2月のお題は…『いのちの景色』

小林義明 師範

私のテーマでもある「いのちの景色」。ふたたびこのテーマについて考えてみてもらおうと思う。
いのちの景色についてもう一度説明しておくと、いきものの姿を捉えるだけでなく、どんな環境で暮らしているのかまわりの景色も伝わってくる写真だ。いきものの姿から広い景色まで想像できる写真といってもいいだろう。
これまでの作品も含めてテーマに合った作品を探してみよう。
たくさんの挑戦を待っている。

小林義明 師範からの2月のお題はいのちの景色でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

2月の挑戦者その1:Makiko_KARASUさん

水位が低い川はカラス他たちの露天大浴場である。

Makiko_KARASU
北海道在住、女性。カラスの研究をメインに野生で生きる動物たちを見つめています。同じ行動は二度と見られないという信念を貫き、常にカメラを持ち歩くのが日常です。PENTAX K-3 Mark IIIとHD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR REで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

たくさんのカラスが水浴びにやって来ているところを捉えている。ふだんからカラスを観察して撮影をしているだけあって、驚かすことなく自然な様子を撮影できているね。

さて、観察の記録としてこういう場所でこんな行動をしていたということを残す記録写真として考えれば、これで十分なのだと思う。だけれど、カラスの魅力を伝える写真として考えると、もっと粘ってみて欲しい。

カラスがこのままいてくれたという前提で考えると、私ならもう少し多くのカラスが水しぶきを上げている瞬間を撮ってみたいと思うし、公園的な看板は画面に入れたくない。たくさんのカラスが理想的な動きや配置で画面に入るようになるまで粘っていれば、この場所だけで100枚くらいはシャッターを押していると思う。

もうひとつは、ピントの合わせかた。カラスの動きを止めるためにTVモードで撮影しているのだと思う。アップ気味の撮影ではそれでいいと思うけれど、このような奥行きがあるシーンでは、絞りのことも意識しよう。開放絞りで撮影しているために、画面の中央あたりにしかピントが合っていなくて、手前の水浴びしているカラスはぼけてしまっているよね。F11くらいまで絞ると、だいぶ違ってくるはずだ。

K-3 Mark IIIは高感度でも十分な解像が得られるので、適度に感度を調節しながら必要な被写界深度が得られる設定で撮影しておこう。視点を集める場所がぼけてしまっていると、写真としても伝わりにくくなってしまうよ。

2月の挑戦者その2:あきやんさん

初夏の夕方に田んぼで撮影しました。
サギが夕闇迫る中で田の中の小動物を食べているようでした。

あきやん
長崎県在住、男性。写真を趣味として8年になります。日々精進の毎日です。何気ない毎日も特別な瞬間だと思うようにしながら、日々を大切に過ごしたいと考えています。PENTAX K-1 Mark IIとHD PENTAX-D FA★70-200mmF2.8ED DC AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

夕焼け空が映り込む田んぼのなかを歩いているサギの姿、美しい景色のなかで生きている様子が伝わってきていいね。狙い方は間違っていないし、構図としてもほぼこれでいいと思う。

バシッと決まれば免許皆伝をあげたいところだけれど、主役が曖昧になってしまったので、門前払いだ。

このシーンで大切なのは、サギの姿がきちんと伝わってくることなのだけれど、サギの顔が稲のシルエットと重なってしまって、その存在感が弱くなってしまっている。

いきものの姿を見せる上で顔のあたりはとても大切なポイントで、とくにこのようなシルエット表現では被写体の形をきちんと見せることがいちばん大切なところ。
中央のサギは実体の方の顔が完全に被って分からないし、右の方もちょっと被っているため、主役が曖昧になった。

この顔が完全に水面に抜けるように撮影するだけでずっとサギの存在が伝わるようになってくる。できれば映り込みの方も顔がしっかり分かるようになると理想的だ。カメラポジションを右に移動するかもう少しサギが左にやっているのを待つと、映り込みを含めてサギのシルエットをきちんと見せることができたはずだ。

いきものの撮影では出会ったときにとりあえず撮影しておくことも必要だけれど、その先の動きをイメージしてより良いシーンを狙うようにすることが大切だよ。このときは静かに待っていれば、確実に理想的なシーンを撮らせてもらえたと思うと惜しいなぁ。

2月の挑戦者その3:tokutoku1002さん

秋の恵を満喫している猿の群れに遭遇しました。
厳しい冬の前に出来るだけ栄養を付けておく必要があるのでしょう。
秋の日差しを浴びながら木の実を頬張る姿を捕らえてみました。

tokutoku1002
東京都在住、男性。風景写真を中心に、旅写真やスナップを楽しんでいます。PENTAX KPとHD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

お見事!

小林義明 師範からの添削コメント

 

ニホンザルが食べているのはマユミの実だろうか。暖かそうな陽射しを浴びながら夢中になって食べている姿をうまく撮影しているね。野生のニホンザルは警戒心も高く、人の姿を見るとすぐに逃げてしまうけれど、よほど食べることに夢中になっていたのだろうか。

背景と地衣ゴケのグリーンやサルの顔とマユミの実の赤が適度に配置されていて画面が鮮やかだし、濃い色の中に赤い顔を入れたことでうまくサルの顔に視点を導くことができている。口にマユミの実を入れようとしている瞬間を捉えているのもいいね。

まわりにある枝もできる限りサルの体にかからないようカメラポジションを選んでいるし、まわりの枝もできるだけ目立たないようにできているね。

自然なニホンザルの姿を捉えた腕に、免許皆伝だ。

よりレベルアップするためのアドバイスとして、すごく厳しい見方なんだけれど、若干後ピンになってしまっている。自分のデータをピクセル等倍で表示して確認してみて欲しい。サル右上のあたりで毛へのピントの合い方を見てもらうと分かると思う。
バシッと顔にピントが来ていれば、もっとサルの生きる力が強く伝わってくるようになるぞ。

これって半分はカメラのせいでもあるのだけれど、ピントの微調節を行うことでよりしっかりとしたピントを得られるようになる。時間があるときにゆっくりカメラの調整を行っておくと、より力のある写真を撮れるようになるよ。

師範より2月前半の総評

定番のテーマとなった「いのちの景色」。
時期的に鳥などのいのちの景色が多かったね。逃げられてしまうことも多く望遠レンズが必要になる分、ちょっと難しかっただろうか。

全体的な印象としては、いきものなどと出会ってすぐに撮影したものが多かった感じがする。
いきものが写っているだけでなく、そこからいきものの住む環境や生活がイメージできるといいなと思っているので、もう少し観察しながら撮影するようにしてみて欲しい。

もうひとつは、ピントがちょっと甘いかな、という感じだ。
一瞬のチャンスしかないことも多く、じっくりピント合わせできないけれど、ふだんから的確にピントを合わせる練習をしておこう。

いきものが相手だと二度とないシーンも多いので、撮り逃しがないように日頃から腕を磨くようにしよう。

 

記念品のお届けについて

tokutoku1002さん、免許皆伝おめでとうございます!「免許皆伝看板」「免許皆伝ミニ木札」をお贈りします!
Makiko_KARASUさん、あきやんさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は3月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、2月前半のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

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以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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