2月のお題は…『いのちの景色』

小林義明 師範

私のテーマでもある「いのちの景色」、昨年に続いて募集してみたいと思う。いきものの行動だけを捉えた生態写真や決定的瞬間といったものではなく、どんな場所で暮らしているのか景色の雰囲気も一緒に捉えてみて欲しい。いきものの撮影は、ちょっと撮りに行ったからイメージ通りに撮らせてもらえるものではないので、季節は問わずこれまでのストックも合わせて作品を探してみよう。

 

小林義明 師範からの2月のお題はいのちの景色でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

2月の挑戦者その1:水野源さん

野付半島にて、3頭の立派な雄鹿と出会いました。
冠雪した知床連山をしっりと背景に見せたかったので、F16まで絞って風景的に撮影しました。
また連山の迫力を出すため、敢えて横長の16:9にトリミングしています。
3頭それぞれが見せる違った表情、とくに右端の、海草をかじる呑気な奴が気に入っています。

水野源
北海道在住、男性。2014年に北海道に移住してから、本格的に写真を学びはじめました。北海道の風景や動物が好きで、撮影を続けています。PENTAX K-1 Mark IIとHD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

雪を被った知床の山々と青い海を背景に同じ方向を見つめるエゾシカのオス。なかなかいい撮影条件に恵まれていて、カッコイイ写真だね。いきものの表情と同時に広大な景色も捉えられていていいと思うよ。横長の画面にトリミングしているのも広さを伝える意味では正解だろう。

ただ、この写真は主役にしたかったのは山とシカのどっちなのかと感じる部分がある。

それは知床連山全体を画面に入れようとした結果、このフレーミングになってしまったから。エゾシカを主役として考えると、山全体を画面に入れなくても、同じような雰囲気で撮影することもできたし、もっと表情が分かりやすい撮り方も可能だったはず。三頭のエゾシカが同じ方向を向いていないときには、他のフレーミングでも撮っていたかもしれないけどね。

結果的に画面の上下に余分な空間ができてしまったんだよね。このトリミングのあとも、手前にある雪の残っている草原が目立つので、シカに視点がたどり着くのに時間がかってしまう。トリミングをするなら手前の草原は半分くらいにしてもいいと思う。

この場所からトリミングなしで見せるためには、カメラポジションを少し右側に移動して、山は左側の連なりを背景にエゾシカをもうちょっと大きくフレーミングすることでより完成度は高くなったのではないだろうか。

知床連山全てを見せながらエゾシカの存在感を強くするには画角を広くしてエゾシカに近づかないといけないから、かなり難しくなるよね。

いきものの撮影では100%思いどおりに撮らせてもらえることは少ないけれど、その理想のイメージに近づけるためにはどう撮影すればいいかを常に考えながら行動することが大切だ。一期一会のチャンスを最大限活かせるように精進して欲しい。

2月の挑戦者その2:ひろみちゃんさん

夜明の静けさのなか、静から動への時をとらえたいとレンズを向けました。

ひろみちゃん
長野県在住、男性。風景写真をはじめて5年。美しいと感じたものを美しく撮りたいと頑張っています。PENTAX K-3とTAMRON 70-300mmF4-5.6 + Kenko2×teleplusで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

夜明けの水辺、空が赤く染まったのが水面に映り込み、そこにはカモの姿があって、これから活動を始める雰囲気があるのはいいよね。この先変わって行く空の色も想像できるので、見ていても面白い。

だが、ここではポイントとなるカモの姿が分かりにくくなってしまったのが惜しいところ。

とくに画面中央にある大きめのカモの姿が重なってしまっていて、分かりにくい。この写真は以前テーマとしたシルエット表現にも近く、シルエット気味に写っているカモの姿がカモらしくないとイメージが伝わらなくなってしまう。ほとんどが寝ていて首を羽根に入れているので、鳥を好きな人でなければ、何が写っているのか分かりにくいところもある。

これから活動を始めるというイメージなので、まわりは寝ていてもいいけれど、主役となる部分は顔を上げて動きを始めるような形で写せるといい。中央のやや左に顔を上げているカモもいるけれど背景が暗いところと重なっているために分かりにくくなっているよね。

