11月のお題は…『紅葉の鮮やかさ』

小林義明 師範

秋は一年のなかで最も色鮮やかな季節です。それは赤や黄色の紅葉のおかげ。紅葉の魅力は色の鮮やかさだけではありませんが、今回のテーマでは“紅葉の鮮やかさをどう表現するか”にこだわってみたいと思います。とくに赤は飽和しやすいので、色飽和せず階調性を持たせながら鮮やかな表現ができればベストでしょうか。インスタではないので、彩度を高くするような画像処理はしないでストレートに撮影したもので勝負してください。

 

 

小林義明 師範からの11月のお題は『紅葉の鮮やかさ』でした。
このお題に対して挑戦してくださった方の作品と、師範からの添削コメントを併せてご紹介します。

11月の挑戦者その1:ゆうきヘクタールさん

日本の中でも特に好きな地域の1つ、由利本荘や仁賀保といった鳥海山の秋田県側の紅葉が見たくて週末に弾丸撮影ドライブに行ってきました。有名な撮影スポットも良いですが、道路わきの無名の池の紅葉があまりにも美しくて目を奪われました。こういう色合いを錦って言うんだなと思います。

ゆうきヘクタール
茨城在住の関西人です。PENTAX歴は9年ほど。週末はバイクや車で色んなところに綺麗な景色を求めて出かけています。PENTAX K-1 Mark IIとHD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

小林義明 師範からの添削コメント

 

有名撮影スポットを避けて何気なくみつけた風景とあるが、なかなかすばらしい紅葉だね。コメントにあるとおり、「錦」という言葉がピッタリの景色で、いい景色をみつける目を持っていると思う。

パッと見るときれいな景色に納められているように感じるが、第一印象が地味になってしまった感じがする。なぜかといえば、写真を見るときに始めに視点が向かう画面中央に暗い色が集まってしまっているからだ。中央の赤はいちばん濃い色のためやや暗く沈んでしまっているし、針葉樹も多く配置されていて、本来見せたい赤や黄色の印象が薄まってしまっている。また、画面の左側に赤系、右側に黄色系が配置されているため、明るい黄色に視点が寄せられてしまい、中央の色があまり見えてこない色の配置になっている。

この場所では、赤を見せたければ画面の左側のみ、錦のイメージだったら右側のみで切り取れると意図がはっきりしてくる。ちょっと画面を半分隠しながら見てみて欲しい。



私だったら、画面左側を縦位置で切り取っていただろうか。そうするとそれぞれの色が偏ることなく当分に配置されて、まさに「錦」のイメージで見せらるようになると思う。

この景色はいいところがいっぱいあって、その全体をまんべんなく画面に入れてしまった状態になっている。ここからもっと自分の見せたいところを突き詰めていくことで、より気持ちが伝わる作品に仕上げられる。良く定番の写真と同じように撮ることに囚われてしまう人がいるが、それはいい条件(光や天候、風景のコンディション)が揃ったときにこそ有効で、いつもその条件が揃うわけではない。今自分が出会った景色をどう見せれば魅力的になるか、じっくり風景と向かい合いながらいろいろな構図で撮影してみよう。

11月の挑戦者その2:Asafさん

青い葉と黄色い葉と赤い葉が同時に撮れる時期に行きました。あえて太陽越しに撮ることで透明感を出そうと頑張ってみました。

Asaf
千葉県在住、男性。多めに見てくだされ。PENTAX K-70とsmc PENTAX-DA 50mmF1.8で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

小林義明 師範からの添削コメント

 

モミジの紅葉を撮影する場合、色をきれいに再現するにはいくつかのポイントがある。写真を撮るには順光と思っている人もいるかもしれないが、それは青空を背景に撮影したいときの基本。順光は被写体の隅々まで光が当たり、被写体の形や色を再現しやすい。しかし、実際に撮ってみると思ったほど色が出ないこともある。このように晴れていると、葉の表面に反射が起きて意外と白ぽっく写ってしまうことも多いのだ。

そんなときにどうするか?

