銀一さんが運営するCO-COフォトサロンで開催していた個展が終わり、およそ一ヶ月ぶりにカメラを持って街に出てみるとすっかり冬の光に変わっていた。12月22日まで開催していた個展「POST PETALOPOLIS」は、未来都市の景色を撮るということをコンセプトにしたもので本年も続編を作っていきたいと考えている。

PENTAX K-1 Mark IIに13年ぶりに光学系が刷新されたHD PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8ED AWを付けて街に飛び出す。

写真家にとって個展はそれまで作ってきたものをアウトプットする場。会場に身を置いていると段々とインプット欲が高まり、カラカラに乾ききっていただけに開放感もひとしおである。

マクロレンズと冠するからに等倍マクロや滑らかなボケ味がフューチャーされがちであるが、私の作風に合わせて今回はあくまで100ミリの単焦点レンズとして都市風景を撮ってみた感想を述べていきたいと思う。

100ミリという焦点距離

普段645Zにつけて常用しているTAKUMAR/6X7 105mm F2.4はフルサイズ換算約83ミリなので、画角としてはそれよりもさらに狭い。ただアスペクト比が2:3ということで横に広い分、感覚的にはほぼ同じように感じる。普段から100ミリをメインレンズとしてポートレート以外のモチーフを撮影している人は少ないと思うので、この一本を持って出かけてみるとなかなかに新鮮な感覚を得られるはずだ。

圧縮効果も相まって都市風景によく合う

当然ある程度引きを取らないといけないので、100ミリで撮っていると客観的な視点になる。普段35ミリや28ミリでスナップしている人は是非新しい世界が覗けるのでオススメしたい。いつも撮っている場所がまるで違って見えるはずだ。焦点距離を変えることは自分と被写体との関係性を再考することであり、固くなった視野をほぐす効果もある。

また前ボケを使った構図など、100ミリという焦点距離ならではの切り取り方もある。上の写真はf11まで絞っているが手前の植木がちょうど良くボケてよいアクセントになっている。これにより圧縮効果によってフラットになりがちな画面に奥行きを入れることができる。

画質

被写体の質感描写が凄い、ディテール・立体感ともに素晴らしい

初日、撮影データを見てそのシャープさにまず驚いた。画質はセンサーとレンズの組み合わせ、さらに生成されたデータをいかに処理するかで決まる。どれかが欠けても最終的なアウトプットのクオリティに影響が出る。パープルフリンジを減らすために特殊分散(ED)ガラス、異常低分散ガラスを新たに採用したとのことだが、電線や金属のエッジが多い都市風景では特に気になるところだが全く出ていない。

逆光にもえらく強い。やはりデジタル向けに光学性能を新しくするとここまで差がでるのかと改めて実感した次第である。

RAWデータからPhotoshopを使って自分の色に持っていくことで作品としている身からすれば、元データはとことん解像度・階調性が優れているのに越したことはない。そこからフィルムライクのようにあえて画質を落とすのも良い。潤沢な撮影データはレタッチの選択肢が広げてくれる。オールドレンズが流行っている昨今だが、画質というものは落とすことはできても上げることは相当困難なので正しい進化だと思う。

今回掲載している写真はほぼ「ISO200 f11 1/500 Mモード」で撮影しているが、このレンズは開放f2.8から5.6まで円形絞りになっていることもあってボケがとろけるように美しい。普段は絞る派でもついついとろ~りとしたボケを味わいたくて開放付近で撮りたくなってしまう。

コントラストが落ちがちな日陰でもしっかりとした描写を見せてくれる

このレンズ、開放で遠景を撮っても多少の周辺光量落ちは認められるものの、とにかく画質が良い。周辺の流れも二段ほど絞ればほぼ無くなると言ってよい。開放から実用範囲というのがこのレンズの実力のようである。それゆえに撮影者はボケといった表現に直結する絞り値だけに注意すればよいわけだから一層撮影に集中できるはずだ。

▼中央部の切り出し / 絞り値別

▼周辺部(右上)の切り出し / 絞り値別

国道1号線の陸橋から絞り値を変えてテストしてみた。ピント位置は画面中央の道路標識である。中央部と右上の周辺部の画質変化を見ると、一段絞ったf4から安定した画質になり、f5.6からは十分な結果といえる。個人的にはf8から11あたりが最も良好なデータであると感じる。そこからは回折現象によって徐々に甘くなっていく。絞り込んでもf22が限界というところだろうか。

使用感

焦点距離のわりにはコンパクトで非常に手に馴染む。AFも早く、被写体を見つけてからさっと構えてもジャスピンだ。100ミリを付けていながら機動力が高く、スナップ的な撮影でも快適に取り回せる。

マクロレンズだと接写を前提にしているせいか、マニュアルフォーカスで使った場合に無限遠あたりの回転角が非常に小さいレンズもあるが、これは適度な量があるのでピントが非常に合わせやすい。これはかなりのプラスポイントだ。金網越しなどどうしてもマニュアルで撮らざるを得ないシチュエーションもあるので、クイックシフト・フォーカス・システムと合わせて非常にストレスなく撮影できる。

住宅街に出現したゴジラ?

さらにファームアップでフォーカスリミッターが使えるようになり、近距離・遠距離の切り替えができるようになった。今回のように使う分にはマクロ域は使わないので非常にありがたい。infoボタンで呼び出されるコントロールパネルにショートカットを割り振ることができるので是非オススメしたい。

本音を言えば物理ボタンの方がやり易いのは否めないので、最初からレンズ本体に付いていたら完璧だった。

今回はマクロ域ではなく通常撮影にHD PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8ED AWを用いて使用してみた結果、とても満足のいく撮影となった。条件が当てはまると645Zで撮影したものに肉薄するものもあり、コンパクトな組み合わせながらもポテンシャルの高さに驚いた。

ハイライト部の描写も優れているので冬の綺麗な光を捉えるのに最適なレンズとしてもオススメしたい。