7月のお題は…『瞬間』

小林義明 師範

写真の面白さは肉眼では捉えきれない一瞬を映像として残すことができること。今回は、決定的瞬間とまではいわないけれど、写真だからこそ捉えられる一瞬をテーマとしたい。
自然のなかにはこんな瞬間もあるんだと気づかせてくれるような瞬間を捉えてみよう。高速シャッターや連写などを活用して撮影してみるといいよ

 

小林義明 師範からの7月のお題は『瞬間』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

7月の挑戦者その4:eiwa1jp(えいわいちじぇいぴー)さん

練馬区にある三宝寺池で撮影しました。
蜘蛛の糸に吊るされた花。「花の降る午前」の一枚です。

eiwa1jp(えいわいちじぇいぴー)
東京都在住、男性。毎週日曜日、公園の花や木々の変化を感じながら撮影をしています。レンジファインダー機、一眼レフ機は素通しのファインダーを凝視することで、撮影後の仕上がりをイメージしながら露出を決める楽しさがあります。PENTAX K-3 Mark IIIとsmc PENTAX-DA★50-135mm F2.8ED [IF]SDMで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

空中に浮いて見える花。上から落ちてきた花を捉えたのかなと思ったら、クモの糸についている花なんだね。よく見ないとクモの糸が分かりにくいので、落ちてきているように見せるという意味で狙いは成功と言えるかな。

写真は「真を写す」を書くけれど、見せ方によっては事実と違うイメージを表現することができるので、これは落ちてくるように見せたことでその瞬間をイメージさせているよね。

ただ、クモの糸についているということはもう少しじっくり撮れる時間もあったということだと思うので、風で揺れる難しさはあるもののレンズを変えてアップで狙ってみるとか、より工夫をしてみて欲しかったな。

花が落ちてくるといったシーンはなかなかないように思うかもしれないけれど、桜のシーズンだと桜の花をスズメやヒヨドリが食べては落とすようなことがあって、次から次へと落ちてくる花を撮影したことがあるんだ。
AFではピントが合わないから置きピンで撮影したんだけど、けっこう撮れたものだよ。

意図しているところはいいので、より完成度の高い写真となるよう、意識して同じようなシーンを探してまた撮ってみて欲しい。

7月の挑戦者その5:あおべーさん

ミツバチが蜜を吸ったあと、飛び立とうとする瞬間。
春先には小さかったミツバチが、1週間を過ぎる頃から体つきが大きくなっていき、
それから脚に花粉をつけるようになりました。
よく見れば、花粉だんごがとても重そうで、
これを脚につけて飛び続けるのはものすごいエネルギーがいるだろうなぁと・・・。
ミツバチが一生の間に集めるはちみつは、スプーン1杯分なのだとか。
はちみつ1瓶のなかには、何匹のハチの働き分が入っているのだろう?と考えてしまった。

あおべー
栃木県在住、女性。足元にある小さな自然や美しい色をしたものを撮るのが好きです。PENTAX K-3 Mark IIIとsmc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

ミツバチが蜜を吸いに来て花にとまる瞬間なのか、直前にホバリングしているところだね。ミツバチの姿を写し止めることはうまくできているね。ピントもシャープだし、体に付いた花粉の様子もしっかり分かる。

この部分だけを見ればうまく撮れていると言えるけど、全体としてみると、まだまだ足りないところがある。

ひとつは構図的にまわりにたくさんの花があるので、主役であるミツバチが目立ちにくいということだ。構図としてはミツバチがいるあたりの左上1/4くらいで充分だと思う。小さい被写体だし動きもあるのだけど、ミツバチが次にやってくる花を予測して待っていると、意外と撮れるものだよ。

もうひとつは基本的なことだけれど、露出が暗いためにミツバチが目立たなくなってしまっている。ミツバチ自体が肉眼で見たよりも暗くなっているのとまわりに白い花が多いので、視点は花の方に行ってしまうんだ。

花の白トビを避けてこの露出になっているのかもしれないけれど、その場合は後処理をして見た目に近いイメージに仕上げることが必要になる。

DCU5(Digital Camera Utility 5)で調整したものをつけておくので、参考にしてみて欲しい。ここではトーンカーブのみの調整で、白とびしない範囲でミツバチが明るく見えるようにしている。ややフラットな感じなので、シャドーをもう少し締めてもいいかもしれないね。

撮りっぱなしではなく、見た人が分かりやすいような仕上げは必要だと思う。撮影時にカスタムイメージのコントラストを下げるような設定も有効なので、試してみよう。

〔左)元の作品 / 右)小林義明師範によるレタッチ見本〕

※スライダーのドラッグで表示画像を切り替えられます

 

〔DCU5(Digital Camera Utility 5)での調整後のトーンカーブとヒストグラム〕



7月の挑戦者その6:ススムさん

コスモスで吸蜜するホシホウジャクを撮影しました。
ホバリングしている姿を1/2500秒のシャッタースピードで撮ったところ、
素早い翅の動きと安定した胴体の様子をおさめることができました。

ススム
埼玉県在住、男性。生き物の写真を撮るのが趣味で、特に昆虫のマクロ撮影が大好きです。PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

お見事!

小林義明 師範からの添削コメント

 

ホシホウジャクがホバリングしならが吸蜜するシーンをシャープに撮影できているね。順光の光でホウジャクやコスモスの姿や色もしっかり見せられていていいと思う。

被写体の動きに合わせて速いシャッター速度を選択したのが成功のポイントだね。体はしっかり止まっていて、翅の先端がちょっとぶれていて動感も残っている。ピントが頭から尻の先端まできちんと合っているのもすばらしい。

ホウジャクの吸蜜は比較的予想しやすいシーンであるけれど、構図的にもしっかりしていて余分なものを画面入れずにすっきりとまとめている。被写体をきちんと引き立てることができているね。

被写体の見せ方、構図の作り方共にしっかりしているので、免許皆伝を与えよう!

これで完成といわず、見る人をびっくりさせるような瞬間も狙ってみるよう挑戦して欲しい。

師範より7月後半の総評

このご時世のせいか、今回はストックから選んだ写真も多かったように見受けられるけど、これだっていう瞬間を捉えた写真というのはなかなか探すのも大変だったのではないかと思う。

魅力的な瞬間を捉えるためには、運良く撮れることはあるかもしれないけれど、基本的に事前に準備も必要だと思う。

こんな瞬間を撮りたいといったはっきりしたビジュアルイメージを持ち、被写体をじっくり観察してどのタイミングで撮影するのか、作戦を練ることが大切だ。

また、とっさの瞬間に対応できるよう、カメラを手足のように扱えることも必要になるだろう。

何気ない日常の中にもハッとするような瞬間は潜んでいる。その瞬間に気づき捉えることができるよう、日頃から鍛錬しておこう。

 

記念品のお届けについて

ススムさん、免許皆伝おめでとうございます!「免許皆伝看板」「免許皆伝ミニ木札」をお贈りします!

eiwa1jp(えいわいちじぇいぴー)さん、あおべーさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は8月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、7月後半のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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