6月のお題は…『ちいさな自然

小林義明 師範

広い景色を撮ろうとすると、どうしても定番の構図に落ち着いてしまうことも多い。人工物が増えて広い風景が撮りにくくなっているため仕方ない部分もあるだろう。しかし、視点を変えることで新しい被写体をみつけることはできる。6月のお題は、視点を変えることを目的とした小さな自然だ。視点を狭くしてじっくり自然を見つめることで見えて来る小さな自然の魅力を発見し、写真を通じて表現してみよう。

 

小林義明 師範からの6月のお題は『ちいさな自然』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

6月の挑戦者その1:ススムさん

草むらでツユムシを見つけて写真を撮っていたところ、同じ葉の上をアリが歩いてくることに気が付きました。
落ち着いてマクロレンズを最大まで繰り出し、二頭が画角におさまった瞬間にシャッターを切りました。
両者の複眼までしっかりと描写しているところがお気に入りのポイントです。

ススム
埼玉県在住、男性。生き物の写真を撮るのが趣味で、特に昆虫のマクロ撮影が大好きです。PENTAX K-1とsmc PENTAX-D FA MACRO100mmF2,8 WRで撮影。

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

小さな自然の出会いの瞬間を上手く撮影できたね。ツユムシとアリの目にしっかりとピントが合っているのは見事!アリの姿に驚いて慌てて足をあげている動作も想像できる。

これは狙っていてもなかなか上手く撮ることができないシーンだと思う。ぶれを防ぐためにISO感度を上げてシャッター速度を速く設定していることや、アリをみつけてとっさに最短撮影距離に切り替えているところなど、マクロ撮影に習熟していることが伝わってくる。

ピントやシャープさ、とっさの対応のすばらしさは免許皆伝といってもいいと思うのだけれど、残念ながら今回は免許中伝だ。

それは二つの点で気になったことがあるんだ。

まずひとつは、アリの頭とツユムシの足が重なってしまったこと。この位置が重なっているかどうかでずいぶん印象が違ってくる。とくにこの写真を小さなサイズで見ると、足がかなり気になってしまう。おそらく数カット撮影したなかで最もピントのいいカットがこれだと思うのだけれど、アリが体半分でも前に進んだときのカットであれば、もっとアリの存在が分かりやすくなったはず。

もうひとつは、ツユムシの糞が画面にはいってしまったこと。これはバッタを撮影したことがない人には分からないことだけれど、撮影していると撮られているバッタも緊張するのか、なぜか糞をすることが多いのだよね(笑)。
この二匹の姿に見る人の視点を集中させるために余分なものは画面に入れたくなかった。

自然はなかなか完璧な条件を与えてくれないので、これに懲りずにドラマチックでストーリーを感じるシーンを探してみて欲しい。その道を究めることにこの道場の意味があるのだから!

6月の挑戦者その2:KAZALさん

森の地面は一日のうちでほんの限られた時間しか光があたらない。
去年の落ち葉は下の方から腐葉土となっていって上を歩くとふわふわとした感触になる。
夕方のわずかな時間に斜めの光がさすと白い花弁が落ちているのに気づいた。
さっきまでの雨で濡れた落ち葉と可憐な花びらが森を再生し続けているのを感じさせる。

KAZAL
神奈川県在住、男性。週末フォトグラファーにありがちな写真よりもカメラが好き派ですが、少ない機会を利用して行き当たりばったりのネイチャーフォトを楽しんでいます。PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA28-105mmF3.5-5.6ED DC WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

なかなかいいところに注目できているね!  

常緑樹の落ち葉が積もる地面に一輪の小さな白い花が落ちている。ちょっと急ぎ足で歩いていたら、見逃してしまったシーンだろう。  

白い花を囲むように並んでいる落ち葉の作り出すパターンもきれいだし、コメントを見ると森のなかで光が射し込んでくる短いチャンスのなかでいいタイミングの光を選んで撮影している。  

被写体をみつける目の良さを見込んで、免許中伝を授けよう!

では、なぜ免許皆伝ではないかというと、フレーミングがちょっと甘いからなんだ。  

この写真は、落ち葉の茶色と花の白だけで統一するべきと思うのだが、画面の左側にはまだ緑色の葉があり、けっこう視点を引き寄せてしまっている。森の再生をイメージしているようだけれど、ここではもっとシンプルに見せる方がいい。  

よく見ると白い花の下にさらに小さい緑の葉が落ちているので、緑をイメージさせるにはこれだけで十分だろう。  

左側の緑の葉が入らないようなフレーミングにすると、落ち葉の作るパターンがより強調される。ただ、花の右側に強い反射があるので、ここはC-PLフィルターで反射を抑えるような対応が必要だろう。よりシットリした質感が出てくると思う。  

木漏れ日が動くのは早いのでじっくり考えている余裕がなかったかもしれないが、完成度を高めるために構図を研ぎ澄ませていこう。

6月の挑戦者その3:shigeさん

季節は桜の開花も目前となった春。季節外れの遅霜に降られたハナニラを撮りました。
凍りついた涙が徐々に溶けていく様子は美しかったです。

shige
兵庫県在住、男性。家の周りの自然を中心に撮影を楽しんでいる写真好き兼カメラ好きです。PENTAX K-1 Mark IIとsmc PENTAX-D FA MACRO100mmF2.8 WRで撮影。

師範の判定結果は・・・

残念ながら

小林義明 師範からの添削コメント

 

水滴がビッシリとついたハナニラ。大きな水滴は今にも落ちそうになっていて、動きも感じられる。
コメントを見るとびっしりと遅霜が降りたのが融けている最中なのだとか。なかなかドラマチックな瞬間で、いい出会いがあったね。

基本的な撮り方は間違っていない。ハナニラのシベと融けて大きくなっている水滴にしっかりピントが合っている。ハナニラの花びらが作るパターンも美しいと思う。

このシーンでは、画面左側の葉が余分でかなり目立つのが惜しいところ。主役のすぐ脇にあるためにどうしても気になってしまうんだ。よく見ると右上のあたりにもちょっと葉が見えているね。
青みを強調してハナニラの色を活かすように工夫しているのだから、ここは画面全体をブルー系でまとめたかった。

この一枚を撮影したあとに、この余分な葉が画面に入らないようにちょっとどけることはできなかっただろうか。ちょっとでもまわりの花を揺らしてしまうと水滴が落ちてしまう可能性があり、一か八かでもあるけれど、葉をうまくよけることができれば、完成度は格段に高くなる。もちろん、葉を切ってしまうのではなく、優しく画面に入らないようによけるんだ。右上のあたりはカメラを左に振ったり傾けることで画面に入れないようにできると思う。

ちょっと窮屈になってしまうかもしれないが、クロップして画角を狭めて切り取る方法もあるだろう。

このようなシンプルな被写体の場合は、余分なものがひとつ入るだけでイメージが崩れてしまうので、画面構成もシンプルにできるように工夫しよう。

記念品のお届けについて

ススムさん、KAZALさんには「免許中伝ミニ木札」、shigeさんには「門前払い ミニ木札」をお贈りします!

記念品は8月上旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、6月のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

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以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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