~広い広い世界を、自分の思い通りに切り取れるなんて最高じゃないか。
切り取りの美学 第1回 「切り取ること」
KPを手に取る。グリップに中指、くすり指、小指をかける。親指は、後電子ダイヤルの位置。左手掌でボディ下部を支え、カメラを顔に寄せる。右手親指の第一関節あたりを鼻筋にあてる。右腕は、ライフル銃を構えるかのように、地面と水平に上げ、左腕はしっかりと脇をしめ身体にくっつける。これでホールド姿勢が完成。それからようやく左目でファインダーを覗き、人差し指をそっとふれるようにシャッターボタンの上に置く。これが私のスタイルだ。その全ては、ファインダーを覗き、世界を切り取る快楽のためだ。
ファインダーを覗くことが、どうしてそんなに好きなのか?と問われれば、この広い広い世界を、自分の思い通りに切り取れるからだと答える。
大人になれば、人間関係も複雑になり、しがらみも増える。自分の自由になることが少なく思えてくる。でも、写真は別だ。ファインダーを覗けば、自由に世界を切り取ることが出来る。どんな写真を撮るのかも、どんな表現をするのかも自由だ。
どんな世界であろうとも、自分の目でファインダーを通して世界を見ることが出来る者は、自分が思うように世界を見ることが出来るのだ。とことんわがままでいい。あなたが切り取った写真は、あなたが世界をどう見ているかだ。
あなたがピントを合わせようとしているのは何ですか?美しいものですか?大切な人ですか?楽しい気持ちですか?辛い思いですか?知らせなければならない苦しさですか?
どんな世界を切り取ろうとしていますか?一度でもいいから、自分の頭で考えて言葉にして欲しい。その言葉は、あなた自身で、写真を撮る理由だから。
とにかく、忘れてはいけない。今、愛するカメラを持って世界を自由に切り取れること、その幸せを。