この作品のように逆光で撮影するのだ。モミジの葉は光を通すので、透過光となり葉の色をきれいに見せることはできる。とくにこのような部分的な切り取りで撮影するのには効果的な光の選び方だ。

だが、この作品ではいくつかのミスがある。ひとつはメインのモミジよりも目立つものがいくつか画面に入っていること。風景撮影ではこのように太陽を入れて光芒を発生させるのは、インパクトがあって人気のある撮り方だが、ここでは画面の中央に強く光芒を入れたため、モミジよりも目立ってしまっている。こういうのはさりげなく画面に入れるのがコツなのだ。また、太陽を入れるために空も明るい部分を使っているため、背景も明るく目立っている。よく曇天の空はあまり画面に入れないようにといわれるが、このように白っぽく写る空もあまり多く入れないようにした方が色を強調しやすい。

もうひとつは葉の密度。透過光でモミジを見せられているのは画面中央部分のみで、右や左上のあたりは葉が混み合って重なってしまっているために、影ができて黒く写ってしまっている。幹の広がりを考えてこのようなフレーミングになっているのだと思うが、葉の色を見せるためには中央部分だけでいいのではないだろうか。透過光で葉を撮影する場合は、その密度に注意して重なっていないところを狙うようにしよう。

写真は光の絵なので、光を読み取ることができるようなれば、大きくレベルアップできる。肉眼での見え方はカメラと同じではないので、カメラで撮影したらどう写るかを考えながら絵になる場所をみつけるようにしよう。

11月の挑戦者その3:おーちゃん

くじゅう連山の三俣山にて。火口跡の斜面に広がる灯台躑躅の紅葉。火口をお鉢廻りする人たちと合わせて撮ってみました。

おーちゃん
福岡県在住、男性。登山と花が好きです。PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

小林義明 師範からの添削コメント

 

黄から赤まで色とりどりの紅葉があり、すばらしい山の景色。火口跡に広がるドウダンツツジの紅葉ということで、なかなかいいタイミングで紅葉に出会うことができているのではないだろうか。よく見ると稜線を歩く登山者の姿もありスケール感のある風景となっていて、カスタムイメージは雅を選んで赤系の色を強調しているなど、この撮り方は間違っていない。

ただ、それは晴天であれば、ということ。

この作品では遠景の背景が白く煙っていて、意外と目立つ。その背景が画面の1/3ほどを締めているために、背景が目立ってしまうように感じる。すっきりと空気が澄んでいて、背景がはっきりと見えていたら、免許皆伝にしたかったところだ。この撮り方は、ほぼこの場所での定番構図だと思うが、それは晴天のいい光が入っているときに成り立つものなのだ。

この天候であれば、画面上の白く煙るところは減らすためにもうちょっとアップで撮影するか、画面下をもう少し多くフレーミングするのがいいだろう。アップで撮影するには、撮影データを見るとクロップしているようなので、もっと望遠レンズが欲しいところ。さすがに登山にはHD PENTAX-D FA 70-200mmF2.8ED SDM WRやHD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AWは重いので、これから出てくるであろう70-200mmF4クラスのレンズのはやい発売に期待をかけたいところ。普及タイプの望遠ズームも早く出して欲しい。これはみんなで応援して、いち早く発売してもらいたい。

この画角のまま画面の上をカットするためにはカメラを下に振る必要があるが、画面の左下にはちょっと緑色の木が見えているので、このタイミングでは紅葉以外を入れたくなかったということだろうか。画面を紅葉だけに統一するのも悪くないが、緑があることで赤や黄色が強調されるので、このシーンでは、画面下をもう少し入れるようにするのが正解だったように思う。

自然はいつも同じではないので、定番の風景や構図にとらわれず、臨機応変に自分が出会えたなかで最高の見せ方を考えるようにするといいと思う。他の人の写真を見るときにも、真似するためのものとしてみるのではなく、どうしてこの構図なのか考えてみると、レベルアップできるようになるぞ。

添削コメントをご参考にしていただきつつ、ぜひ以降のお題にもチャレンジしてみてください!

>>12月のお題はこちら

作品を取り上げさせていただい方には、『免許皆伝』となった方はもちろんのこと、『門前払い』の方にも、それぞれ記念品をお届けします。