製品:PENTAX K-3 Mark III ボディキット シルバー、レンズ:HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited

総合評価 星5つ

楽しい。かつて一眼レフを世に放ったメーカーが、自ら一眼レフを継承する。そのマイルストーンとして記憶すべき歴史的な機体であると思った。まさにペンタックス100周年を記念すべきカメラだ(多少遅れたことはいつものことだ、目を瞑ろう。開発者はそのつもりで創っていたのは間違いない)。気持ちのいいファインダー、キレの良いシャッター、信頼できるAF性能、多種多様のレンズが使用可能、自然で美しく調教された画質。一眼レフを媒介とした価値ある写真体験。ペンタックス・ステートメントを改めて読み直してみても、それを体現しているカメラだと改めて理解できるし、現時点でK-3 Mark IIIは頂点に立つカメラの一つだと思う。今後のペンタックスの礎になるカメラであることは間違いなく、これをベースにしたKPシリーズや、エントリー機など妄想が膨らむ。当然、次世代K-1系のハードルはいやもうなく上がってしまったと思えるわけで、別の意味で長続きする楽しみを提供してくれる、罪作りなカメラだと思う。素晴らしいカメラを世に出してくれた開発スタッフに感謝!思う存分、一眼レフを楽しみます!

製品コンセプト 星5つ

完璧。K-1というフルサイズがある以上、APS-Cならではの機動性、即応力といったものがK-3路線に求められていたはずで、開発チームはファンの高い要求から逃げることなく真っ向から挑戦し、そしてやり遂げたと思う。ペンタックスの伝統・お家芸である小型高性能を現代レベルで満足できるまで昇華させた正統な一眼レフカメラ。ファンとして発売までにヤキモキしたが(笑)、手にしたカメラの高い完成度に溜飲が下がった。フィルム機MXにおける『全機能凝縮・マイクロ一眼 』、*ist Dの「世界最小・最軽量」の誇らしい表記、K-7における『プレミアム・スモール』。カタログを手にしてワクワクさせるこれらの名コピーとともに、ペンタックス=小型高性能という哲学をインプリンティングされた身としては、今回の製品(いや作品)にきちんと継承されていることを実感し、感動する。重ねて感謝したい。”そうそう、これこれ。ペンタクスはこうでなくっちゃ”と、手にした瞬間から伝わるこの感じ。手のひらに収まる『本物』の実感。抜けば玉散る氷の刃。まさにペンタックスの王道継承。工業製品のジャンルを超えて、ここまで高度にまとめ上げたプロダクトはそうそうお目にかかれないのではないだろうか。そういえば、カタログなどにキャッチコピーがない!余分な言葉は必要ないということか。これも画期的!

光学ファインダー 星5つ

満点。すごいとしか言いようがない。印象ではペンタックス歴代で最高。他社を含めてもだろう。歪みがなく、クリアで、色転びもなく、とても見やすい。新素材ペンタプリズムだけでなくアイピースの設計もまた、力が入っているのがわかる。液晶パネルを固定して、ボディ側に引っ込めたため(下からみるとえぐれている)、3mm程アイピースが飛び出ていることになるが、覗いてみると(僕は左目で見る)鼻が触れず、アイセンサー連携で液晶の自動消灯もあいまって、完全に撮影することに没入することができる。光学ファインダーファーストの設計思想であると事前の情報からわかっていたが、まさかここまでとは。これでいくと決めたところから、設計者は吹っ切れたんだと思わせる。ブレがない。傑作の証。これはファインダーを覗いてみなければわからない。覗いてみる価値があると保証する!

画質 星5つ

最高。従来から画質の調整に相当時間をかけていると言われているだけに、ペンタックスらしいナチュラルで素直な画質はこのK-3 Mark IIIでも健在であることを確認した。デジタルの介入は最小限に感じられるほど巧みに調整されていることが感じられる。不朽のKマウントであるから、組み合わされるレンズの種類と特徴・テイストは種々千万であるわけで、余分な足し引きをしないでレンズの特徴や表現をそのまま素直に画像を生成してくれることはとてもありがたい。レンズ沼にますます引き込む、ヤバいボディだ。ペンタックスのカメラが残してくれるスチル映像の綺麗さ。これは、今に始まったことではなくて、デジタルに移行する前から、フィルム時代からでもペンタックス調として知られていたと思う。デジタル時代になってからも健在で、他社に見られる同じ会社のカメラでも色の傾向やチューニングがまちまちということもなく、いつもの馴染みのあるペンタックスの色合いという伝統が、今回のK-3 Mark IIIでも守られたことを確認して安心した。本当に嬉しい。

