5月のお題は…『小さないのち』

小林義明 師範

植物の活動が活発になるにしたがって、ほかのいのちも一緒に動き始める。今回は、マクロレンズを使うような、小さないのちの営みに目を向けてみて欲しい。
アリとかアブラムシなどの昆虫もいれば、前回の芽吹きに続いて小さな花もたくさん咲いている時期だ。私たちはたくさんのいのちに囲まれて暮らしていることを思い出しながら被写体を探してみよう。

 

小林義明 師範からの5月のお題は『小さないのち』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

5月の挑戦者その4:なちゃんさん

エゴノキでオトシブミのつがいが命をつないでいました。
そっと近づいてカメラを向けました。

いなちゃん
長野県在住、男性。庭先の小さい自然を撮るのが好きです。PENTAX K-7とSuper-Multi-Coated MACRO-TAKUMAR 100mmF4で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

オトシブミが産卵の準備をしているところだね。あとは卵を産みつけ葉を巻いていくだけのようだ。森のなかで静かに繋いでいく命の営みに気づき、うまく見せることができている。

構図はとても分かりやすくていいと思う。このオトシブミは暗い色をしているので思い切ってシルエットで捉え、明るい空を背景に選んでその姿を分かりやすくして主役しっかり見せている。
そのほか、葉を切って産卵の準備をしている様子も分かるし、薄暗い感じもこの時期の雑木林の雰囲気も伝わってくる。
トリミングをしているということだけれど、結果的に完成度の高い構図になっていて、正解だ。

さて、今回なぜ免許中伝なのかというと、もっとシャープに撮って欲しかったんだ。MFレンズのためにピントが微妙にずれているのか、または微妙なブレが起きてしまっている。
薄暗いところなので風がちょっとでもあれば厳しい撮影になるのだけれど、このシーンは何度もシャッターを押すチャンスがあったはず。

より完成度を高めるために、感度を上げたりピントを合わせ直すなど、よりシャープに写すようチャレンジして欲しかった。

私もこういった確実に残したいシーンでは、撮影後に必ずピントやブレをチェックするし、可能ならシャープに撮れるまで何度も撮り直しをしているよ。

5月の挑戦者その5:くうさん

ツツジの花の中を飛ぶクマンバチを、ピンクの背景を活かして撮ることを念頭に撮影しました。

くう
東京都在住、男性。K-50からKPへ。趣味は写真ですって言えるくらいに使い込んでいきたい。PENTAX KPとHD DFA 150-450mm F4.5-5.6ED DC AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

クマバチの飛翔シーン、いい感じに捉えることができたね。満開になった鮮やかなツツジの中を元気に飛び回る様子が伝わってくるよ。この瞬間を捉えるために、たくさんのシャッターを押したことだろう。

動きの速いクマバチを写し止めるために感度を上げてシャッター速度が速くなるように設定していて、狙いがはっきりしていていいね。

ピントについてはどのようにしていたのだろうか。AFだとホバリングの瞬間を狙うくらいじゃないと、なかなかピントが追いついていかないよね。もしかすると、MFにして置きピンかな。

今回惜しいと思ったのは、いちばん手前のグリーンのボケが大きくて目立ってしまうこと。

これだけ撮れていればトリミングで仕上げてもいいと思うけれど、ノートリミング、ノーレタッチでの挑戦なので、あえていっておくね。

この構図の作り方はとっさにホバリングをしたところにカメラを向けていたのだとすると、ある部分仕方ないところもあるので、トリミングして仕上げるべき。置きピンをしていたのなら、はじめからこの目立つグリーンを減らすようにフレーミングしておきたかった。

今回は80点のできなので、免許中伝。
構図が完成して95点。そして、難しいけれどピクセル等倍でもシャキッとピントが来たら100点だ。

これで良しとせず、さらなる高みをめざそう!

5月の挑戦者その6:今を生きるカワニナの地図さん

近所の農業用水でタニシの仲間のカワニナの歩いて作った足跡です
まるで上空から見た自分たちの世界だったみたいだったので
ただ残念なことにカワニナがヘドロで見付けずらいのですが
今を生きる自分たちと変わらないのでは思い、これも良しとして撮ってみました

今を生きるカワニナの地図
岡山県在住、男性。とうとう還暦です。これからは孫のポートレート撮影で日々勉強です。PENTAX K-3とsmc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

面白い被写体をみつけたね。まるで地上絵のようにたくさんの線が模様を作っている。これがなにかすぐに分かった人は、よほど自然を好きな人だと思う。実は貝が地面を歩き回った跡で、このシーンはタニシの歩いた跡ということだ。よく見るとけっこうたくさんタニシがいるんだけれど、分かるかな。

いい被写体をみつけているとはいえ、このままではなんだか分からないと素通りされてしまう可能性もある。ここでは写真を見た人に興味を持ってもらえるようにまとめる工夫が必要だと思う。

作者は人間の世界も上から見てみたらこんな感じに見えるのではないかといっているので、この模様が地図に見える場所を探してみるのもいいね。
中央左側に青い丸いものがあって、これも気になるのだけれど、こういうものが複数入ってくると地図みたいに見えるかもしれない。

また、何かの形に見える場所を切り取ることで、見る人の注意を惹くこともできる。

自然の作り出す造形の美しさを伝えるのにも、多くの人が見て共感できる部分を切り取って見せる作業は必要だと思うので、この場合は小さなタニシが作り出すアートを探してみるのがいいのだと思う。

この場所もこれだけたくさんのタニシがいれば、毎日違った模様が描かれていると思うので、根気よく見続けばこれだというアートが描かれた瞬間に出会えるはずだ。

いい被写体をみつけたらそれだけで終わらず、どうしたらイメージ通りに見てもらえるか考えることがとても大切だ。そのためにはたくさん失敗するかもしれないけれど、いろいろ試してみよう。

師範より5月後半の総評

今回もいい作品がいっぱい投稿されていて、悩みながら楽しませてもらった。みんなそれぞれに独自の視点があって、さらに前回のアドバイスもしっかり考えてくれていることが伝わってきたよ。

採用できなかった人はゴメン!
もっといろいろアドバイスをしたかったよ。

さて、続けてのアドバイスだ。

写真は一瞬しか見せることができないけれど、いい写真はその前後やもっと離れた瞬間のイメージも想像させることもできる。
決定的瞬間なんて言葉があるけれど、その一枚からいろいろなことがイメージできるでしょ。

派手さや大きな動きがなくても、時間の経過や次のシーンが浮かんでくる見せ方はある。
出会った瞬間を捉えるだけでなく、どの瞬間を捉えることでドラマが生まれてくるか意識してファインダーを覗いてみよう。

記念品のお届けについて

いなちゃんさん、くうさんには「免許中伝ミニ木札」、今を生きるカワニナの地図さんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は6月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、5月後半のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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