9月のお題は…『刻(とき)を感じる風景』
写真は一瞬を切り取り記録するものだが、その表現次第では一瞬の中にも時間の経過を感じさせることができるもの。ちょっと難しいお題となるが、風景のなかに時間の流れやもっと長い時間の変化となる歴史的な刻(とき)を感じられる作品を募集してみたい。どういった被写体や光線、タイミングで撮影すると時間を感じることができるのか、考えてみてもらいたい。
小林義明 師範からの9月のお題は『刻(とき)を感じる風景』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。
9月の挑戦者その1:artisan takaさん
裏山から上ってくる月を狙いました。
京都府在住、男性。京都で写真を撮っています。PENTAX K-1(改)とHD PENTAX-DFA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AWで撮影。
師範の判定結果は・・・
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残念ながら・・・
スローシャッターで月空を撮影していて、雲間から見える月と流れる雲の様子から時間の経過を感じられるね。狙いはとても良く、スローシャッターで雲を流したところが正解だったと思う。
しかし、ここでスローシャッターで撮影するのはかなりリスクが高い。超望遠で撮影しているうえに、雲もこれだけ早く流れているということは風も強かったと推測できる。
そうすると、三脚を使っていても風でカメラが震えてブレてしまう可能性が高いんだ。
また、望遠で月を撮影していれば分かると思うけれど、地球の自転で月が移動していく。ファインダーのなかでも動いているのが分かるくらい移動速度は速く、月もブレてしまう。アストロトレーサーを使えば月の動きは抑えられるはずだけれど、風によるブレは抑えようがない。
結果的に画面内にシャープなところがなくなってしまっていて、スマホくらいの小さな画面ならそれなりに見えるけれど、ちょっと大きくするとシャープさがない写真になってしまった。
このシーンではISO感度を100で撮影しているので、このスローシャッターでチャレンジするだけではなく感度を上げてよりシャープに撮ることもしておいた方が良かったと思う。雲の感じは違ったとしても、いい雰囲気のカットが撮影できたはず。
風景撮影での基本として、シャープに見せるべきところはしっかり写す。それを意識してさらに精進して欲しい。
9月の挑戦者その2:capriさん
お題を見た時、一番最初に頭に浮かんだのが鍾乳洞でした。
長い年月が生み出したアートだと思います。
埼玉県在住、男性。最近、少しずつ写真撮影に行く機会が増えてきました。早くコロナ禍以前の状況に戻れることを願う日々。PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA28-105mmF3.5-5.6ED DC WRで撮影。
師範の判定結果は・・・
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残念ながら・・・
鍾乳石、これができるまでの時間を考えると人間には想像できないような長い時間がかかっている。今回のテーマである刻を感じる写真ということでは適切な被写体であると思う。
でも、もっと工夫して欲しかったなぁ。
この鍾乳石自体はとてつもない時間を経て成長していくもの。その時間をどうやって表現するかが今回のテーマなんだ。
私がこのテーマのために鍾乳石を撮るとしたら・・・と考えてみると、まずはこの鍾乳石がどうやってできるのかを写真で表現することを思いついた。
鍾乳洞では間近で石を見られるところがあるので、そこで鍾乳石の先端についている水滴をアップ気味に狙い、背景に洞窟の様子を入れてみる。滴がまさに落ちる瞬間で、そのなかにも鍾乳洞の様子が映り込んでいたら最高だよね。こうすると、この一滴ごとに少しずつ成長する鍾乳石のイメージを伝えられると考えたのだが、どうだろうか。
これはどんなテーマでも一緒だけれど、そのものずばりを撮影してもなかなか写真を見る人の心には響きにくい。あるテーマに合わせてこの被写体を撮ろうと思ったら、さらにどう見せるのかを考えてイメージを膨らませていこう。
この鍾乳石の前に立って、一時間くらい眺めていたら、いろいろなイメージが湧いてきたと思うよ。
9月の挑戦者その3:プリちゃんさん
紅葉の撮影では有名な場所ですが風を利用して手前の葦と水面のさざ波を入れてスローシャッターで撮影。
静岡県在住、男性。風景写真を中心に撮影しています。特に最近作品の中に物語を作るように撮影をしています。PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA28-105mmF3.5-5.6ED DC WRで撮影。
師範の判定結果は・・・
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残念ながら・・・
秋らしい風景だね。手前の色づいてきた葦をスローシャッターでブラし、さらに水面に風が流れることでできる波を入れたことでこの先の動きも予想させていいと思う。この動きを感じさせることで時間の流れも表現できているよね。
ここで気になったのは、スローシャッターによる遠景のブレとガードレールの部分。
スローシャッターにしないと手前のブレは得られないのだけれど、風がかなり強かったようで遠景もブレてしまっているところが多い。同時にF32まで絞り込んでいることでの画質低下もあるように見える。画面全体がブレているように見えてしまうと迫力に欠けるので、風のタイミングを読みながら遠景の部分が風に当たらない時を見計らって撮影するといい。このあたりはじっくり待って、いい瞬間を狙おう。
遠景のガードレールに関しては、もう少しアップ気味に切り取ったりカメラポジションを左にずらすことであまり見えなくするようなフレーミングも可能だったのではないかな。
黄葉の鮮やかなところに対して左側のややトーンが暗く落ちる部分にガードレールがあるのでよけいに目立つと思う。これは肉眼でも確認できるくらい見えているので、撮影前にしっかりチェックして目立たないようにしたかった。画面の右側2/3だけでも十分成立させられると思う。
コントラストが高くなる日射しがあるときなら、この部分が影になるようなタイミングを選べば黒くつぶすことも可能だよね。
風景撮影はその場に行けば簡単に撮れそうな感じだけれど、いろいろなノウハウがあるので、ひとつひとつ身につけながらレベルアップしていこう。
記念品のお届けについて
artisan takaさん、capriさん、プリちゃんさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!
記念品は11月上旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。
その他の投稿作品をご紹介
最後に、9月のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。
〔クリックで写真が大きくなります〕
以降のお題へのご投稿もお待ちしています!