動体性能 星5つ

感動。まず先に、シャッターのキレがすごい。連写性能がダテじゃないため、ワンショットであってもその凄さがわかりやすく伝わってくる。またAF性能も体感でき、納得できるくらい早い。歴代のレンズを取っ替え引っ替え取り付けてはAFの具合を確かめたが、ファインダーから目を離した頃には、顔がにやけてどうしようもなかった。AFの精度も従来通り正確で、その上、合焦が速くなったのだから、日常のスナップを中心とする自分の使い方からすれば、もう十分に実用であって不満点はほぼない。僕自身は動体性能を求めているわけではないが、ここまでの手応えからすると、ペンタックス史上最高なのは間違いがなさそうだ。機械的なテストはエビデンスがつけやすいから、自分以外の熱心なペンタキシアンが上げている報告は信頼できると思う。

操作性 星5つ

しっくり。K-3 Mark IIIだけのことではないし、もう言い尽くされたことだと思うが、ハイパー操作系は最高。フィルム機のZ-1が出た時に、即応性を重視し発明された伝統の機構であるが、ファインダーを覗いている最中に色々パラメータをいじれる操作系はこのカメラでも健在で、とてもよく考えられていると思う。物理ボタンは基本、一部材一機能で、すぐに指が馴染んだ。タッチ操作が可能になったメインモニターも、縦横に位置感覚がつかめてしまえば、すぐにのぞみの機能が呼び出せてかなり便利と感じた。多機能な高性能機であるから、項目はどうしても多くなってしまうが、うまくまとまっていると思う。初見は混乱もしたが、今後はこれがスタンダードだと思うと、慣れてしまった方が得だと思うし、より便利だと実感しているところ。まだ結論が出せていないのが、スマートファンクションの呼び出しのダイアルが独立しているK-1系の方がいいような気がする場面もあるが、全体的に刷新された操作系は成功したと思う。

デザイン 星5つ

うっとり。ペンタックス史上最高の一つではないか。いや、古今東西のカメラ全体を見ても確信してそう思う。プリズムが大型化して大きく主張することになったはずのペンタ部をボディ側に下げ、しかもマウント部からの出っ張りを少なくし、凝縮感を見せるデザイン。『カッコいいとは、こういことだ』と思う。カットモデルを見て感心するのが、大きくなったペンタプリズムと、スーパーインポーズ機構の刷新から、今までの部材位置が全く異なる新設計であること。従来の手法が通用しない分、大変だったと想像するが、新しい思想で大胆に設計したことが成功に結びついたのではないか。素晴らしいデザインだと思う。拘ったというグリップも、以前のK-3や他社カメラのように垂直に落としているのではなく、K-1のように前方にスラントし指掛りに気を遣っているのが伺える。ボディの角は丁寧に面取りがされて、しかも場所によってカーブの比率が違っていたり、サイドの面も緩やかに膨らませるようにカーブしている。小型・濃縮感にこだわっていると思える一方で、妥協しない人間工学のデザイン!手にした瞬間すっと馴染むわけだが、細かい工夫とこだわりがきちんと伝わってくるデザインだと再認識した。軍艦部を上から覗くと、昔のフィルム機のような八角形の造形を隠し味に使っていて、デザイナーのニクい遊び心にイチコロである。手にとって眺めるだけで感銘のため息が出る。ウィスキーが進む。果たしてJリミはどうでる!?

dazzlestar

その他ご意見や、ご購入を検討されている方へのアドバイス

カメラが欲しいのなら、K-3 Mark IIIにするべきだ。このカメラで、もどかしく思うことは、ファインダーの凄さにしろ、官能的な高性能であるとか、写真を撮ることがとても楽しいとか、まずは手にとってみないと始まらないということだ。言葉だけでは本当に伝わりにくいカメラだと思う。しかし、思い出してほしい。カメラが好きになった時のことを。写真を撮ることの楽しさに気がついた時のことを。その時の感動が、このカメラには引き継がれていると、胸を張って言える。手にとって、ファインダーをのぞき、シャッターを押した時に、それは実感として押し寄せる。結果が全てのデジタルだけでは幸せにはなれない。記憶や体験というアナログの価値を支える一眼レフこそが、写真体験を大切にし、価値あるものにしてくれているのだと。日常の中で、一眼レフでその瞬間を切り取るということを見つめ直すきっかけになったK-3 Mark IIIと、それを生み出したスタッフには改めて感謝したい。カメラ好きが、カメラ好きのために創ったカメラである。カメラ好きなら、買うべきだ。