏天で都市風景をいい具合に撮ることができる。前回と同様作例では最低限のレタッチしかしていない。若干の色補正とノイズ追加といった具合だ。色が交錯する東京の風景ではなかなか独特の風合いを出してくれる。カスタムイメージをベースに自分だけのカラーを作れる様になれば表現の幅も広がるはずだ。
HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL LimitedをK-3 Mark IIIにつけると約32ミリ、HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limitedのようなパンケーキレンズも携帯性に優れて良いのだが、このずっしりとした感じは撮る意欲を増幅させてくれる。都市風景を広角レンズで切り撮る際、一見それっぽくなるのだがよく見ると何を撮っているのか分からない、作者の意志が不在の写真になりがちである。そういう気難しいところもあるが、超広角でしか表現できないシーンもある。
とにかくこのレンズ、開放から使える優等生である。開放f2.4でも周辺部がしっかり解像しているのには驚きだ。最短0.18mという距離に加え、ボケ味がとてもキレイなのでうまく使えばポートレートでも活躍しそうだ。今回はストリートスナップでの使用であったが、AFが早く正確なので瞬間を切り撮るのにストレスフリーだった。
もちろん超広角レンズなので8から11あたりに絞ってパンフォーカスのスナップでも快適に使える。こういう時に距離指標があるのは本当に助かる。そう考えるとクラッチ機構でのAF/MF切り替えができたら一味違う操作性のレンズになっていたのだろうと勝手に妄想する。
このレンズ、ボディーの色に合わせるかあえてパンダにするか非常に悩ましいところである。私は黒ボディーにシルバーのパンダ仕様であるが、これもまた格好いい。他社だとなかなかこんな贅沢な悩みができないだけに、両方買ってしまう人の気持ちも分かる気がする。
プロの撮影現場では写り込みを気にしてシルバーを選ぶことはまず無いが、あえてシルバーにすることによって自分の為に撮っているという心構えになる。白か黒か、これは本当に悩ましい問題。シルバーは外装部に施されたアルマイト処理によっていぶし銀のような重厚な存在感を放っている。こればかりは個人の好みなので、これから買おうか迷っている方は是非クラブハウスにて触ってみて欲しい。
最後におまけとして645Zで撮影したものを夏天風味にレタッチしてみた。
秋にはまた新しいカスタムイメージが発表される。夏天のようにどんな名前になるのか気になるところだ。個人的には食欲の秋ということで「石焼き芋」なんてどうかと思っている。