※この記事は、ペンタックス(PENTAX by RICOH IMAGING)Facebookページからの転載です。

こんにちは。Andyです。たまにはハードの話をします。唐突ですが「スポット測光」を使うことはありますか?
「分割測光」「中央部重点測光」と並ぶ測光方式の一つで画面中央、画面全体に対して約1%のごく狭いエリアだけで露出を測る方式です。

画面全体を細かく分割してその他の情報を加味して総合的に露出を演算する「分割測光」に対して、ある1点だけを測光するので、測光する部分の反射率や特性が分かり、補正値が正しく判断出来れば、画面内の他の要素の影響を受けずに正確な露出を決めることが出来ます。
ただし測光範囲が非常に狭いので、少しでも測る場所が変われば正確な露出は得られませんし、測定した被写体に対して正しい補正値を理解していなければ、方式だけ「スポット測光」を選択しても意味はありません。

この「スポット測光」、風景写真やマクロ撮影などで、「画面内のこの被写体のこの部分を測定してどれだけ補正をすればよいか」があらかじめわかっている時にとても頼りになるのですが、以前の機種では画面中央でしか測ることが出来なかったため若干不便でした。
構図上、測定したい被写体が画面の中央に無い場合には、一度測光するためにその被写体を中央に置いて測光して、AEロック操作をしてから撮りたい構図に戻す、という作業が必要でした。特に三脚での撮影時はそのためにパン棒を緩めて構図を変えて測光し、また撮影する構図に戻す、というあまり現実的ではない撮影フローが必要でした。

実はK-3以降の機種では、そんな不便をしなくていいように、スポット測光の測光エリアを移動することが出来るようになっています。操作にはあらかじめ以下の設定が必要になります。ここではPENTAX KPを例に説明します。

1.測光方式をスポット測光に選択する(撮影MENU1「測光方式」)


2.   Cメニュー1-5「測距点と露出の関連付け」を「2(オン)」に選択する

3.  AFエリアを「セレクト」に設定する。(「AFボタン」を押しながら「後電子ダイヤル」を操作)

この設定後は、測距点を移動すると選択した測距点とほぼ同一エリアでスポット測光が行われます。実際に測光し露出補正して撮影した例をアップしていますのでご確認ください。

一番メリットが分かりやすいのは以前からスポット測光が使われていた風景写真やマクロ撮影など特に三脚でカメラを固定するシーンや、逆光でのポートレートなどですが、ご自身で心当たりがある撮影シーンがあったら応用してみてください。

ところでこの話をすると「でもそもそも測距点のエリアそのものが狭い・・・」とご指摘をいただくことがあります。測距点のエリア=測光エリアになるので確かにそれは否定できません。
がしかし、撮影シーンによってはそれをリカバーする方法があります。それは「ライブビュー」です。前述した設定をしておくと、ライブビューにも反映されます。ライブビューでAFエリアモードを「スポット」にしておくと(この設定は別途必要です)、選択したAFエリアがほぼ=スポット測光エリアになります。


ライブビューではより広い範囲でAFが可能なので、そのままスポット測光出来るエリアも広がります。さらに画面表示でヒストグラムをONにしておけば細かくヒストグラムの状態を見ながら露出を追い込むことも可能です。

もう一つ、「測距点とスポット測光エリアの移動をそれぞれ別々に出来たらいいのに」という声をいただいたこともありました。これについては若干フローが長くなるのでどんな撮影にも向いているとは言えませんが、

1.   前述の方法でエリアを選択して測光して「AEロック」をする。


※KPではAF/AE-Lボタンで併用なので、あらかじめ「ボタンカスタマイズ」でAF/AE-Lボタンの設定を「AEロック」に設定しておきます。

2.もう一度測距点を任意の場所に移動して撮影する

というプロセスを踏めば、測距点とスポット測光エリアを別々に選択することは可能です。

スポット測光では頻繁に露出補正操作をします。「ボタンカスタマイズ」⇒「電子ダイヤル」で空いているダイヤルに露出補正を割り当てたり、スマートファンクションで「設定ダイヤル」で露出補正が出来るようにしておくと撮影がよりスムーズになります。



左)分割測光で撮影。全体に占める白の割合が多いので若干アンダーになっています。
右)コーヒーミルの茶色い箱の一番下の暗い部分をスポット測光し、-2.7の露出補正をして撮影。

 



左)ドリップポットの一番明るい部分をスポット測光し、+2.0の露出補正で撮影。被写体の色や反射率に対して正しい補正の知識を持っていれば正確な露出が得られます。そしてこの一連の流れを構図変更せずに行えることが「スポット測光のエリアを移動できる」ことのメリットです。
右)試しにドリップポットの一番明るい部分をスポット測光した状態で露出補正±0で撮影してみたら大幅にアンダーに写りました。このように「スポット測光」だけをしても意味がないということがわかります。

スポット測光を活かして秋の撮影の露出を極めてみませんか?