早いようで発売から約2年半経つPENTAX K-3 Mark III、既に使い込まれているユーザーも多いことだろう。都市風景を撮る者として、街が冬の澄み切った光に包まれだすと、光学ファインダーに写し出される景色が一層きらきらと輝いて見えるような気がする今日このごろである。

今回はシルバーボディにブラックのHD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRのパンダセットでその色褪せぬ魅力に迫ってみたいと思う。

代えがたい光学ファインダー美

デジタルの進化は早いものでこの2年間で新しいカメラ、AIをはじめとした新しい技術がどんどん生まれてきたが、やはり作品となる写真を生み出すのは撮り手の感情や被写体に対する情熱によるものだ。

EVFも用途によっては非常に便利な一方、被写体と向き合ってしっかり対峙するのにはまだ光学ファインダーに分があると感じている。EVFはセンサーに入った光を一度映像にしてファインダー内に映し出しているわけで、一枚壁を隔てて被写体と向き合っているような「心の距離」が拭えない。これは感覚的な話であるが、写真行為のなかではとても重要なポイントなのである。

K-3 Mark IIIのファインダーはそれまでのAPS-C機の常識を覆したと言っても過言ではない。フルサイズかと思うほどの広さ、ピントの山が掴みやすいスクリーン・・・ファインダーは一眼レフの命なだけに抜かり無い出来は流石である。

ミラーレスから写真を始めた人が増えてきた今、来年あたりにはレフ機の魅力が再評価されるのではないかと筆者は考えている。

パンダカラーは作品制作の表れ

シルバーかブラックか、それが問題だ!なんて言えるメーカーもPENTAXだけになってしまった。よくぞこの令和の時代になっても2カラー作るものだと呆れつつも拍手を送りたい。その姿勢は今後の新製品でもぜひ続けて欲しいと願うところだ。

コマーシャル的なプロユーザーは被写体への写り込み等の問題でブラック一択になるだけに、シルバーを使うという事は自分の為に作品を撮るのだという気概を感じるのだ。まさに自発的な自己表現をするための写真機と言える。

そういう点でパンダ仕様のK-3 Mark IIIは作家性が前面に出た組み合わせと言えるのではないだろうか。

なんてことを言いながら、しかしてオールブラックも捨てがたいのが本心。一体どれが正解なのか・・・。残念ながらこの問題は今世紀も解決に至ることはないだろう。

ショートズームは見つめる視野が定まっている確たる証

ミノルタの24-50/4やニコンのAi AF Zoom-Nikkor 35-70mm F2.8Sなど、筆者は昔からショートズームに美学を感じている。コンパクトながら素晴らしい描写はズーム比二倍と割り切った設計だからできることである。さらに前段落の話とリンクするのだが、ショートズームは自分の視点はここだけで十分なのだという、ストイックさが聞こえてくるのだ。

HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRの描写はどの焦点域・絞り値でも安定した写りをするのでこちらとしては安心して撮影に集中できる。撮影だけに意識を全集中できるカメラ、これって本当に大事。

換算で30.5-61.5mmとスナップには丁度よい画角だ。広角好きな人にはやや物足りないかもしれないが、筆者としてはかなりの万能レンズだと思う。ランドスケープからポートレートにも活用できるだろう。

特筆すべきはこのレンズ、かなり先の細い繊細な描写をすることだ。線が太いと実際の解像度より低く感じてしまうが、このパンダセットは真逆なのだ。

PENTAXというメーカーのカメラはどうも数値化できないところに優秀なポイントがあることが多いのは何故なのだろう。

ワイド端 f5.6、それでもこのボケ量

テレ端最短距離にて撮影

テレ端40mmだと開放f4なので、APS-Cセンサーということも加味すればボケには期待できそうもないように思えるが、これが結構ボケてくれる。最短距離が短いこともあるが、十分なボケ量である。思い違いかもしれないが、ファインダー内で見ている以上に撮った写真を見るとボケている。

レフ機はファインダーの明るさがレンズのf値に依存するのでやや暗く感じるが気になるほどではない。スナップを多用する焦点距離ゆえ、AFがもう少し早ければ文句のつけようのないレンズなだけに残念である。

それともっとカッコいい角型フードなんぞを用意してくれたらもっと売れる気がする。結構フード選びは重要ですからね、一考くだされPENTAX様。

K-3 Mark III再考

筆者は、デジタル時代における最終的な画質の良し悪しは、センサーが受け取ったデータだけでなく、その後の編集段階における画像処理も含めて判断するべきだと考えている。そのスタンスを踏まえて言えば、この組み合わせはハイライトからシャドー部の情報が豊富で非常に豊かなデータであると言える。

時にフルサイズ並の画質を見せてくれるので、もうセンサーサイズにこだわるのは時代遅れに感じてしまうほどだ。

K-3 Mark IIIにおいてそんなに語られない点であるが、称賛すべき点にモアレの出にくさがある。モアレ低減用のローパスセレクターの恩恵なのだろうが、意外と最新機種でも気になるモアレが出てしまうことがあるのだ。都市風景においてはビルや柵など連続したパターンの対象物が多いのでとても気になる点なのだ。フリンジなどと違い、モアレをPhotoshopで消すのは一苦労なのだ。

2年以上も使っていると自分の使う機能、使わない機能がはっきりしてくる。ヘビーユーザーの方は是非一度自分の使い方を見つめ直すことをオススメする。新たな発見があるかもしれない。

K-3 Mark IIIはPENTAX機の中でも高感度が優秀なカメラである。1600あたりのノイズは出ても嫌味にならず、良いアクセントになっている。

こちらはあえてレンズをボディから離して撮ってみた一枚。そんなネタバラシするのも無粋なのだけど、レタッチでやったのではないということで一応書いておく。ISO3200でこんなのが撮れるので表現としては面白い。

表現のためのパンダセット、こやつはなかなかやるではないか。
ちなみに妻にブラックとどちらが良いかと両方見せたところ、パンダセットは可愛いとのこと。そういう見方もあるのか、と思ったところである。

再考したらやはり最高のカメラだった、と読者を凍りつかせたところで終わりにしたい。