12月のお題は…『シルエットの景色』

小林義明 師範

一年でいちばん日が短くなる12月、日が低くなり朝日や夕陽を見るチャンスも多くなってくる季節だ。この時期だから撮りやすいテーマということで、シルエットの景色を探してみよう。被写体を逆光でシルエットにするだけでなく、長く伸びる影というのも面白い被写体となってくるはずだ。シルエット表現を成功させるポイントは、形をきちんと見せること。シャッターチャンスやカメラポジションを考えて撮影してみよう。

 

小林義明 師範からの12月のお題はシルエットの景色でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

12月の挑戦者その1:プリちゃんさん

深い森の中夜が明けるころ薄く見えてきた木々。
手前の怪しげな木とその後ろに対座する主のような木、不思議な世界が広がりました。

プリちゃん
静岡県在住、男性。愛用のカメラはK-1。風景写真を中心に撮影しています。PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

青につつまれ神聖な雰囲気の漂う森の夜明け、木の姿をシルエットにして魅力的に捉えることができている。コメントでは奥の霧のなかに霞んで見える木も手前の木と対比させるために意識して入れているということで、奥行きが感じられていいと思う。

狙いは間違っていないのだけれど、この構図を見ていると、どうしても画面左側が気になってしまって、主役である樹のシルエットに視点が集中できないので、今回は免許中伝だ。

このシーン、私だったら左上に見えている枝を入れないくらいにフレーミングするのが正解だと思う。霧で霞んでいるなかではっきりとシルエットで見えているために視点を集めてしまうので、ちょっと気になる。同時に太い幹から伸びている枝が左下隅に伸びているので、その動きを追っていくと画面左側に視点が寄ってしまうんだ。この視点の余分な動きを押さえるために、左側はカットしてしまうのがいいと思う。

もし、枝が伸びる方向を切らないとしたら、余計なものが写らないという前提では右側の太い幹をもう少し中央に配置する構図にすることでバランスがとれるのではないかと思う。ツタが巻き付いている怪しげな感じもより強調できるようになると思うよ。

12月の挑戦者その2:rakuraiさん

晩秋の奥多摩にて撮影しました。
葉の落ちた冬枯れの枝が朝焼けに照らされ、シルエットとなって浮かび上がる光景を何枚か撮影したのですが、
しっくりくるものがなかなか撮れず、考えているうちに日の出を迎えてしまいました。
ふと気が付くと、まるで朝日がまばゆい冬の果実のように木の枝と重なっていたので、
これだ! と思いシャッターを切りました。

rakurai
東京都在住、男性。風景・スナップを中心に、K-1とGR IIIで撮影を楽しんでいます。最近は山岳写真に傾倒気味。PENTAX K-1 とsmc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

きれいな朝日だね。下にはうっすらと雲海などが広がっているようにも見える。CTEでちょっと色を強調しているところも狙いがはっきりしているね。

この写真自体はきれいだと思うのだけれど、今回のテーマが「シルエット」ということで考えると、ちょっと違う感じがしてしまう。この写真の主役は朝日であって、シルエットになっている木々は脇役のように見えてしまうんだ。

コメントでは冬枯れの枝を主役にしようとしているのだけれど、ややまわりにいろいろなものが入りすぎていて、主役である枝がどれなのか分かりにくくなってしまったのだと思う。太陽の傍にある右に向かって伸びている枝を主役にするには、その上にある葉がついた枝や左上の枝が混み合っているところは必要ないんだ。左側に幹も入っているのだと思うけれど、ここも余分な感じがする。

写真で大切なことは余分な部分は見せないで、自分が見せたいものだけで画面構成してイメージを作り上げること。

単焦点レンズで撮影しているので画角を変えることができないのは仕方ないのだけれど、必要であればレンズを変えて撮影することを面倒がってはいけないよ。風景撮影では28200mm程度のレンズはいつも持っているようにしないとどうしても撮り逃してしまうことも出てくるので、よほど厳しいところに行くのでなければ、交換レンズもきちんと持っていこう。

私だったらこんな感じというトリミングしたものをつけておくので参考にしてみて欲しい。

 

12月の挑戦者その3:木瓜さん

日比谷公園の心字池です。ここにアオサギが住み着いていました。

木瓜
埼玉県在住、男性。写真クラブに入会して2年たちました。しかし、まだまだ、構図・ピント位置がわかりません。PENTAX K-5IIsとsmc PENTAX -FA80-320mmF4.5-5.6+リアコンバーターA 1.4×-Sで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

アオサギのシルエット、鳥を知らない人にはなんだか不思議ないきものにも見えるかもしれないけれど、なかなかいい雰囲気で撮影できていると思う。

シルエット表現では被写体の形を分かりやすく見せることが最も大切なポイントで、それはできていると思う。くちばしやアオサギの特徴でもある冠羽もしっかり見せられている。日比谷公園のアオサギということでけっこう人に慣れているとはいえ、けっこうアップで撮影できているというのも立派だ。

気になった点は2つある。
ひとつはピントの甘さ。つよい逆光なのでカメラにとって苦手なシーンではあるものの、もう少しシャープなピントが欲しかった。カメラが逆光で惑わされていてなかなかピントが合わなかったことも考えられるのだけれど、撮影後にきちんと拡大してピントのチェックもしておこう。

もうひとつは背景の扱い方。基本的には明るい部分に被写体を入れることでシルエットをしっかり見せることができているのだけど、くちばしの下あたりがいちばん明るいために視点が引き寄せられてしまう。画面上の赤みがかかった反射を入れたのは間違いではないけれど、少しカメラポジションを左に移動して、画面下の白い空間を減らすことでもっと被写体を強く見せられたと思う。

ちょっと暗く撮影したりカスタムイメージのコントラストを落とすことでも、この明るい部分の階調を引きだして肉眼で見た印象に近づけることもできたはず。

このような反射部分の写り具合は撮って見ないと分からないところもあるのだけれど、デジタルカメラでは結果をすぐに見られるメリットがあるのだから、撮影後のチェックも欠かさないようにしよう。

記念品のお届けについて

プリちゃんさん、木瓜さんには「免許中伝ミニ木札」、rakuraiさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は1月中にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、12月のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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