5月のお題は…『花のある風景』

小林義明 師範

最近では各地に大きな花畑などが作られるようになり、見事な景色が広がっているところも増えてきた。5月は季節を問わず花のある風景をお題として募集してみようと思う。一面に広がる花畑もいいが、景色のなかにアクセントとしてぽつんと咲く花もまたいいものだ。花がもつ鮮やかさや彩りの組み合わせなど、花の魅力を十分に引き出した作品を待っている。

 

小林義明 師範からの5月のお題は『花のある風景』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

>>小林 義明 風景・ネイチャー道場『5月前半分の結果』はこちら

5月の挑戦者その3:たにやんさん

よく晴れた五月の午後、お堀のきらめきをバックに小さな花が風に揺れていました。
望遠レンズで覗けば、さながらステージで踊るアイドルのようでした。

たにやん
滋賀在住、男性。35mm判はPENTAXメインで撮影を楽しんでいます。Z-1p以降の銀塩カメラもまだまだ現役です。PENTAX K-S1とsmc PENTAX-DA L 50-200mmF4-5.6EDで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

小林義明 師範からの添削コメント

 

お堀のきらめきを玉ボケの背景にして、花をシルエットで見せるという絵作りはいいね。きらめきの輝度が高いためにハイライトに露出を合わせるとモノトーンに見えるのも面白いと思う。

このようなきらめきを背景にするときの難しさは、肉眼で見ているのと同じような写り方にならないことだ。きらめきは水面の波立ちの反射によって起こるのだが、波は一カ所でジッとしていなくて、幅広い範囲で常に変化している。肉眼ではキラキラと移動しているきらめきも写真ではシャッターを押した一瞬しか記録されないため、シャッターチャンスの見極めが重要だ。

この写真では、ひとつの花は完全に玉ボケの中に入っているが、その下の花はやや暗い背景と重なってしまい、写真を小さくするとその存在が分かりにくくなってしまう。肉眼で見ているときは、きらめきが常に移動しているため、シルエットにした花の姿も認識できるのだが、写真だとそうはいかない。完全に玉ボケと花がうまく重なるように撮ることが必要なんだ。これは半分運任せのところもあるので、納得できる位置に玉ボケがくるまで何度もシャッターを切るしかないだろう。

もう一点だが、この花はキンポウゲだろうか。花が終わってしまっているものも含まれているので、このきらめきにふさわしい良い状態の花を選びたかった。とくにシルエットで見せるときは形の美しさが重要になるので、この点にも注意して被写体を選んで欲しい。

5月の挑戦者その5:ミムチさん

桜で有名な撮影地ですが桜の足元に咲く水仙に着目しました。
背景の八ヶ岳がボケすぎない様出来る限り絞ってます。

ミムチ
茨城県在住、男性。K-7で一眼レフデビューしてからPENTAX一筋です!今は念願のフルサイズK-1、K-1 Mark IIで風景写真、スナップ写真を撮っています。最近はポートレイトにも挑戦しています!PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA★70-200mmF2.8ED DC AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

小林義明 師範からの添削コメント

 

スイセンと桜、背景には八ヶ岳と写真的には魅力的な画面構成となっているね。よく知る撮影地だからこのような絵作りができたのだと思うので、そこはいいと思う。

だが、このシーンを撮影するには光が適切ではないと思うよ。ここでは八ヶ岳に射し込んでいる光に露出を合わせているので、スイセンや桜はかなり暗く写っている。
構図的にはスイセンや桜の方が主役で、八ヶ岳は場所や雰囲気を示すための脇役なので、主役が目立たなくなってしまうのはよくない。このシーンでは、もう少しスイセンに光が当たっていれば、だいぶイメージ通りになってきたのではないだろうか。
朝の撮影のようだけれど、八ヶ岳の色が白っぽくなってしまうとしても、もう少し待っていたらスイセンに光が当たるようにならなかっただろうか。
この写真では手前のボケている草には光が当たっているので、画面の中でもスイセン以上に視点を集めているのが分かるだろう。

風景撮影、とくに晴天の撮影では、画面の中でどこに光が当たっているかを見極めることが画面構成を考える上でとても重要で、構図を優先するよりも光線状態を読み取って画面構成を考えるようにしよう。

このとき私が撮影するとしたら、今回のテーマにはふさわしくなくなってしまうけれど、手前の草を前ボケに八ヶ岳にピントを合わせ、スイセンや桜は入れない撮り方をしていたと思うよ。

5月の挑戦者その6:ゴゴカラさん

風が無くきれいな夕焼けの日に、農家さんの家と田んぼを背景に菖蒲を撮影しました。
穏やかな夕暮れの心休まる空気がうまく伝わると嬉しいです。

 

ゴゴカラ
富山県在住、男性。山の写真を撮るためにカメラを買ったら、写真を撮るために山に行くようになりました。夏山シーズンには気兼ねなく登れるようになっていることを期待しています。PENTAX K-70とsmc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

小林義明 師範からの添削コメント

 

たんぼの脇に植えられた菖蒲ということで、日本の農村の雰囲気が伝わってくる写真だね。たんぼの水面は凪いでいて、穏やかな感じだ。とてもいい光で撮影しているけれど、おそらく雲ひとつない快晴の光なので、画面のコントラストが高く、写真として再現するのが難しいシーンだね。

この写真で思うのは、菖蒲の花のイメージが伝わりにくくなってしまったように感じるのが惜しいところ。

画面右側の水面が背景になっているところは菖蒲の形が見えてくるけれど、背景が明るいために色が伝わってこない。左側のあたりは色がよく出ているのだけれど、花が重なりすぎてひとつひとつの花の形が伝わりにくい。
また、背景の建物やビニールハウス、道路などの直線が強く見えてしまうのも花の形が見えてこない理由のひとつになるだろう。

このシーンでは、もう少し花に近づいて形を分かりやすく見せると同時に背景を整理する必要があると思う。花をどのくらい入れるのがいいかは、トリミングした画像をつけておくので参考にして欲しい。

背景の整理方法としては、少しアングルを下げて花で家の右側に黒っぽく見えている道路?のあたりを隠すくらいにするといいだろう。画面右側の水面もちょっと面積が多いように感じるので、入れないようにするかカメラポジションを左側に移動して花で水面を隠すようにすると構図がまとまる。

もう一点は背景をぼかすためにあまり絞り込んでいないと思うのだけれど、花が密集しているところでは中途半端にぼけている花が見えるため、ここにはしっかりピントが合うようにしたいところだ。

記念品のお届けについて

たにやんさん、ミムチさん、ゴゴカラさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

 

記念品は7月上旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

 

その他の投稿作品をご紹介

最後に、5月のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

>>6月のお題はこちら