できれば手前の大きく見えるカモが後ろのカモと重なることなく顔を上げていたり、羽ばたくような動作を捉えたら、撮りたかったイメージがより伝わりやすくなるのではないだろうか。

これだけたくさんカモがいれば、ちょっと待っているだけで、よりイメージに近い写真は撮れたと思うよ。自分が感じたイメージを具体的な写真とするために、もうしばらく待ってみると良かったと思う。いきものを撮影するときは粘り強く気長に構える必要があるので、また挑戦してみて欲しい。

2月の挑戦者その3:慎平さん

昨年の10月にコスモス畑で花粉を集めるミツバチを撮影した1枚です。
小雨が降ったり止んだりと天気が安定しない1日でしたが、
雨の切れ間にミツバチもコスモス畑に訪れていました。
間もなく訪れる冬を越すために懸命に花粉を集めるミツバチが印象的だったので投稿しました。
周囲には萎れたコスモスもあったため望遠レンズで切り取り、
f値開放でミツバチのいるコスモスを浮かび上がらせるように撮影しました。
背景にはピンクと白色のコスモスを入れています。

慎平
奈良県在住、男性。ふらふらと写真を撮っています。PENTAX KPとsmc PENTAX-FA★300mmF4.5 ED(IF)で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

コスモスに蜜を集めにやって来ているミツバチ。コメントによると雨のなか一生懸命に働いている姿に心惹かれたということで、いいところに着目しているね。雨でも何でも食べ物を集めなければ、コロニー(巣)を維持できないのだから、ミツバチは休むことなく働くんだよね。それにとてもシャープに撮影できているし、まわりの傷んできた花も大きくぼかしてその傷みを見せないようにしているところもいいと思う。

この写真とてもうまく撮れているけれど、見せ方が限られてしまうように思うんだ。写真はどのくらいの大きさで見せるかによって印象が変わってくる。

この写真はある程度大きくしないと、ミツバチが舌を伸ばして蜜を吸っている様子が分かりにくくなってしまったのが惜しいところ。スマホサイズの画面だったらミツバチがいるのは分かっても、蜜を吸っている仕草は拡大しなければ分からないだろう。

また、顔のあたりに黒い色が集まっているために、まわりの鮮やかな色に負けて存在が弱くなってしまったように思う。

花と虫を組み合わせて撮影するときは、主役にしたい虫の方が暗い色になることが多く、そのときは花を少し明るく撮るくらいの方が虫の姿や表情が分かりやすくなる。

このシーンでは、もう少しミツバチを大きくフレーミングできれば、どの大きさでもミツバチの仕草が分かりやすく見せられたのではないかなと思うんだ。レンズ的にギリギリだったと思うのだけれど、この腕があればマクロレンズでも撮れると思う。

A4あたりのサイズまで大きくすれば、ミツバチの舌が赤いことも分かってくるので、大きなサイズで見せることが必要な写真といえるよね。この道場では大伸ばしにも耐えられるクオリティを求めるけれど、それは大きく見せること限定ではないので、いちばん見せたいイメージをを多くの人に分かりやすく見せられる撮り方を考えてみよう。

師範より2月前半の総評

今回もたくさんの投稿があり、悩みながらの添削となった。ありがとう!

また、採用できなかった方は、ゴメン!

「いのちの景色」というテーマでは、いきものの姿だけを捉えることが目的ではなく、そのいきものの住む環境なども伝えることも考えて欲しいと思っている。

画面に写ってくる背景などから、まわりの様子やいきものの住む環境がイメージできるのが理想だ。決定的瞬間よりもいい景色と一緒に被写体を捉えると思ってもらえばいいだろうか。そこにはあなたがいのちをどう見ているか、というメッセージも含まれていると思う。絶景ではなくてもいいので、みのまわりで感じられるいのちのドラマを探してみて欲しい。

記念品のお届けについて

慎平さんには「免許中伝ミニ木札」、水野源さん、ひろみちゃんさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は3月上旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、2月のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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