10月のお題は…『音の聞こえる景色』

小林義明 師範

自然のなかにいると、さまざまな音が聞こえてくる。草木のそよぐ音、生き物たちの活動する音、水の流れる音・・・
ふだんは意識していないかもしれないけれど、無意識に聞こえてきている自然の音。こういうことを意識して自然を見つめるようになると、いろいろなものが見えてくるようになるぞ。だからこそ、今回は音が聞こえてくるような写真を送って欲しい。音は何処にでもあるのだから、撮影場所などにもとらわれることなく探してみて欲しい。

 

小林義明 師範からの10月のお題は『音の聞こえる景色』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

10月の挑戦者その1:ススムさん

木の幹にとまったアブラゼミ。
関東平野の夏の音といえばこの虫を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
背景の木漏れ日を活かすために、F値を円形絞りが保たれるF4に設定して撮りました。

ススム
埼玉県在住、男性。生き物の写真を撮るのが趣味で、特に昆虫のマクロ撮影が大好きです。PENTAX K-3とsmc PENTAX-D FA MACRO100mmF2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

アブラゼミを爽やかな色調で撮影できている。ピントもしっかり合っているし、背景の玉ボケの入れ方もいいと思うよ。いちばん明るい玉ボケとセミの顔のあたりを重ねたことで、視点も主役に向けることができている。

『音の聞こえる景色』の題材としてセミを選んだところはいいと思う。「セミ=鳴き声」でたいていの人がセミの鳴き声をイメージできるだろう。ただ、難しいのはセミが鳴いているということをどう感じさせるか。

このシーンは、おなかに力を入れてちょっと羽根を開くような状態なので、鳴いている瞬間を捉えていると思うのだけれど、そのシーンを見たことがない人は、なかなかセミが鳴いている写真と見ることができないのではないかなという感じがしたんだ。

もうひとつは爽やかな色調からセミを美しく見せられているけれど、その分動きのイメージが弱くなってしまったように思う。夏らしいギラギラした光を選んでいたら、そこからやかましく鳴くセミの声も強く聞こえてくるようになったのではないだろうか。このような光や露出を選ぶのなら、アブラゼミではなくヒグラシだったらイメージがピッタリではないかと思う。

今回のテーマでは、被写体そのものよりもそこから連想される音が重要なので、更なる工夫が欲しかったと思う。基本的な撮影テクニックはあるので、ここからイメージを膨らませてみて欲しい。

10月の挑戦者その2:秋田のナマハゲさん

雪がチラチラ舞う夕方に、雪を目立たせたくてフラッシュを発光させて狙ってみました。
メルヘンチックに見えるよう彩度を調整

秋田のナマハゲ
秋田県在住、男性。主に北東北三県の風景写真や、祭りの撮影をして余生を楽しんでおります。PENTAX K-1 Mark IIとHD PENTAX-D FA24-70mmF2.8ED SDM WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

ポツンと一本の木が立つ丘の景色と、粉雪が舞う景色がいい雰囲気だね。薄暗く青みの強い色調も冬らしい寒さを伝えている。フラッシュを使って粉雪を浮き上がらせているところや横に流れるような雰囲気から、冷たい風が吹く音が聞こえてくる。

この写真は基本的な構成は問題なくて、うまく撮れていると思う。

だけど、肝心な木の部分にピントが合っていないんだよ。おそらくかなり手前にピントが合っている状態なのではないかと思う。

撮影データからピント合わせの方法が推測できないのだけれど、このくらいの明るさであれば、ライブビューに切り替えて拡大しながらピントを合わせればMFでも十分にピントを合わせることができたはず。

風景撮影はシャープさが命だし、ある程度の大伸ばしできるレベルであることが必要だと思う。

この写真は、きちんとシャープに撮れていれば免許皆伝をあげてもいいかなと思うのだけれど、このピントではあげることはできない。もしかすると、一連のカットのなかではもっとシャープなカットがあったのかもしれないけれど、投稿するときにはきちんとピントを確認するようにしよう。

いい写真だけに惜しいよね。

そのあたりは自分に厳しくなって欲しい。

10月の挑戦者その3:プリちゃんさん

残雪がある強風の吹く早朝。
日本の枯れ木が強風と寒さに耐えている様子をとらえました。
クマザサの揺れを入れるためスローシャッターで撮影。

プリちゃん
静岡県在住、男性。風景写真を中心に撮影してます。愛用のカメラはK-1。PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA28-105mmF3.5-5.6ED DC WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

雪どけのシーズンの景色なのだろうか。まだ雪が残っていて霧が立ち上る中、風にササが揺れている。まだ芽吹いていない木がじっとたたずんでいて、ササの風に揺れる音が聞こえてきて、いいところを狙っているね。

この写真の狙いは間違っていない。ただ、木の方に意識が行き過ぎてしまったようにも思う。この画面をよく見てもらうと、手前の木は形もすっきりしていてその下のササの動きを表現するにはこの部分だけで充分。

後ろの大きな木をしっかり入れてしまったために、枝の混み合っている部分や枝の黒と雪の白とでコントラストが高くなる部分に視点が引き寄せられてしまい、イメージが曖昧になってしまった感じがする。

ササの部分と雪の部分で画面が上下に分かれてしまった感じといえば良いだろうか。

今回のテーマを考えるとササが風に吹かれる音が重要なので、このフレーミングを基本とするのであれば、画面下の部分をもっと広くフレーミングしてササをもっと見せるようにすると良かったのだと思う。

せっかくいい具合にササが揺れて「動き=音」を表現できているので、そこをより多く見せることでこのシーンを活かすことができると思うよ。音を意識していなかったとしても、ササの部分を広く画面に入れたかったと感じるフレーミングだね。

ブレを活かした画面の場合は、仕上がりを確認しながらより良い構図を探っていくことも大切なので、何度も撮影して完成度を高めよう。

記念品のお届けについて

プリちゃんさんには「免許中伝ミニ木札」、ススムさん、秋田のナマハゲさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は12月上旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、10月のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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