こんにちは、ジョニーです。
以前、インターバル撮影の記事の中で、「別の機会でお話しします」と書いたカメラのシャッター速度の表示と制御の誤差についてお伝えしていきたいと思います。
前回の記事はこちら
前回の記事では、カメラのシャッター速度はフィルム時代からの慣習で、カメラに表示しているシャッター速度と、実際のシャッター速度の制御値にちょっとした誤差を持っている、という話をしましたが、今回はその理由について説明していきます。
数字がたくさん出て来て読むことも無理だ!と思わず、難しいことは書いていないので気楽に読んでください。
では、2つのシャッター速度に関して説明して行きましょう。
最初から結論
数字が本当にダメ、見るだけで気分が悪くなる、という方々のために、結論から書きましょう。
露出モード(AUTO/P/Sv/Tv/Av/TAv/M/X)の場合、カメラの表示に誤差を含んだ数値で制御される場合がある、と考えていただければ良いかと思います。
どの場合に誤差が発生するのかは下の詳細説明でお伝えしますが、表にあるように一番大きな誤差を持つのは表示時間の30″に対して、制御時間が32秒になるケースです。
露出モードがバルブモードかアストロトレーサーの場合でタイマー露光をオンに設定すると、シャッター速度を最短10秒~最長20分(アストロトレーサーの場合は最短10秒~最長5分、最長時間はレンズの焦点距離とカメラの向きによって変化)に設定できます。
この機能をバルブタイマーと呼びますが、バルブタイマーではカメラの表示と同じシャッター速度で制御されます。
露出モードがバルブモードかアストロトレーサーの場合でタイマー露光をオフに設定すると、ユーザーの操作に応じてシャッター速度が決まります。
カメラの表示はBlubとだけ表示されるので、好きなシャッター速度で止めることが出来ます。
では、なぜ露出モード(AUTO/P/Sv/Tv/Av/TAv/M/X)の場合に正しい数値を書かないのか?16秒で制御されるなら、16秒と表示する方が良いだろう。
逆に、15秒と表示するなら、15秒で制御した方が良いだろう。
そう感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私もデジタルカメラになってからカメラを触ってきた世代ですので、一度社内で提案したことがありますが、「昔から規格で決められていて変更が出来ない」というのが結論になります。
また、フィルムカメラからカメラを趣味にしている方にはこれから発売するカメラで急に動きが変わってしまうことで、これまで撮影してきた撮影結果と異なってしまったり、設定する際に工夫をしてきた知識や経験が使えないだけではなく撮影の妨げになってしまったり、違和感を感じることが想定されます。そんな事情もあり、今更変えられないまま現在に至っています。
ここからちょっとだけ詳しく書いていきましょう。
はじめに
結論の後に初めにが来る新しい展開です。
TvモードやMモードなどで使われるシャッター速度と、アストロトレーサーやバルブモードのバルブタイマー(バルブモードでのバルブタイマーはPENTAX K-70で初搭載)には同じ表記でも露光時間に差異があります。
実際にどんな違いがあるのでしょうか。
露出モード(AUTO/P/Sv/Tv/Av/TAv/M/X)のシャッター速度
通常の露出モードでは、フィルム時代からの慣習に従ったシャッター速度で制御を実施しています。
簡単に書くと1EV単位のシャッター速度が2のべき乗で制御されています。
”2のべき乗”とか、なじみがない言葉ですね。
単純に2のべき乗の計算値を表記すると、理系の人にはなじみがある数字ですが一般的ではありませんし、直感的でもありません。
会話の中で「1/8000(はっせんぶんのいち)」と話すのと「1/8192(はっせんひゃくきゅうじゅうにぶんのいち)」と話すので、会話が長くなりますし、活舌の悪い私はかんでしまう恐れも出てきます。
また、カメラのファインダー内LCDやステータスLCDでは古くから7セグメント(7本の棒で数字を表示する方法)の表示器が使われていますが、下の桁は0しか表示が出来ないので1/8192だと都合が悪かったりします。
そこで、少し丸められた数値をカメラ上の表示で使用しています。
表を見ていただくとわかりますが、赤文字の部分で誤差が発生しています。
最長のシャッター速度 30秒の時に2秒も誤差があります。
そんなに!と驚かれる方、前に問い合わせをしたことがあるという方、ネットで調べたよという方、さまざまな方がいらっしゃるのではないでしょうか。
バルブタイマー
PENTAX K-70で初搭載したバルブタイマー機能で、現在はPENTAX K-70、PENTAX KP、PENTAX K-1、 PENTAX K-1 Mark IIに搭載されています。
モードダイヤルをBに設定した状態で、ステータスクリーンやライブビュー状態の撮影画面でグリーンボタンを押すことで、通常のバルブ操作とバルブタイマーを切替えることが可能です。
バルブタイマーになると最短10秒~最大20分まで、アストロトレーサーの場合は最短10秒~最大5分まで、設定できるようになります。
こちらのバルブタイマーは、前述した設定値30秒 = 制御値32秒のしがらみが適用されず、設定値通りの撮影時間になります。
仮に、シャッター速度 30秒で2秒の誤差が、シャッター速度が10倍の300秒(5分)になった時、誤差も10倍の20秒になり、同じように40倍のシャッター速度 1200秒(20分)になった時、誤差も40倍の80秒(1分20秒)になってしまう、としたらさすがに誤差が大きすぎるだろう、ということで、K-70の仕様策定時に設定値通りの数値で制御することに決定しました。
バルブタイマーは天体撮影や星景撮影を想定していることもあり、撮影の終了のタイミングが把握しやすいことも重要視しています。せっかく長い時間をかけて撮影したのに日が出てきてしまって写真がダメになってしまった、となっては残念ですからね。
誤差を把握したうえで使いこなす
今回はシャッター速度の表示と制御の誤差についてお伝えしてきました。
どちらが良いという話ではないと思いますので、撮影シーンで誤差があったなと思い出しつつ、シーンに合わせてお持ちのカメラを設定していただければと思います。