~広い広い世界を、自分の思い通りに切り取れるなんて最高じゃないか。
第10回「雨の日を切り取る」
八月なのに梅雨に戻ったように、何日も降り続く雨。天気予報が数時間後の雨を正確に予測出来るようになっても、雨が降らないようには出来ない。雨を受け入れて、「雨の日写真」を撮りに行こう。ソール・ライターよろしく雨の写真を。
雨の日の相棒は、KP+HD PENTAX-DA 40mmF2.8 Limited。雨の日対策としてKPの防塵・防滴はもちろんだが、全長わずか15mmの超軽量薄型パンケーキレンズのおかげで、傘を持ちながらでも片手でホールドし撮影することが出来るのが嬉しい。軽くはないボディだが、シャッターボタンを始め前後の電子ダイヤルも、片手持ちでも操作しやすい。AFに関しても、カメラが-3EV低輝度対応AFなので、外灯に照らされる濡れたドラマチックな街並みも、正確にピントを合わせてくれる。
(注意:片手持ち撮影の際は、落下防止のためストラップを首にかけることをお勧めする。)
私は雨の日の光が好きだ。雲の天然ディフューザーは地上に柔らかな光を届けてくれる。当然影も柔らかでハッキリとした陰影をつけない。濡れた路面はいつもと違うレフ板となり光を拡散し、ホコリやチリを洗い落とされた空気は光を優しく包み込むようだ。
私にとって、その光は、雨の日に家で静かに過ごす時間のように穏やかだ。普段の生活で疲れた気持ちを、静かに癒してくれる。
あなたは自分が好きな光を知っているだろうか?「夏の光」「夕日」という答えでは赤点だ。光があるから、ものが見えるのだが、光自体を意識することは意外と難しい。光について考えるには、雨の日がむいているのかもしれない。晴れた昼間のパキッとしたわかりやすい光ではなく、薄暗い雨のはっきりしないわかりにくい光。それが理解できれば、自分が好きな光についても知ることが出来るだろう。
光を学ぶには、自分の顔の前に握り拳を作って、光と影を観察するといい。そして、その光の方向と質を言葉にする。いろんな場所、いろんな時間にやってみる。わかりにくければ、まず影を見ること。影こそが立体を作り出し、光を感じさせてくれる。最初のうちは、そうして、カメラを持っていなくても、光と影を意識するといいだろう。
雨の日は、なんだか嫌だなぁと思う人も多いだろう。写真を撮る人は特にだ。でも、雨の日には、雨の写真。写真だけでなく、「表現する」ということにとってまず大切なこと。それは、目の前の風景を、あるがまま受け入れることだ。決して、その時の自分の感情や価値基準で判断して否定してはいけない。表現するのは、受け入れてからだ。私は、それを自然と出来る人でありたいといつも思っている。
最後が、少し大袈裟になってしまったが、六月生まれの蟹座、雨男の戯れと許して欲しい。