写真家の木村琢磨です。
暖かくなってくるとカメラを持って撮影に出かけたくなりますね。

でも撮影に出かけるには時間がちょっと足りない…天気が悪いけど写真撮りたい…。
そんな日は家の中で家族の猫や犬をモデルに撮影を楽しんでみてはいかがでしょうか?

今回は木村家の愛猫「はち(♀)」にモデルになってもらいました。

撮影で使用した機材はPENTAX 645Zにsmc PENTAX-D FA645 55mmF2.8AL[IF] SDM AWの組み合わせです。この組み合わせだと中判デジタルと言ってもそこまで大きくもなく、F2.8の明るさのおかげで室内でも撮影が楽ちんです。

焦点距離的にも標準よりも少し広いくらいで銀塩では焦点距離75mmの二眼レフをメインで使用していたこともあって同じくらいの焦点距離で扱いやすいです。

 

猫は早起き、そう思っていたけれどどうやら木村家の「はち」は寝坊助さんのようです。布団の上で寝るのが好きなようで朝日を浴びながらグーグーと寝ています。

D FA645 55mmF2.8のレンズ開放の描写が柔らかくて光に包まれている感じに仕上がります。

 

大口開けてあくびをしながらの起床。人間が活動を始めたので仕方なく起きた感じ。

645Zは光学ファインダーなので肉眼の延長のように被写体を見据えて撮影ができます。
仕上がりを映像で見ながら撮れるようなカメラにも魅力がありますが、一眼レフのファインダー像と仕上がりのギャップにもまた別の魅力を感じます。

 

起きたらまずは寝室の窓から外の観察。変わったことはないか確認しているようです。
今日は鳥の鳴き声がよく聞こえているので声の主を探しているみたい。

 

寝起きの運動も忘れずに。

 

二階の寝室から一階のリビングに降りてきました。大きな窓の前が「はち」のお気に入りスポットです。僕が「はち」を撮るときに心掛けているポイントの一つは目線を合わせること。

「はち」と同じ目線で撮影することで周りの景色が人間目線から猫目線になります。もちろんそれが正解というわけではなく一つの表現方法と思ってください。

 

「はち」は家猫です。もともとは『犬猫愛護会 わんぱーく』というNPO法人に保護されていた猫です。譲渡会で出会い、そのまま木村家に来てもらいました。譲渡条件が家の中で飼うことだったので「はち」は外には出られません。
なので窓の外の世界がいつも気になる様子。何を見ているのでしょうね?

中判デジタルである645Zの魅力は「解像度」と思われがちですが、僕が645Zを使ういちばんの理由は「階調性」です。

シャッターを切って露出失敗した、ピント合ってなかった、そんな経験は多いと思います。
でもその失敗が「なんかいいね」ってなることもあります。一眼レフのゆったりした撮影スタイルと猫の1日はどことなく似ているような気がします。

 

お昼ご飯は大好物の鰹節(猫用)。
食べるのヘタクソ選手権に出場できるほどの実力を持ってます。

 

お昼ご飯を食べた後は妻の膝の上で一服。
基本的に甘えん坊なので膝の上に乗っては撫でろと要求してきます。
フルサイズよりもさらにひと回り大きい中判センサーによって得られる立体感は、撮影していても楽しいですね。
開放での撮影はもちろんですが、絞って撮影しても立体感が出やすいので被写体が浮き出て見えます。

 

顎の下がスイートスポットのようです。窓辺のサイド光がいい立体感を演出してくれます。
シャドウからハイライトまで綺麗にデータが残っているので情報量を生かしたRAW現像もおすすめです。

 

季節の変わり目ということもあって毛の生え変わりがすごいです。通称「コロコロ」で生え変わりの抜け毛を取っていきます。

ところで何故「はち」という名前なのか…上の2枚の写真を観るとよくわかるかもしれません。

はい、「はちわれ」の「はち」です。額のはちわれが綺麗に「八」になっているのでその名をつけました。お目目が黄色いので「銀杏(ぎんなん)」という候補も出ましたが「はち」で正解だったかなと。

「はち」というと犬の名前に思われがちなので僕らは「ハチ子」と呼ぶことが多いです。

 

ちょっと退屈になってきたのでソワソワしてます。

僕の645Zのセッティングはシンプルです。撮影モードはマニュアルか絞り優先。AFは基本中央一点で分割測光の組み合わせがほとんどです。

AF速度は爆速というわけではないので動いている被写体の場合はMFを使います。AFの精度は高いので動きが少ない被写体には重宝します。

 

 

窓の外を再び観察。どうやら猫的には「パトロール」をしているようで毎日決まったルートを観察しています。

僕らが毎日仕事をするように「はち」もパトロールという仕事をしています。密着取材していると色々と気づかされます。

そして日向を見つけるのが得意なので写真家に優しいです(笑)

 

世の中には「ルンバ猫」という猫が存在するようですが、木村家の「はち」はルンバが天敵です。
ルンバが動き出すと爪研ぎの上に退避します。

ルンバから目を離すことなく警戒中。

 

ルンバが終わったらパトロール再開。キッチン周りをウロウロと。

 

僕の仕事部屋もパトロールしてくれるのですが…、めちゃくちゃに荒らされるので悲しい…。
仕事をサボっていないかよく監視されてます。

 

 

パトロールが終わったらのんびりしてます。
基本的に高いところが好きなので人間を見下ろせるポジションによく居ます。
ふっくらした前足がキュート。

 

言葉は理解できませんが、よく話しかけてきます。
同じ「ニャ~」でも色々な鳴き方があって、鳴き方の抑揚でなんとなく何が言いたいのかは理解できます。(何故か僕には鳴き方が強い…)

観察していると鳴くタイミングやあくびのタイミングがわかってきます。
写真を撮ることは相手を知ることでもあります。
猫だけではなく人を撮る時も同じで、その人を知ることで撮り方がわかってくることもあります。

 

夜になったらネズミのおもちゃ相手に大運動会です。

 

暴れすぎてぐったり……。
ヒートアップした体温をフローリングで冷やします。

 

 

そろそろ眠たくなってきました。眠たくなると膝の上に乗ってきます。

「おやすみなさい」

 

 

「はち」が木村家に来てから1年とちょっと経ちました。

気がつくと木村家の時間の流れが「はち」中心になっていることに気がつきました。なんだか毎日がゆったりとした時間になり、今まで変に焦って生きていたんだなと。

写真を始めた頃は身近なものをたくさん撮影していましたが、気がつくと身近なものよりも仕事の写真が主になっていて改めて身近な景色を撮影して残す大切さを実感しました。特に645Zのようなカメラでは、いつもよりものんびりと撮影ができる気がします。

写真は“過去行きのタイムマシン”のようなもので、見ているとその時の記憶や風景が思い浮かんできます。
何年後、何十年後に見返すのを楽しみにシャッターを切ってみてはいかがでしょうか。

そして、またいつもの朝がやってきました。

 

 

記事中の写真の撮影に使用されている製品はこちら

・PENTAX 645Z・・・>>製品ページ
・smc PENTAX-D FA645 55mmF2.8AL[IF] SDM AW・・・>>製品ページ