1月のお題は…『自然の造形』

小林義明 師範

自然はときおりびっくりするような造形を見せてくれます。この写真は氷が造りだした怪獣です。ウルトラマンにでも出てきそうな感じではないでしょうか。今回のテーマでは、このような自然が生み出す造形を探してみてください。大きな景色だけではなく、注意深く自然の形を見つめることできっと面白い造形を発見することができますよ。

 

 

小林義明 師範からの1月のお題は『自然の造形』でした。
このお題に対して挑戦してくださった方の作品と、師範からの添削コメントを併せてご紹介します。

>>小林義明 風景・ネイチャー道場『1月前半分の結果』はこちら

1月の挑戦者その4:水野源さん

流れの速い川の中にある倒木の枝に、様々なかたちの氷がついていました。
その中でもひときわ奇抜なかたちをしていたのが、枯葉を巻き込んで凍結したこれでした。
生き物か、あるいは花のようにも見えるそれを、ブレに注意して水飛沫といっしょに写しました。

水野源
北海道在住、男性。2014年に北海道に移住してから、本格的に写真を学びはじめました。北海道の風景や動物が好きで、撮影を続けています。PENTAX K-1 Mark IIとHD PENTAX-D FA150-450mmF4.5-5.6ED DC AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

小林義明 師範からの添削コメント

 

流れに落ちている枝についた氷。川の流れのなかで面白い素材をみつけている。撮影データを見ると450mmで撮影しているので、川の側を歩きながら、じっくり探した結果なのだろう。作者の被写体を探す目はいいと思う。

だが、その魅力を引き出して絵にするにはいくつかの足りないところがあった。なによりも氷が目立つように画面構成することが大切で、距離があるので仕方ないのだが、もう少し氷を大きく画面入れたかったね。ただ、このときに遠いからといって流れの中に入るようなことはしないようにしよう。水の流れは意外と強く、流れの中で転倒したら怪我をするだけでなくカメラも水没なんてことになってしまう。最悪、流されて悲しい事故になる可能性もある。無理はしないように。

脱線したがここで注意する点は、流れの白く見える部分のほうが強く光が当たっているために目立つこと。スポットライトが氷に当たっていればこのフレーミングでも氷を見せることができるけれど、実際の光の当たり方を考えると、ちょっと難しい。また、1/400秒という速いシャッター速度で撮影しているために、流れのブレ具合が中途半端になってしまった感じがある。もっと遅くして流れを滑らかにしてはっきり写るのは氷だけという見せ方にすれば、いくらか氷を目立たせることもできたはずだ。しかし、木の枝についていることを考えると、氷のほうもぶれてしまって難しいだろうか。

もうひとつの見せ方として、この流れをもっと速いシャッター速度で写し止めてみるのも面白かったのではないだろうか。光の具合や切り取れる画角から、このシーンでは流れの白いところがいちばん目立つ。この部分を1/1000秒かそれ以上の高速シャッターで写し止めるのだ。
この流れを写し止めるとどんなふうに写るかイメージしてみよう。飛沫が写し止められるだけではなく、水面が氷のように見えて来る。実際に凍っている部分と流れている部分が一緒になることで、ちょっと不思議な見え方をしたのではないだろうか。
肉眼では見えない一瞬を写し止め表現するのも写真の面白さ。水が流れているときはこんな形をしているのか!という発見にもなるだろう。

写真の適切な撮り方は、どの場所でも撮影条件によって臨機応変に変わっていく。いま自分が立ち会っている景色をどう撮ることで自分のイメージを見る人に伝えられるようになるか、工夫してみよう。

1月の挑戦者その5:なかきょんさん

「投げ縄」霧氷の出た朝のお散歩中に見つけました。

なかきょん
栃木県在住、男性。フィルム歴は長いのですがデジタル歴は少ないです。PENTAX K-1とsmc PENTAX-FA 100mm MACROで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

小林義明 師範からの添削コメント

 

