9月のお題は…『身近ないのち』

小林義明 師範

遠くに出かけなくても身近なところでいのちの姿を見かけることはできるはず。都会でも鳥の種類はけっこう多いし、街路樹をじっと見ているとその変化やそこにやってくる虫などもたくさんいる。まずは身近ないのちをみつけることから始めて、そのいのちの魅力を写真で表現してみよう。しばらく時間をかけて観察することも必要だよ。

 

小林義明 師範からの9月のお題は身近ないのちでした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

9月の挑戦者その1:ぷりずなーさん

夕暮れ時、彼岸花を撮りに近所の田んぼへ行ったときに
夕陽に照らされながら一生懸命糸を張っている一匹の蜘蛛に出会いました。

ぷりずなー
長崎県在住、男性。2011年から、PENTAX一筋で撮っています。撮影ジャンルは特に決めてはいません。PENTAX K-1とTAMRON SP AF70-200mm F2.8 Di LD [IF] MACRO (Model A001)で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

夕陽に輝くクモの網がきれいな写真だ。さりげなくヒガンバナのシルエットを入れて状況を伝えることもできていて、まわりの景色もイメージできる。クモの動きを見ると、網を張っているところだね。

さて、この写真で惜しいと思ったのは、クモの位置。クモの体と網の明るく見える部分が重なってしまったことで、存在感が弱くなってしまったように思う。
この構図だったら、いまの位置よりも左か右上の暗い空間にクモが来てくれれば、はっきりと姿が分かるようになって、イメージも伝わる。

クモが網を張りなおしているところのようなので、もう少し待っていたらベストの位置に移動してくれたのではないかと思う。
ただ、太陽もどんどん沈んでいる時間帯なので、クモがイメージ通り動いてくれるのが早いか、太陽が沈んで光が当たらなくなってしまうのが早いかの時間の勝負となったかもしれないね。

クモの位置がこのままならアングルを下げることでもクモを分かりやすく見せられるけれど、空の空間が多くなってしまうしヒガンバナのシルエットがはいらなくなるので、それも難しい。

クモ自体はアクセント的な存在だけれど、画面を構成する要素それぞれがパッと見て分かることは必要だと思うよ。
そのあたりを意識して撮影しよう。

9月の挑戦者その2:高橋ユタカさん

『草むらの王』であるオオカマキリも孵化したばかりの時は脆く
自身の半分にも満たないアリにさえ捕食されてしまいます。
カマキリが好きだからこそ、こうした場面でも手は出さない、
そう決めて彼らの命を撮らせてもらっています。

高橋ユタカ
千葉県在住、男性。子供たちの成長記録から写真にのめりこみすっかり生活の一部となりました。今、表情豊かなカマキリたちの生きる姿を追い続けています。PENTAX K-3 Mark IIとHD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limitedで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

ちいさないのちのドラマをうまく捉えているね。パッと見るとアリの姿が目に入ってくるのだけれど、よく見るとカマキリの子供の足に食いついている。人の目に付かないところで行われているいのちの営みという感じがするね。構図もしっかりしていていいと思う。

この写真で惜しかったのは、ピントだね。
35mmマクロで等倍に近い撮影で揺れやすい枝先と、とけっこう難しい条件だけれど、カマキリの目とアリにしっかりピントが欲しかったところだ。

正確にピントを合わせることと同時に、ISO感度にはまだ余裕があるので、感度を上げて絞り込んでおくことでもうすこし被写界深度をかせぐことができたはず。
背景の玉ボケは小さくなるけれど、カマキリの体もはっきりして意図が伝わりやすくなる。

ピント合わせはマニュアルで行っているようだから、もっと精度を上げるように練習しよう。
チャンスがあれば、何カットか撮影してより良いピントのカットを求めることも必要だよ。

9月の挑戦者その3:Taka-d5さん

近所の公園の池に朝の散歩に行った時の写真です。
仲睦まじい亀の親子のように見えますが、特定外来生物のアカミミガメです。
恐らく誰かに捨てられたのが成長したのでしょう。
その手前には心無い或いは下手くそなアングラーが捨てて行った釣糸が絡まっています。
何ともやるせない光景です。

Taka-d5
神奈川県在住、男性。一期一会の景色や野生との出会いを求めて地元の丹沢の山々を主に歩き回っています。PENTAX K-3 Mark IIIとHD PENTAX-DA 55-300mm F4.5-6.3ED PLM WR REで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

二匹のアカミミガメが向かい合って何か話をしているような感じで、おもしろい瞬間を捉えているね。光の選び方も良く、顔のあたりのラインライトがとてもきれいだ。

作者は仲睦まじい親子のように見えるということだが、まさにそんな感じだね。カメは卵を生んだらそのままだから親子の繋がりというのはないと思うけれど、そんなふうに感じられるように見せられているのはいいと思う。この写真を見るみんなが共感できるところだね。
手前に見えている釣り糸が絡んでいるところは余分な感じもするけれど、某cmのように人間の愚かさを伝えるということでは意味がある見せ方だね。

さて、この写真ではこの二匹のカメが向き合っているところを強調したいところ。
顔の後ろにある甲羅の反射が強いために、顔へ視点が向きにくくなっている。C-PLフィルターで反射を抑えるかアングルを下げてこのあたりが見えないようにする方法が考えられる。
水面の反射の具合や撮影データを見ていると、C-PLフィルターは使っているかもしれないね。

このようなコントラストで被写体を見せる構図では、ハイライトが目立ちやすいので、画面のどこがハイライトとなるかを読み取ることが大切。肉眼での見え方と違ってくるので、カメラで再現されるイメージを持って景色を見るようにしよう。

 

師範より9月前半の総評

何度か「いきもの」をテーマとしていることもあって、レベルアップしてきているのが実感できる作品がたくさん集まった。とてもうれしいよ。

遠出しにくい状況のなかで、身近なところを再発見できている人も増えているのではないかと思う。
この調子で、身近なところでいろいろな被写体を探してみて欲しい。

写真は気持ちの持ち方次第で、いくらでも被写体をみつけられるものだよ。

 

記念品のお届けについて

ぷりずなーさん、高橋ユタカさん、Taka-d5さんには「免許中伝ミニ木札」をお贈りします!

記念品は10月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、9月前半のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

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以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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