8月のお題は…『雨の日』

小林義明 師範

雨が降っているとちょっと外出するのも気後れしてしまうけれど、思い切って出かけてみると面白い景色が待っている。
水滴とかもいいけれど、降っている雰囲気を上手く表現できると作品の幅も広げることができる。写真に写すには、暗い背景を選ぶと分かりやすくできるので、画面構成やカメラポジションに気をつけながら撮影してみよう。

 

小林義明 師範からの8月のお題は『雨の日』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

8月の挑戦者その1:H’s monologueさん

毎年夏を過ごす湖畔の森で、雨の日の散歩中に見つけた小さな(5mmくらい)キノコです。
肉眼では気づきませんでしたが、液晶画面で確認して半透明の傘の美しさに見とれました。
マクロ撮影の面白さを再認識しました。
コンテストなどには出したことがありませんが、今回お気に入りの写真なので思い切って出してみました。

H’s monologue
神奈川県在住、男性。風景,花,星,登山電車など節操もなく何でも撮ります。PENTAX K-1 Mark IIとsmc PENTAX-D FA Macro 100mm F2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

雨の日らしい、いい被写体をみつけたね。このキノコの種類は分からないけれど、まったく傷みがなく独特の透明感がある傘の質感がよく再現できている。光の読み方やカメラアングルの選び方も良くて、暗い背景がうまくキノコを引き立てている。

雨の日らしい被写体をうまく見せることができているのだけれど、肝心の雨のイメージが弱くなってしまったのが惜しいところだ。

画面を見ていると、水を感じるところがないんだよね。これでキノコに水滴がちょっとでも付いていれば、雨の日というイメージはより強く伝わったことだろう。キノコじゃなくて、まわりのコケに水滴が付いているのでもいいよね。

一枚の写真という世界のなかでいろいろなことを伝えるためには、必要最小限のものを画面に盛り込む必要がある。いい被写体をみつけたときにはためらわず撮影しておくことが大切だけど、さらにイメージを広げてほかに必要な要素はないか考えてみることだ。

雨が降っていたのなら、もうちょっと見ていたら水滴が付くタイミングもあったかもしれないよ。急がずゆっくりと被写体を見ることでイメージが広がることもあるから、待つ撮影もしてみよう。

8月の挑戦者その2:Taka-d5さん

GWに山歩きをした際に雨が激しくなり山小屋で停滞した時の写真です。
小屋の前に出来た水溜りに産卵期で「イボ」が消えたアズマヒキガエルがやって来て
産卵場所を物色しているシーンです。

Taka-d5
神奈川県在住、男性。一期一会の景色や野生との出会いを求めて地元の丹沢の山々を主に歩き回っています。PENTAX KPとSIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC Macro HSMで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

山小屋の前でみつけたヒキガエルということだけれど、このポーズはなんかお風呂に入ってくつろいでいるようにも見えるね。まわりには降ってくる雨粒が写り込んでいて、水面にできたちいさな波紋もシトシトと降る雨の様子をうまく伝えている。

この写真では雨の降っている様子は伝わってくるので、あとはこのヒキガエルが何をしようとしているのかが伝わるようになれば良かったと思う。

作者のコメントでは産卵場所を探しているということなので、このヒキガエルとしては一生のなかでもかなり重要なイベントのひとつとなるはず。その必死な雰囲気が伝わるような動きや表情を捉えられると良かったと思う。

山小屋での撮影ということなので、登山の途中で時間の余裕もなかったかもしれないけれど、もうしばらくこのヒキガエルの動きを見ていたかったな。ちょっと観察する時間を持つことで、よりイメージを伝えやすい写真にできることも多いので、粘ってみることも必要だよ。

8月の挑戦者その3:あおべーさん

6月の大粒の雨の日。
ムラサキツユクサから紫色のしずくがこぼれ落ちる。

あおべー
栃木県在住、女性。足元にある小さな自然や美しい色をしたものを撮るのが好きです。PENTAX K-3 Mark IIIとsmc PENTAX-D FA Macro 100mmF2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

雨に当たって下を向いてしまったムラサキツユクサ。これも雨の日に見られるひとつのシーンだね。雨が降って元気になる花もあれば、うなだれてしまう花もある。きれいな花ばかりが被写体ではないし、いいところに視点を向けているね。

作者は紫色のしずくに惹かれたということだけれど、充分にそこを強調できているわけではない。今回はそのイメージを伝えられるような撮り方について考えてみよう。

まず画面の中で目立つところをあげてみようか。一つは画面中央のぼけているけれど白っぽく見える花びらと水滴の部分。
またピントが合ってしまったつぼみや左側の緑のところも目立っている。ムラサキツユクサを強調するには、左側の茎の部分は減らしておきたいね。

そして、主役となる花やつぼみの部分だが、右側の花びらの先端を切ってしまったのは良くないな。ものの一部分を切ってしまうのは、それを脇役にするという意味合いもあるので、注意しよう。

画面に入れるのはこのくらいのイメージというトリミングをつけておくけれど、さらに右側の空間を増やしたい感じだね。カメラポジションを少し右に移動すると、白く光って見える花びらの面積も少なくなって、右側の水滴やシベを見せやすくなるよ。

いちばん見せたいところを引き立てる構図を考えてみよう。

〔小林義明師範によるトリミング例〕

師範より8月前半の総評

今回はテーマが「雨の日」とふだんと違う撮影条件ということもあってか、ちょっと挑戦が減ってしまったのが残念だった。雨続きだったところはウンザリしてしまったのかもしれないね。

雨の日は大きな景色よりも小さな景色を探すと、意外と近場でも面白い被写体をみつけられる。視点を狭くして身近なところを探してみるといいと思う。

雨が降っている様子を写し込むポイントとしては、暗い空間に雨が降っているところを入れると雨粒が写りやすいよ。また、シャッター速度を変えることで雨粒のブレ具合が変わってくる。興味のある人は試してみて欲しい。

 

記念品のお届けについて

H’s monologueさん、Taka-d5さんには「免許中伝ミニ木札」、あおべーさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は9月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、8月前半のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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