木の枝にビッシリとついた霜。そこには小さなクモの糸がかかっていて霜がついている。小さくも美しい被写体をみつけたね。このように霜がついていると遠目に見ても景色として美しいけれど、近くでジッと見つめてみるのも面白い被写体だ。

クモの糸についた霜にはほぼ全体にピントが合っていて、ピントの合わせ方はだいたい良いと思う。撮影データではF4とあまり絞り込んでいないのだけれど、枝についている霜もきりっと見せるために、もう少し絞り込んでも良かったように思う。
また、マクロレンズを使って撮影しているので、もっと近寄って霜の形そのものを見せるようにすることで形の面白さや意外さが伝わるようになるのではないだろうか。クモの糸が網となっていれば、その形全体を見せるような撮り方であればいいけれど、ここではまわりの空間が多すぎるように感じるんだ。

可能であれば、木の枝を入れずにクモの網だけで見せるくらいに大きく撮ったら、より面白くなるんじゃないだろうか。クモの糸のように細いものに、緻密な形をした霜の結晶がついているというところまで見せるようにしてみたかったと思う。
このフレーミングだと白基調の画面の中で黒い木の枝が目立つので、形も霜よりも枝のほうが目立ってしまうのだよね。暗い背景を選ぶことができれば、このくらいのフレーミングでも良かったかもしれない。

見せたい部分をいちばん目立たせるように工夫することで、イメージは伝わりやすくなる。よりイメージに合った被写体を探すことも大切なので、今まで以上にじっくり観察して被写体を選んでみよう。

1月の挑戦者その6:ゴゴカラさん

自然の造形ということでストレートに枯れた花の拡大写真を提出します。
ちょうど背景が雪からの反射で白くなる位置のものを探し顕微鏡の視野風にしてみました。

ゴゴカラ
富山県在住、男性。山の写真を撮るためにカメラを買ったら、写真を撮るために山に行くようになりました。PENTAX K-70とsmc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

小林義明 師範からの添削コメント

 

枯れて葉脈が目立つようになった花。形からするとアジサイ科の花だろう。コメントには顕微鏡風に撮ってみたとあり、その狙いは成功していると思う。
背景には雪面を選んでいるので、真っ白な背景になっている。マクロレンズでめいっぱいクローズアップして被写界深度を深くするためにF16まで絞り込んでいるところもいいと思う。基本的な撮り方に関してはいいだろう。

あとはこの被写体を魅力的に見せるということに工夫をして欲しかった。この構図でいちばん目立つのは、葉脈ではなく、葉の形。背景を白くしたことで葉のアウトラインがいちばん目立つようになっている。そのため、この花は花びらが3枚あるように見えるので、その3つの花びらがつくる形を見せたほうが、デザイン的にもきれいに見えたのではないだろうか。
この葉脈の部分だけを見せるとしたら、もっとこのなかに視点を引きつけるようなアクセントとなる部分が欲しい気がする。例えば虫食いの形がハートになっている、というものがあれば最高ではないだろうか。マクロレンズを使ってクローズアップするときに陥りやすいのが、ただ大きく撮影しただけになってしまっていて、どこをいちばん見せたいのか分かりにくくなってしまうことだ。

あと、もう一点だけ。作品として人に見せるときには、きちんとゴミ取りをしておこう。センサーについた小さなゴミは絞り込んで撮影すると見えてくる。とくにこのような白い部分が多いと目立つので、作品の仕上げとして、必ずチェックしてゴミ取りするように。

自分の撮りたいイメージを作り出すことができているように思うので、より分かりやすく伝えるためにどうすればいいか、練習してみよう。

今回はあえなく3名とも『門前払い』となってしまいましたが、師範のコメントをご参考にしていただき今後も撮影を楽しんでいただければと思います。

また、記念品として「門前払い ミニ木札」をお贈りします!



 

ぜひ以降のお題にもチャレンジしてみてください!

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