2月のお題は…『いのちの景色』

小林義明 師範

私のテーマでもある「いのちの景色」、昨年に続いて募集してみたいと思う。いきものの行動だけを捉えた生態写真や決定的瞬間といったものではなく、どんな場所で暮らしているのか景色の雰囲気も一緒に捉えてみて欲しい。いきものの撮影は、ちょっと撮りに行ったからイメージ通りに撮らせてもらえるものではないので、季節は問わずこれまでのストックも合わせて作品を探してみよう。

 

小林義明 師範からの2月のお題はいのちの景色でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

2月の挑戦者その4:かずきさん

近くの海岸に行ったら、波がいつもより高いのに、波打ち際で何かを啄むカモメを見つけて、
逃がさないようにできるだけ近づいて波も入れたかったので、
できるだけしゃがんで、シャッターを押しました。

かずき
三重県在住、男性。PENTAXのカメラで写真を始めて三年目です。趣味で、街を歩いて撮ったり、車のレースを撮ったりしています。PENTAX K-70とHD PENTAX-DA 55-300mmF4-5.8ED WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

海岸で出会ったカモメの食事シーン。何を食べているのか拡大して見てみたのだけれど、はっきりしない。魚だろうか。砂浜に落ちている貝殻をぼかして見せたり波をいいタイミングで捉えたりしていることで、海の雰囲気も伝わってくるね。

画面を構成しているそれぞれの要素はいいと思う。とくに波の形はとてもきれいでばっちりのシャッターチャンスを捉えている。

ただ、やや余分な空間が多く感じられてしまうんだ。たとえば、手前の貝殻がぼけているあたりとカモメまでの間に何もない砂浜があって、離れてしまっている。そのため、視点が画面左下に寄せられてしまう。
また、波の上の空間もちょっと多いかな。
構図的には日の丸構図になってしまった感じもするので、まわりの空間を減らすためにアップ気味で撮影したかった。

カモメを驚かせないようにちょっと離れたところから撮影しているのはいいと思うので、最終的に必要であればちょっとトリミングをしてもいいのではないだろうか。1200万画素あればA3ノビくらいにはプリントできるし、1600万画素であればA2でもプリントできる。私がトリミングをしたものでも1400万画素あるので充分使えるよ。参考につけておくね。

色にはこだわって細かく調整しているようなので、同じように最終的な仕上げとして撮影時にできなかったフレーミングを調節することも考えてみよう。理想はシャッターを押したときに全てを完成させることだけれど、それができないときは撮影時にトリミングも意識して撮っておくことも大切だと思うよ。

2月の挑戦者その5:Taka-d5さん

5月の初め、新緑の頃に霧雨が降り薄くガスがかかった丹沢深部のブナ林で出会った1頭のニホンジカです。

Taka-d5
神奈川県在住、男性。一期一会の景色を求めて地元の丹沢の山々を主に歩き回っています。PENTAX KPとsmc PENTAX-DA 18-135mm F3.5-5.6ED AL [IF] DC WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

丹沢で出会ったシカ、ちょっと緊張しながらこちらの様子をうかがっている雰囲気が上手く伝わってくるね。ガスがかかっていて天気はあまり良くないようだけれど、こういう天候の方がいきものと出会える可能性は高いよね。まずは姿を撮らせてくれたということで第一段階はクリアだね。

左側の太い幹やシカの上で咲いているドウダンツツジの花も森の雰囲気をうまく伝えていると思う。だた、このカットでは、画面左下の白い折れた枝が目立ちすぎる感じがする。できればここが入らないようにしたかったね。

レンズを変えている時間もなかったと思うので、対策としてはふたつ考えられる。ひとつは画面下をカットして、白い幹の面積を減らすこと。シカよりも小さくすることで、いくらか視点をそらしやすくなる。もうひとつは縦位置にして画面左側をなるべく減らすようにフレーミングすることで、森の雰囲気を多く取り込みながら目立つ部分を見せないようにできたのではないかと思うんだ。

理想をいうと、シカの足のあたりでぼけている細い枝は重ならないように、自分が一歩左右に動けたらよかったね。

もう一点気になったのは、周りの景色にピントが合っているところがなかったことだ。やや暗くて開放絞りになってしまったせいなのだけれど、もうすこし周りの景色にもピントが欲しかった。KPならもう少し感度を上げても行けると思うよ。

いきものを撮影する場合、思い通りに撮らせてもらえることはなかなかないというのが難しいところ。より完成度の高いイメージをいつも持ちながら被写体と対話することでいつか撮らせてもらえるので、諦めず挑戦していこう。

2月の挑戦者その6:風丸さん

2月のお題を見て、真っ先に思い浮かんだのは、ふるさと宮城の蕪栗沼でした。
ここは7万羽のマガンが越冬のために訪れる湿地帯です。
早朝、日の出の前後に大地を揺るがすような爆音とともに周囲の餌場である田んぼへ飛び立ちます。
他に大空を埋め尽くすような画像もありましたが、彼らが暮らす湿地帯の様子がわかる一枚を選びました。
震災前の古い写真で恐縮です。現在も当時と同じようにマガンは飛来しているとのことです。

風丸
東京都在住、男性。受注中止直前に購入したKP J limitedを愛用しています。PENTAXのカメラは*istDSからずっとお世話になっています。緊急事態宣言下、思うように撮影に出かけられないのがストレスです。PENTAX K-5とsmc PENTAX-DA 55-300mmF4-5.8EDで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

日の出と共に飛び立つマガンの群れ、なかなかドラマチックに撮影できていると思う。対岸から昇ってきた太陽もしっかり見せながら、マガンの群れの動きやスケール感を上手く見せているね。

画面左上のあたりにマガンの飛ぶ様子が分かるサイズのシルエットを入れているのがうまいところだね。小さなシルエットばかりだと数が多いのは分かるけど、どんな鳥なのか分からなくなってしまうところ。それと同時に奥行きも表現できるようになっている。

構図やシャッターチャンスはいいと思う。

ただ、惜しかったのはピント位置。
シルエットになっている木の細かい枝のあたりに合っていて、マガンの方がちょっと甘い感じ。このシーンでは両方とも大切なので、もっと被写界深度を稼ぎたかった。

300mmの焦点距離で絞りがF8だと遠景の撮影であっても被写界深度はとても浅い。
ISO400まで感度を上げて、F16あたりまで絞り込んでおくことで全体のシャープさを上げることができたと思う。

ちょっと以前の撮影ということで、またこんなすばらしいシーンに出会えるかというと難しいと思うけれど、似たようなシチュエーションでは、どこまでピントを合わせるかということも意識して撮影するようにしよう。

師範より2月後半の総評

今回もたくさんの力作が寄せられて、楽しく悩ませてもらった。

挑戦者の作品を見ていていいなと思うのは、いきものを撮るにあたって、安易な餌付け・やらせをしているような写真がないと感じられること。
自分の足で歩いて被写体を探し、被写体との出会いを楽しんでいる。

いきものが被写体となるとなかなか思い通りには撮らせてもらえないものだが、真摯な気持ちでいのちを見つめ観察しながら撮りたいイメージを明確に持ち続けることで、突然チャンスはやってくる。

そのチャンスを逃さないために、いつでも臨機応変に対応できるよう腕を磨いていこう。

定番の風景と違って二度目はないことがほとんどのいきものの撮影では、ほんとうに一瞬が勝負なのだから。

記念品のお届けについて

風丸さんには「免許中伝ミニ木札」、かずきさん、Taka-d5さんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は3月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、2月のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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