8月のお題は…『水景』

小林義明 師範

日本の自然風景は水と縁の深いものが多い。夏の渓谷は涼しくて気持ちいいし、海の波はいつまでいても飽きることがない。雲や霧だって水が空気中に漂う姿であり、冬になれば氷となって独特の造形も見せてくれる。このように水はさまざまな表情を見せてくれるので、いつでも撮れるすばらしい被写体であり、見方・感じ方によって大きく作品は変化するだろう。あなたならではの水のもつ魅力を活かした景色を探してみよう。

 

小林義明 師範からの8月のお題は『水景』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

>>小林 義明 風景・ネイチャー道場『8月前半分の結果』はこちら

8月の挑戦者その4:木瓜さん

カラーより白黒の方がインパクトがあると思い、モノトーンでRAW現像しました。

木瓜
埼玉県在住、男性。やっと、「写真をやっています。」といえるようなものを撮れることが、時々ありますPENTAX  K-5IIs とsmc PENTAX-FA80-320mmF4.5-5.6で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

雪どけの時期の湖だろうか。まだらに溶けている湖面から水蒸気が立ち上っていて、とてもドラマチックなシーンだ。もとはカラーだったのをモノクロとして仕上げているのは成功していると思う。奥行きのある構図もいいね。

はじめは免許中伝をあげようと思ったのだけれど、大きく気になるところがあって今回は門前払いだ。

それはなぜかというと、被写界深度が浅すぎること。100mmを越える焦点距離でどうしても被写界深度が浅くなってくるのだけれど、撮影データを見るとここでは開放絞りのF4.5で撮影されている。一番手前の木立はシャープに撮影できているけれど、奥の方はぼけてきてしまっている。湖面の氷も同様に、手前は質感が伝わるけれど奥の方では分からなくなってしまっている。薄暗い条件のようだけれど、パンフォーカスになるようF11くらいまでは絞りたいシーンだね。

このような霧が湧いているということは、あまり風も出ていないことが想像できるので、小型の三脚があれば十分シャープに撮影できたはず。私もふだんは手持ち撮影が多いけれど、このような時間帯では三脚を使っているよ。あとで後悔したくないからね。

低速シャッターのときはミラーアップと2秒セルフタイマーなどを併用することで、かなりぶれを防ぐことができるよ。80320mmは三脚座がないレンズなので、ちょっとかさばるけど最近流行のL字型プレートを使うとカメラを安定してセットできる。

すごくいいシーンを捉えているので、ある程度大きく伸ばしても大丈夫な仕上がりを意識して撮影するようにしよう。

8月の挑戦者その5:kazeさん

今にも水につかりそうな紫陽花が良い雰囲気だったので、
大雨の中びしょびしょになりながら撮った一枚です。

kaze
香川県在住、男性。光学ファインダーに魅せられてPENTAX一眼レフの虜になりました。祖父に貰ったSP FからLX~K-1 Mark IIまで今でもほとんどのカメラを使っています。写真好きですが機材オタク?でもあります。PENTAX K-1 Mark IIとHD PENTAX-D FA★ 70-200mmF2.8ED DC AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

大雨のなかでの撮影ということで、雨の重さに負けてアジサイが倒れてきてしまったのだろうか。雨の日にでかけてみないと気づけないいい被写体をみつけたね。

この場所は池の縁なのだろうか。ひとつ波紋ができていて、水という感じも伝わってくるね。でも、大雨らしさを伝えるのなら、たくさんの波紋が写っていても良かったかもしれない。こういうときはしつこくシャッターを押してイメージ通りになるよう粘ってみたいところだ。

また、水面の反射を適度に残すことで水の雰囲気を残すこともできると思うので、あえて反射を入れてみるのもいい方法だ。

この写真の意図を分かりやすくするためには、もう少しアジサイの花の形が分かりやすくなればよかったね。カメラポジションの制約があったかもしれないのだけれど、真横ではなく正面気味の角度から撮影すると、何が写っているか分かりやすくなる。
そして倒れている感じを見せるには、もう少し茎の部分を入れてもいいと思う。若干トリミングをしているようだけれど、もしかしたらトリミングしなくても良かったのかもしれないね。

ふつうに咲いているアジサイならちょっと奇をてらった撮り方をしても分かってもらえるけれど、このようないつもと違う状況だと、ある程度状況を分かりやすく見せることも必要なんだ。

写真を撮った本人はどんな状況だったか分かっているけれど、写真を見る人は分からない。それを言葉を使わずに伝えるにはどうしたらいいか考えてみるといいと思うよ。

 

8月の挑戦者その6:ススムさん

水辺にたたずむチョウトンボをほぼ真上から撮影しました。
ギラギラと照りつける太陽の光によりトンボの翅(はね)も水面も美しく輝き、
それぞれが主役と背景として真夏の一時を演出していました。

ススム
埼玉県在住、男性。生き物の写真を撮るのが趣味で、特に昆虫のマクロ撮影が大好きです。PENTAX K-3とsmc PENTAX-D FA MACRO100mmF2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら…

小林義明 師範からの添削コメント

 

チョウトンボを上から撮影して羽根の美しさを上手く捉えつつ、水面の反射を玉ボケとしてうまく生かしているね。とてもシャープに撮れていて、いいと思うよ。

狙い通りに撮れているのだと思うけれど、玉ボケがバランス良く出てくれたら、より水のイメージも強くできたと思う。今回のテーマは水景だから、もう少しまわりに水を感じられる部分が多くてもいいと思うんだ。

画面を見ると左側にはたくさんの玉ボケがあるのだけれど、右側にはあまり出ていない。でも、ファインダーではもっと見えていたんじゃないかと思うんだ。

水面の反射はある程度水面が波立っていないとこのようなキラキラは出てこないし、肉眼では明暗差があってもしっかり情報として捉えてくれる。でも、カメラで撮影するといろいろな要因があって、見た通りには写らないことが多いんだ。

ひとつは水面が波立つタイミング。キラキラがたくさん出ているように見えていてもシャッターを押した一瞬で考えると、光っていないところも意外と多いもの。肉眼では残像も見えていて画面一面に入っているように見えていても、タイミングを逃すと写ってくれない。
また、きらめきの明るさの違いも大きく影響している。肉眼では見えていても暗い玉ボケは写真には写ってくれない。

このようなマクロ撮影ではピント合わせに集中してしまうかもしれないけれど、きらめきが見えるタイミングを考えてシャッターを押したり、玉ボケがイメージ通りに写るように余分にシャッターを押しておくことも必要だね。

 

師範より8月の総評

猛暑のなかたくさんの応募、ありがとう!
力作が多くて今回の選考はなかなか悩ましかった。

暑い時期は私も水辺の撮影が好きなのでこのテーマとしたのだけれど、暑さを忘れるにはちょうどよかっただろうか。

そのなかで気になったことがひとつ。
滝や水の流れをスローシャッターで撮影している写真が多く見られたのだけれど、カメラブレしてしまっているものが多かった。
SRが搭載されているとはいえ、ちょっとしたことでカメラブレは起きてしまう。作品として人に見てもらうのであれば、そのあたりは自分に厳しくチェックしておいて欲しい。

免許皆伝の目安としては大伸ばしをしても十分耐えられるシャープさが必要だということは覚えておいて欲しい。

 

記念品のお届けについて

木瓜さん、kazeさん、ススムさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は10月上旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、8月のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

 

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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