7月のお題は…『夏を感じる風景』

小林義明 師範

季節感を表現する場合、秋から春にかけては表現しやすいが、夏というのは意外と難しいように感じている。ここ数年の異常な暑さからつい外出しないということもあるのかもしれないが、自然のなかでは特徴的なものが少ないからだろうか。7月はちょっと難易度の高いお題を出してみようと思う。夏らしい暑さやギラギラと照りつける太陽の日射しなどを写真で表現してみて欲しい。

 

小林義明 師範からの7月のお題は『夏を感じる風景』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

7月の挑戦者その1:tokutoku1002さん

白樺並木の下にいろいろな花が咲き乱れて綺麗でした。

tokutoku1002
東京都在住、男性。風景写真を中心に、旅写真やスナップ写真を楽しんでいます。PENTAX KPとHD PENTAX-DA 16-85mmF3.5-5.6ED DC WRで撮影。

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

シラカバ並木の手前に広がる花畑、色とりどりできれいだね。
この赤い花は名前が分からなかったので調べてみたのだけれど、クロコスミアでいいのだろうか。

この赤い花と葉が作り出す流れとシラカバ並木の奥行きが空間の広がりをうまく表現できていると思うな。木陰のちょっと涼しげな感じもいいと思う。

この写真で惜しかったのは、画面上に見えている枯れ枝とピントの合わせ方。

まずこの枯れ枝だけれど、もしかしたら気づいていなかったかな?
この花の流れと背景のシラカバの重なりなどを考えると、このカメラポジションがベストなのだと思う。だけど、せっかく明るい色でまとめているなかで、この枯れ枝は見せたくないなぁ。生き生きとした雰囲気を壊してしまう。この枝を入れないように、カメラポジションを探し直してみるのがなにより必要だったと思う。

また、ピントに関してはなかなか難しいところだね。撮影時はF8とあまり絞り込んでいないけれど、85mmと中望遠の画角で撮影しているので、それほど被写界深度は深くならない。拡大してみてみると、中央あたりの白いセリのような花にはピントが合っているのだけれど、その前後はぼけている。
このように被写界深度が浅いときは、画面の中で目立つところにしっかりとピントを合わせておきたいので、中央右の赤い花にピントを合わせるのがいいだろう。またはちょっとアングルを下げて一番手前の赤い花が集まっているところにピントを合わせるというのもアリだと思う。

伝えたい雰囲気は良く分かるので、より完成度を高めていくために、じっくりと撮影現場の様子を観察することをしてみよう。

7月の挑戦者その2:akeさん

ふと見上げたら蝉の抜け殻を見つけました。
木漏れ日がキラキラしていて夏だなぁとシャッターを切りました。

ake
大阪府在住、女性。ファインダーをのぞくのが好きですPENTAX K-3 IIとHD PENTAX-DA 55-300mmF4-5.8ED WRで撮影。

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

玉ボケを使って夏の光を上手く表現できているね。主役であるセミの抜け殻や葉にも光が当たっていて、それぞれの存在感もきちんと出ている。光の読み方がとてもいいと思う。構図としても適度に空間を広くしていることで、森の広がりなどを感じられる。

でもね、ひとつ大きな問題がある。

それはピント。主役であるセミの抜け殻に対して、やや後ピン(後ろにピントが合っていること)になってしまっている。
望遠レンズを開放絞りで撮影しているので、被写界深度が浅くなる条件だけに、ピント合わせはシビアに行いたいところ。ピントを合わせたあとにちょっと体が動くだけでピントはズレてしまうので、シャッターを押す前にもう一度ファインダーの像を確認するようにしたい。

AFロックをしているとすると、このくらいカメラを動かすことでピントがズレてしまうことも多いので、構図を決めてから測距点を被写体の近くに移動して、なるべくカメラを動かさないでいいようにすることも必要だ。
また、今回は逃げてしまう被写体ではないので撮影後に落ち着いて画像を再生し、拡大してピントを確認することも大切だと思う。ピントが甘ければもう一度撮影すればいいのだから。

とはいえ基本的に自然の被写体は二度目のチャンスはないことが多いので、その場で確実に写しておくという心構えが大切だと思う。そして、ピントは写真のなかでも最も重要な要素のうちのひとつ。ある程度大きく引き伸ばしてもしっかりピントが合っていることを基準にして、自分にも厳しくチェックするようにしてみよう。

7月の挑戦者その3:プリちゃんさん

夏の渓流に朝の光芒が差し込んだ瞬間を捉えました。

プリちゃん
静岡県在住、男性。愛用のカメラはK-1。特に風景を中心に撮影しています。PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WRで撮影。

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

渓谷に射し込む光芒、とてもきれいだね!光芒のバランスも良く、迫力のある風景となっている。こんなシーンに出会えたらとてもラッキーだよね。

とてもワクワクしながらシャッターを押していたことだと思うけれど、もっと冷静になろう。ちょっとフレーミングが甘いのが気になるんだ。

ひとつは画面中央下に岩の頭が見えていること。光芒が射し込んでいる部分は川霧のせいで景色がちょっとボヤッとしているでしょ。でもこの岩のところははっきり見えているので、とても目立ってしまう。いちばん太い光芒が射し込でいるところの傍にあるというのも目線が引きつけられてしまう原因だね。
だから、この岩は画面に入れないようにしたいところだ。岩の右側に見えている川の流れを入れたかったのかと思うけれど、この部分はあまり重要ではないと思うよ。また、画面右側の暗い空間も同様に減らしていいと思う。

もっと光芒を画面全体に入れればもっと迫力が出てくるなど、この一枚からいろいろな切り取り方が浮かんできてしまうので、全体を説明的に捉えたような感じがしてしまうんだ。レンズを見ると画角にはかなり余裕があるようなので、他にもいろいろな構図で撮影しているだろうか。

また、このようなシーンは川霧が刻々と変化するのでシャッターチャンスも意外と難しいし、肉眼で見ているのと写真に写るのではだいぶ雰囲気が変わってしまうところもあるので、撮影しながらときどき画像をチェックするといいね。

師範より7月の総評

長梅雨のおかげで夏らしい天気がなかったせいか、ちょっと応募数が少なくなってしまって、お題を間違えたかなぁと反省。ただでさえコロナで外出しにくいなか頑張って応募してくれたみなさんには感謝している。

ただ、雨が降っていたとしても何かしら夏を感じられる被写体は見つかると思うので、思い切ってカメラを持って身近なところを歩いてみるのもいいと思うよ。身近なところを日々みつめることで季節の移り変わりや意外な被写体との出会いがあると思う。それに晴れていなくても、水滴のついている景色ってきれいなので、撮り始めたらはまるんじゃないかな。

いろいろなところに心のアンテナを張り巡らせて景色との出会いを楽しんでみよう。

 

記念品のお届けについて

プリちゃんさんには「免許中伝ミニ木札」、tokutoku1002さん、akeさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は9月上旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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