9月のお題は…『刻(とき)を感じる風景

小林義明 師範

写真は一瞬を切り取り記録するものだが、その表現次第では一瞬の中にも時間の経過を感じさせることができるもの。ちょっと難しいお題となるが、風景のなかに時間の流れやもっと長い時間の変化となる歴史的な刻(とき)を感じられる作品を募集してみたい。どういった被写体や光線、タイミングで撮影すると時間を感じることができるのか、考えてみてもらいたい。

 

小林義明 師範からの9月のお題は『刻(とき)を感じる風景』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

>>小林 義明 風景・ネイチャー道場『9月前半分の結果』はこちら

9月の挑戦者その4:植木屋フォトマンさん

根っこがここまで伸びる膨大な時間と、椿の花が落ちるまでのわずかな時間。
この対照的なモノに刻を感じました。

植木屋フォトマン
兵庫県在住、男性。癒される風景を日々探しております。PENTAX  K-1 MarkII とsmc PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limitedで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

ニックネームを見ると日頃から植物の世話をする仕事をしているのだろうか。そういった仕事をしているから感じる植物のもつ時間を表現しようとしたのはいいと思う。根が張って木が大きくなるまでの時間と、ツバキの花が咲いてから落ちてしまうまでの一瞬の時間、なかなか風流だよね。

画面構成もけっこういいところまで行けていると思う。木漏れ日が落ちる手前のところには根と落ちたツバキの花があって、対比したい二つを見せることができている。そして、背景でツバキの木であることも説明できている。画面構成としてはこれだけで十分なんだ。

この場所はきれいに苔が生えているのでこれ以上前に出られなかったかもしれないけれど、もうちょっと前にでてメインとなる根とツバキの花に近づいて大きく撮影したかった。そうすることでよりイメージがはっきりする。また、画面右側に見えている幹は必要ないので、ここはカットする。木であることは後ろに見えている木が説明してくれている。

あとは、デジタルフィルターを使っているようだけれど、この仕上がりだと撮影時にカスタムイメージの調整をしておけばかなり近づけるはずなので、後処理に頼らず撮影時にバシッと決めておこう。

シャープネスをあげているように思うのだけれど、ノイズも目立つようになってしまった感じだよ。このようなシーンは、カスタムイメージの詳細設定で、コントラストを下げ、キーをあげるといいぞ。ぜひ試してみて欲しい。

9月の挑戦者その5:おーちゃんさん

千年以上の歳月と雨が土を流し、根で支えられている古代杉。
その根に絡みつく若い他の木々や苔。人の一生では計り知れない歳月かな。
(鹿児島県屋久島町白谷雲水峡にて撮影)

おーちゃん
福岡県在住、男性。ネイチャーフォト好きですが最近はもっぱら子供の写真ばかり撮ってます。PENTAX K-3IIとsmc PENTAX-DA★ 16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

屋久島のくぐり杉だね。やはりこの大きさは圧巻。樹齢は不明ということなので、とんでもない時間を過ごしてきた巨木だ。刻を感じる被写体としてふさわしいよね。

さて、撮り方としてはやや定番で収まってしまった感じがあるなぁ。この杉は上の方はまっすぐ伸びているだけなのであまり絵柄的には格好良くないよね。基本的にはこの根元だけを見せるのでいいと思う。でも、通路にしいてある木が見えているのも観光写真的なので、もう一工夫したいところだ。

この写真を見ていると撮影したときの光では、画面右側に見えている古代杉の根に絡みついている他の木の根に光が当たっていて、ここがいちばん目立つ。ということは、いいポイントになるということでもあるので、全体を見せるのではなく、この根に絞ってフレーミングすると良かったように思う。

ふつうに森を歩いていても、こんな状態の木は滅多にないよね。だから古代杉にこだわらず、この根に注目して構図を考えていくと定番と違う写真が撮れたと思う。
私だったらローアングルからカメラを構えて、通路をあまり見えないようにしながら、この絡みついている根を縦位置で撮影してみるかな。画面右半分で構成していく感じかな。

観光ツアーだとゆっくり撮影している時間がないこともあるし、こういう観光地だと定番の撮影をして終わりということもあるかもしれないけれど、定番を撮影したらプラスアルファでも撮影しておく癖をつけるようにしよう。

 

9月の挑戦者その6:あおべーさん

6月に咲いたアジサイが、徐々に枯れていく間も美しい色をしていることに惹かれました。
この写真は、7月23日に撮っています。この色合いに、日本的な詫び寂の世界を感じます。

あおべー
栃木県在住、女性。5年前にK-50を購入してデジタル一眼デビュー(?)しました。去年、ずっと欲しかった100mmマクロを中古で手に入れ、さらに世界が広がりました。そのマクロレンズがフルサイズにも対応していると最近知って、今、無性にK-1Ⅱが欲しいです!PENTAX K-50とsmc PENTAX-D FA MACRO100mmF2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら…

小林義明 師範からの添削コメント

 

アジサイは咲き始めから枯れるまで刻々と色が変わっていき、時間の経過を感じられる花だよね。この写真もまだ青い色が残っている花と咲き終わって色が変わっていく花を一緒にフレーミングしていて、その経過が伝わってくる。

狙いはいいと思うのだけれど、しみじみと刻の流れを感じるという思いにならないのはなぜだろう。私はふだんから花を見ているせいで、この色の組み合わせがふつうに見えてしまうからだろうか。

私なりの考え方としては、色が変わってこれから枯れていく花の部分もまだきれいに見えるからなのかもしれない。花を知らない人が見たら、ふつうにこういう二色の花が咲いていると感じることもあるだろう。

もう少し経って下を向いた花が枯れ始めたようなところまで見せると、よりイメージしていた花の変化が伝わるように思う。

写真の難しさは言葉での説明がない分、画面の中でいろいろなことを伝えることにある。この場合は花に詳しくない人が見てもその変化が分かるように工夫したいところだ。

また、色が変わっているところにも視点が向くように、その部分にもピントを合わせた方がいいだろう。このカットでは開放絞りで撮影していて一部にしかピント合っていないため、その部分にしか視点が向かわない。ピントの合わせ方で視点の動きも変わってくるので、そのへんも研究してみよう。

 

師範より9月の総評

今回はちょっと難しいテーマをあげてみたのだけれど、やっぱり難しかっただろうか。

こういった漠然としたテーマの場合は、撮影するときに自分なりにイメージをはっきりと持つことが大切で、どんな被写体を選び、どう見せるのかをきちんと考えておかないと中途半端になってしまうことが多い。

今回のテーマでは時間の経過を感じさせたいので、動きや新旧の対比、誰もが分かる古いものなどを選んだ写真が多かったのだけれど、そこからどう見せるかという部分では工夫が足りなかったように思う。

被写体の選び方は間違っていないと思うので、そこからどう見せればテーマに沿った内容の作品になるのか悩んでみて欲しい。できれば、作品の説明なしにイメージが伝わるのが理想だよ。

 

記念品のお届けについて

植木屋フォトマンさん、おーちゃんさん、あおべーさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は11月上旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、9月のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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