6月のお題は…『花の表情』

小林義明 師範

花はそれ自体が美しいのできれいな写真を撮らせてくれる被写体だけれど、その魅力を十分に引き出すのは意外と難しい。
花をきれいなだけでなくより魅力的に撮るために、その表情をじっくりと観察していつもと違う表情をみつけてみよう。花を擬人化して考えてみるなど、ちょっと工夫をして見てみるといいよ。

 

小林義明 師範からの6月のお題は『花の表情』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

6月の挑戦者その1:ぷりずなーさん

散りゆく花の姿に何をみるか?人それぞれだと思うのですが、
もし、花に心があるのならば、散りゆく時に無事に役目を終え
安堵の気持ちに包まれるのではないかと私は思います。
寂しさは感じますが、悲しさはありません。

ぷりずなー
長崎県在住、男性。2011年から趣味として写真をやってます。殆ど地元で撮ってます。写真を趣味としてやり始めてからずっとペンタックスを使ってます。PENTAX K-3とTAMRON SP AF70-200mm F2.8 Diで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

最盛期を過ぎ花びらが散り始めたハス。きれいな花の姿もいいけれど、こういった散りゆくタイミングも表情があっていいね。

この写真は光の扱い方がとてもいいと思う。花と散った花びらに光が射し込んでいて暗い画面のなかから主役が浮き上がってきている。

ここで惜しいと思ったのは、主役の花に手前の葉が被ってしまったこと。とくに右側の重なりは葉が明るくなっていることもあって気になるよね。
これはちょっとカメラアングルを下げることで回避できたはず。

また、散った花びらが乗っていて、明るくて茶色い葉が傷んでいる部分もちょっと目立つかな。この葉が影になってくれたらよかったね。この部分を隠すためにカメラアングルを高くして、花にかかっている葉で隠すことも考えたのだけれど、今度は左側で葉の重なりが気になるようになってしまうかな。

どうしてもこの部分を隠せなければ、横位置で花だけを狙う撮り方もあると思う。花びらの形が崩れてきているところがあるので、落ちた花びらを見せるよりもジワッとイメージを伝えることができると思うよ。

写真は見せすぎると説明的になってしまうことも多いので、見る人にイメージさせるような見せ方を考えてみよう。

6月の挑戦者その2:tokutoku1002さん

森の妖精レゲショウマ、夏の森をイメージしてみました。

tokutoku1002
東京都在住、男性。風景写真を中心に、旅写真やスナップを楽しんでいます。PENTAX KPとVelet 56mm Macro F1.6で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

きれいなボケの中でレンゲショウマをいい雰囲気で見せることができているね。日影のなかで涼しげに咲いている感じが伝わってくるよ。ソフトフォーカスレンズを使ってフワッとした描写にしているのもいいね。

ここではレンゲショウマを画面のいちばん明るいところと重ねているために、形は分かりやすいのだけれど花が暗く見えてしまうのは損をしているように感じる。シルエットとして狙うのならこれでもいいけれど、もう少し暗めの背景を重ねるようにした方が、花びらの透明感やシベの近くの紫もきれいに見せられたはずだ。そしてさらに明るくなるようプラス補正をすることで、全体を明るいイメージにできる。

構図としては画面下の左から伸びている葉が意外と存在感あるので、画面下をカットするようにフレーミングするか横位置で構図を作っても良かったと思う。茎をしたまで見せたかったということだと思うけれど、花よりも目立つものが入ってしまうのであれば、そこは思い切って茎を途中で切ることも必要だ。

またレンズの特性上MFだとピント合わせが難しいので、ちょっとずつピントをずらして撮影しておくといいと思う。ちょっと後ピンの感じなので、このあたりはじっくり撮影してしっかりピントを合わせるようにしよう。

狙い方は間違っていないので、カメラを通すとどう写るか、どう見えてくるかを考えて画面構成をしてみよう。

6月の挑戦者その3:tukiromiさん

「飛び立つ前」
散歩で行った田んぼで、白いフワフワが飛んでるのを見つけて何処から飛んで来たのかを探しました。
飛び立つ前の綿毛がこんなに緻密で綺麗だったとは知りませんでした。

tukiromi
神奈川県在住、女性。徒歩圏内の散歩撮影がほとんどです。PENTAX K-1 Mark IIとsmc PENTAX-D FA Macro 100mmF2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

花のふだんとは違う表情を発見した写真だね。綿毛の作り出すデザインはとても美しく、意外性とともにとても面白いと思う。ちょっと調べてみたのだけれど、何の花なのか分からなかった。もとの花を知っていると、もっと表情の違いが分かって面白く見えるのだろうなぁ。

この被写体もはじめからここにたどり着いたのではなく、綿毛が飛んでいるのに気づいて、どこから来たのだろう?という作者の好奇心が導いてくれたもの。そうやっていい被写体をみつけられたら嬉しいよね。

さて、この綿毛の見せ方として構図はいいと思うのだけれど、綿毛が作る形全てがデザインとなっているので、全体にピントを合わせたかった。シベのように見えるところの中央でボケている部分がちょっと気になるし、左上の綿毛のところももう少しピントが欲しいね。

撮影データを見るとほとんど絞り込んでないので、もう少し絞り込んで被写界深度を深くしたかったな。少なくともF8くらいにしたかったところ。

絞ると後ろがゴチャゴチャしてしまうということであれば、ちょっとカメラの位置を変えて、より目立つところにもピントが合うようにすると印象が違ってくる。

こういっためったに出会えない被写体は、これでもか!っていうくらいいろいろな撮り方をしておくといいよ。あとからこうしておけば良かったと思っても、次はなかなか出会えないことの方が多いのだから。

その繰り返しで、被写体や撮影条件に合った撮り方がわかるようになっていくよ。

師範より6月前半の総評

花っていうのはもともときれいな被写体だけに、見た目にきれいに撮ることそれほど難しくない。でも、そこから表情を感じるのはなかなか難しいもの。ちょっと難しいテーマだったけれど、みんないろいろな表情を捉えてくれたね。

それは色だったり形だったりいろいろあるのだけれど、気になった花があったらすぐに撮り始めるのではなく、しばらく花をじっくりと見て、自分がどんなことに惹かれてこの花を撮りたいと感じたのか考えてみると、花の表情が見えて来ると思う。

できれば言葉として自分が説明できるような具体的なものが見えてくると、どう撮ればそのイメージに近づけるかも考えられるので、そこまでじっくり考えてみよう。

なんとなくきれいとかいいという曖昧さが残っていると、それは写真も同じように見えてしまうよ。

記念品のお届けについて

tukiromiさんには「免許中伝ミニ木札」、ぷりずなーさん、tokutoku1002さんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は7月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、6月前半のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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