9月のお題は…『身近ないのち』

小林義明 師範

遠くに出かけなくても身近なところでいのちの姿を見かけることはできるはず。都会でも鳥の種類はけっこう多いし、街路樹をじっと見ているとその変化やそこにやってくる虫などもたくさんいる。まずは身近ないのちをみつけることから始めて、そのいのちの魅力を写真で表現してみよう。しばらく時間をかけて観察することも必要だよ。

 

小林義明 師範からの9月のお題は身近ないのちでした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

9月の挑戦者その4:きよどんさん

アルバイト先でコーヒー休憩しようと自動販売機に行ってみると先約がいましたので
驚かさないように撮らさせてもらいました。

きよどん
岡山県在住、男性。ME-Superからのお付き合いですが最近やっとK-1 Mark IIを追加しました。PENTAX K-1 Mark IIとTAMRON SP28-75mmF2.8で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

この写真を見て、「あ〜〜、あるよねぇ」って昔の経験を思い出したよ。一晩中明かりがついている自動販売機には、明かりにつられて虫が集まってくるので、その虫を捕らえるためにアマガエルがやってくるんだよね。このアマガエルはお腹いっぱい食べて、そのまま落ち着いてしまったのかな。カエルが苦手な人はびっくりするだろう。

身近なところにいるいきものの意外性をうまく見せていると思うのだけれど、写真としてはやや説明的になってしまった感じもするんだ。画面に文字が入るとどうしても視点を集めてしまうので、ギリギリまで減らすようにしたいところ。

また、垂直がきちんと出ていることで構図が落ち着きすぎた感じもする。これは逆にいえば動きがないともいえるので、自分が凝視しているような雰囲気を出すために、あえて画面を傾けるだけでも変化が出てくるよ。

この写真を見ていて、私ならフィッシュアイとか超広角でカエルにグンと近づいて撮ってみたいって思ったよ。

時間がなかったかもしれないけれど、この状態であれば構図を変えながら撮影するチャンスもあったと思うので、ワンカットで終わりにせず、いろいろな撮り方を試してみるとより面白い写真が生まれたんじゃないかと思うよ。

9月の挑戦者その5:Day-Oさん

公園のベンチでカラスが騒いでいたので何かと思って見ると、忘れ物の眼鏡を取り合っているようでした。
光り物が好きだと聞いたことはありましたが、実際に遊んで(?)いるのは初めて見ました。

Day-O
神奈川県在住、男性。初心者ですが、この道場のお題を念頭に、カメラをぶら下げて散歩をするのが趣味です。PENTAX KPとHD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR REで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

公園のベンチの上で鳴いているカラスの姿。作者のコメントを見ると、落とし物なのか盗んできたものなのか、メガネで遊んでいるところなのだそうだ。他のカラスとの争奪戦にもなっていたということで、身近ないきものの代表でもあるカラスの面白い行動に出会うことができたようだ。

この写真の惜しいところは、コメントを読むまで状況が理解できないこと。撮影した本人はその前後の出来事を見て知っているけれど、写真を見る人はそれが分からない。一枚の写真でこの前後の出来事までイメージできるような瞬間を捉えて欲しかった。

たとえば、ここにもう一羽のカラスがやって来てメガネを見ているだけでも写真からの感じ方は違ってくるよね。メガネをつかんで飛び立とうとしている瞬間でも見る人の意識はメガネにも向くので、伝わりやすくなる。

どんな写真にも言えることだけれど、言葉を使わずに伝わるよう撮ることができれば、それは最高の写真になると思う。自分の言葉をどうしたら写真の中にシンプルに盛り込めるかを考えながらシャッターを押すようにしてみよう。

あまり盛り込み過ぎるとただの状況写真になってしまうため、たいていは一枚だけでは見せきれない。そのときは組写真という手法を使えばいいのだよ。

9月の挑戦者その6:さとちんさん

体をぼろぼろにしながらも懸命に生きる姿に、感動しました。

さとちん
東京都在住、男性。花をメインに風景や星空など、幅広く写真を撮っています。PENTAX K-1 Mark IIとHD PENTAX-D FA 24-70mmF2.8ED SDM WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

ヒガンバナにやって来た黒いチョウ、カラスアゲハあたりだろうか。よく見ると翅がボロボロになっていて、よくこんな状態で飛ぶことができるものだ。こんなふうにボロボロになったチョウなどはあまり被写体として見てもらえないけれど、あえてこのチョウを被写体として力一杯に生きている姿を狙っているところもいいと思う。赤いヒガンバナと重ねたことで、チョウの姿も分かりやすくできているね。

このシーンで難しかったのは、自由にならないチョウの位置や角度だろう。

チョウだけを見ればピントもシャープでいいと思う。
だが、ヒガンバナの向こう側にいるために、チョウにピントを合わせるとヒガンバナがボケてしまう。小さなサイズで見ている分には違和感がないが、大きくするとヒガンバナがボケて気になってくる。
ヒガンバナの形がはっきり見えているため、この場合は花びらにもピントが欲しかったところだ。

また、チョウが斜めに花にとまっているため、寸詰まりに見えて形が分かりにくい感じがする。

チョウが花畑の中の方にいるようなので、自分が動いてカメラポジションを変えるのは難しそうなので、チョウがいい場所に動いてきてくれるのを待つしか解決方法がなさそうだ。

このあと別のところに飛んでいってしまった可能性もあるのだけれど、写真をセレクトするときには以上のポイントも考慮してみよう。

師範より9月後半の総評

今回もいいシーンを捉えた作品がたくさん応募されていて、どの作品を取り上げるか悩まされた。ほんとうはもっと掲載してあげたかったところだ。

いきものに関しては、そのものが写っているだけではなく、どんな動作をしているのかが伝わるようにすることで見る人の印象は大きく変わってくる。その姿を見て撮るだけではなく、どんな動作や行動をしているのか分かりやすく捉えるようにしていこう。

被写体となってくれるいきものの気持ちを理解するように心がけると、撮りやすくなると思うよ。

 

編集部よりひとこと

今回は残念ながら添削されなかった作品の中にもたくさんの良い作品がありました。中には10月のお題「ちいさないのち」にマッチしているなぁと思える作品も多数ありました。お題に沿った作品であれば連続で挑戦いただいてもokです。ぜひ、10月もたくさんの挑戦をお待ちしております!

 

記念品のお届けについて

きよどんさん、Day-Oさん、さとちんさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は10月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、9月後半のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

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以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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