カメラを持って出掛けると、なんでもない日常が、光の輪郭をもって浮かび上がる。

さぁ、今日もカメラを持って出掛けよう。

第3回「残したいもの」

写真で残しておきたいものは何ですか?

 

残したいものと言えば、家族や友人との思い出、子供の成長、感動した旅の記録等が挙げられると思います。それは幸せの記録ですよね。たとえ辛く悲しい事でも、時が経てばいい想い出になります。まるで海に捨てられた瓶が、長い時間をかけて砂浜に打上げられた時、ガラスの破片になって丸くなり美しくなるように。写真は時を留め、時を移動する魔法なのです。

 

 

私が残しておきたいと思ったものは、少年時代を過ごした家と町でした。いつかはなくなってしまったり、変貌してしまうもの。少年時代にはカメラを持っていなかったので、改めて今、残したいものを吟味するように、想い出を反芻するように見つめて、ファインダーを覗きシャッターを切りました。友人たちと石ころを蹴りながら通った小学校への道、いつも母が料理を作ってくれていた台所。どれも特別ではないけれど、今思えば大切な風景です。

 

 

写真に残す事はとても意味のある事ですが、本当の本当に大事なのは、写真そのものよりも、残したいと思うその時間と想い出ですよね。語弊を恐れずに言えば、写真はあくまで副産物。それを間違えると写真を撮る事にばかり必死になって、本当に大切にしなければいけない時間を自分の目で見て感じる事がおろそかになってしまいます。子供の運動会、旅で出会った美しい夕日。写真を撮る事ばかりに夢中になっていては、本当の感動を逃してしまいますよ。

 

 

残したいものを集めたものがアルバムだと思います。今は、撮影した写真達をネットで簡単にアルバム(フォトブック)にする事が出来ます。ぜひアルバムという形のあるもので写真を残してください。なぜなら、デジタルデータは一瞬で消えてしまうからです。ハードディスク、SDカード、スマホ、どれも壊れてしまえば、データはなくなってしまいます。残したいと思っていた写真が消えてしまっては寂しいですよね。あ、そうそう。プリントアウトした写真を額に入れて飾るのもお勧めですよ。そうすればいつだって幸せな想い出を見る事が出来ますものね。

 

 

林 和美さんの『カメラは感動増幅機』のその他の記事はこちら

第1回「さて何を撮ろう?」

第2回 「今日の獲物」

第4回「切取りの美学」

第5回「旅写真のコツ?」