12月のお題は…『シルエットの景色』

小林義明 師範

一年でいちばん日が短くなる12月、日が低くなり朝日や夕陽を見るチャンスも多くなってくる季節だ。この時期だから撮りやすいテーマということで、シルエットの景色を探してみよう。被写体を逆光でシルエットにするだけでなく、長く伸びる影というのも面白い被写体となってくるはずだ。シルエット表現を成功させるポイントは、形をきちんと見せること。シャッターチャンスやカメラポジションを考えて撮影してみよう。

 

小林義明 師範からの12月のお題はシルエットの景色でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

12月の挑戦者その4:KAZALさん

山寺の庭には迫力ある紅葉が見られたが
あいにく手前の樹木が邪魔でなかなかクリアなポイントが確保できなかった。
いっそのこと大きな樹木の枝で赤の背景をいろいろに切りに取ってみた。
本当ならもっとシンメトリーだったら面白かったけどこのポイントが限界でした。

KAZAL
神奈川県在住、男性。週末フォトグラファーにありがちな写真よりもカメラが好き派ですが、少ない機会を利用して行き当たりばったりのネイチャーフォトを楽しんでいます。PENTAX K-1とsmc PENTAX-FA645 MACRO 120mmF4(Adapter K for 645 lens)で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

真っ赤なモミジの紅葉を背景に、太い木の幹をシルエットで捉えていて迫力があるね。大きく画面に入れたことでこの木の大きさを感じられて、いいと思うよ。

シルエット表現の基本は上手くできていると思うけれど、細かいところにこだわるとより伝わりやすい写真に仕上げることができると思う。

たとえば左側のあたりの葉がたくさんついているところは、重なりすぎて葉の形が分かりにくくなっている。ちょっと左側を減らすだけですっきりと見えて来る。

また、背景の部分でも、左上のあたりに緑が見えているので、ここをカメラポジションを微調節して幹や枝で隠すようにする。そうすると背景がより赤で統一できてイメージがはっきりする。

右側のモミジの幹も見せない方がシルエットにした幹のイメージが強くなるね。

本当はモミジを撮影に行ったのだけれどパッとしないのでこのカットを撮影したということなので、本気でシルエットの絵を作ろうと考えていたら、もっといい仕上がりになったんじゃないかと思うと惜しいなぁ。

いいセンスを持っていると思うので、ここで伝授したことを思い出しながら、またシルエットの作品を撮ってみて欲しい。

12月の挑戦者その5:チャンクスさん

この季節、地元でもよく見られるようになるオオワシやオジロワシ。
そんな大きくてカッコイイ猛禽類に魅了されて撮りまくっているなかの1枚です。
オジロワシが飛んだのを追いかけながら連写した中の一コマ。
逆光になっていたのでダメかな〜と思っていたけど、
これはこれで雰囲気のある写真になったかなと思いました(^^)

チャンクス
北海道在住、男性。カメラはまだまだ初心者ですが楽しむことをモットーに、とくに自然、野生をテーマに撮って写真を楽しんでいます!PENTAX K-70とHD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-5.6ED PLM WR REで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

オジロワシが薄く雲の広がっている空を羽ばたいている姿をシルエット気味に捉えている。羽根の形もよく、羽ばたいている感じが伝わってくるね。羽根の位置が悪かったら、飛んでいるように見えないので、シルエット表現として大切なところだ。

ただ、コメントを見ると逆光になってしまったということなので、はじめからシルエットを狙っていたわけではなかったのかな。

この写真も雰囲気は悪くないけれど、もっと明確なイメージを持って撮影すれば、よりよくなるはず。例えば、露出をもっと暗くするように設定しておけば、雲の表情がはっきりしてきてドラマチックになったのではないだろうか。
そのためにはマイナスの露出補正をしたり、雲の表情が出てくるようにカスタムイメージを調整してやることで可能になる。

曇天であっても雲の濃淡があれば充分に背景として見せることができるので、ただ被写体の姿を追うだけでなく、どんな環境のなかで活動しているのかとか、その場所の雰囲気を感じられるように撮ることを考えてみよう。

けっこう調整したのだけれど、雲の表情を出すというイメージが分かるような絵をつけておくので参考にしてみて欲しい。

12月の挑戦者その6:たにやんさん

12月の晴れた午後、湖岸から伸びる杭の上でカモとサギが並んで日向ぼっこしています。
冬の低い日差しが湖面に反射して、シルエットの光景を生み出していました。

たにやん
滋賀県在住、男性。35ミリ判はPENTAXメインで撮影を楽しんでいます。Z-1p以降の銀塩カメラもまだまだ現役です。PENTAX K-70とsmc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

キラキラと輝く水面に露出を合わせて、その周りの景色をシルエットで見せている。画面全体にわたってシルエットとなった木々やアオサギなどで影絵のような世界を作りだしているね。今回投稿されたなかではシルエット表現という意味をいちばん理解している作品だと感じたよ。赤外調の仕上げで適度にコントラストをあげているのも、意図を読み取ってのものだと思う。

だけど、今回は免許中伝。

雰囲気はいいのだけれど、ちょっと構図が煩雑になってしまった感じがする。もう少し見せたいものを自分のなかで整理してみよう。

この写真のアクセントはアオサギとカモが一緒にいるところだと思うのだけれど、この部分がちょっと目立ちにくくなってしまった。それは右上隅に木立を入れてしまったからだ。

左側の幹が見えているところから視点が右側へ移っていくのだけれど、アオサギを通り過ぎて右上の木立にいってしまうんだよね。それは画面のハイライトとコントラストが強く大きな木があるから。この木立を隠すようにすると、視点はアオサギのところで留まり、撮影したかったイメージを伝えやすい構図になる。

きらめきのバランスを考えてこのような構図にしたのだと思うけれど、自分がいちばん見せたいところに視点が留まるような構図にすることで、イメージをより明確に伝えることができるんだ。

肉眼で見ていると、意識がアオサギに向かっているのでもっとはっきり見えている感じがしたと思うので、より客観的にファインダーを見られるよう練習してみよう。

 

 

師範より12月の総評

日が低くなる時期なのでシルエットも撮りやすいかと思ったのだけれど、ちょっと難しかったかな。
画面の中にシルエットになったものが入ってはいるけれど、主役がシルエットではないという写真もあって、こちらが意図したのとは違うなあと思ったんだ。

あとは、影自体を狙った写真があっても良かったと思うのだけれど、そういうのはほぼなかったね。

肉眼で景色を見ていると影の部分が完全なシルエットになることは少なくて、今回のシルエット表現は写真的な表現といえるので、光を読む練習にもなったはず。

シルエットを使うことで印象的な作品に仕上げることができるので、今回選んだ作品や講評を見直してもらって、もう一度魅力的なシルエット作品が撮れるように挑戦してみてほしい。

記念品のお届けについて

たにやんさんには「免許中伝ミニ木札」、KAZALさん、チャンクスさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は1月中にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、12月のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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