~広い広い世界を、自分の思い通りに切り取れるなんて最高じゃないか。
切り取りの美学 第2回「散歩で切り取る」
仕事が行き詰まった時、人間関係に疲れた時、あなたはどうしますか?
珈琲やお酒でも飲んで息抜きする人も多いかと思うが、カメラを連れて散歩に出かけるのはどうだろう。私はそうしている。
散歩のお供は、KPだ。行き詰まった時の散歩にフルサイズは似合わない。私のお気に入りは、KP+HD PENTAX-DA 40mmF2.8 Limitedだ。お財布も携帯電話も持たず、KPだけを首からぶら下げて玄関を出る。
冬至より少し前、夕方の五時過ぎと言えば、日が暮れ始める。まさにマジックアワーが始まろうとしている。写真を撮る人なら、マジックアワーの美しさは知っているだろうが、手ぶれが気になる時間でもある。でも、連れ出した愛機はKP。ご存知の通り高感度に強く、手ぶれ補正は、撮像素子シフト方式 「SRII:Shake Reduction II」。それだけではない。やはり光学式のファインダーは明るく解像度の高い視野を確保してくれる。だから安心して撮影出来る。
裏路地で出会した真っ黄色の車、マンション裏のゴミ置き場のみどり色した筒みたいなもの、屋根瓦と松の木、薄暗い中で光る駐車場の看板。自分が気になったものを、そのまま自分のペースで自由に撮れば良い。誰にも何にも邪魔されない。切り取ったものに、難しい理屈や常識はいらない。それが自分にとって何なのかは、あとで考えればいい。
はたして、散歩しながら面白いもの、気になるものを取り止めなく撮っていると、ざわざわ、もやもやしていた気持ちが浄化されている。
手がカメラボディと同じくらいに冷たくなったので、家路につく。
その途中、愛機が教えてくれる。わたしは、わたしのままで大丈夫だと。