絞りを変えるのは、ボケをコントロールしたり、シャープな印象にするため。

これは一般的に正しい答えです。ケイタのやってみようシリーズ的にはちょっと違います。ここではレンズの個性に合わせて絞りを選ぶ。そんな使い方を試してください。

なぜ、そんなことをするのか?それはPENTAXにLimitedシリーズという、こんな使い方に最適なレンズシリーズがあるからです。

Limitedシリーズについて簡単に解説

このシリーズのレンズを作るときに一番大切にされたのは官能評価という写真をプリントにした時の味わいです。

フルサイズ用のFA Limited シリーズは、開放F値の明るい広角、標準、中望遠の3本。この3本があれば写真の全てを学べるというのはケイタの意見。

APS-C用のDA Limited シリーズは、超広角からMacro、防滴仕様のズームレンズを含めた6本。それぞれに個性があり、遊び心のような特徴があるのがポイントです。

今回はその中から個性のわかりやすい、smc PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limited、smc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited、HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRの3本を使ってレンズの個性とオススメの絞りを紹介します。

smc PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limited(以下 FA31Ltd)

FA Limited史上最高画質との呼び声もあるこのレンズ。その特徴は切れ味にあります。他のFA Limitedと比べると比較的シャープな描写に特徴があります。そんなレンズでオススメの絞りは F5.6 かF6.3 です。

F5.6 と F6.3 の違いは誤差の範囲。その考え方は絞りすぎずにシャープさというこのレンズの個性を活かすことです。

今回トップに入れた写真も FA31Ltd の絞り F5.6 です。

 

上の写真も同じく絞り F5.6。ピント位置は東京タワーで、大きくすれば手前の葉っぱが少しボケているのがわかります。そんな小さなボケは写真に立体感を与えてくれます。

 

もう少しボケを強調したい場合はこの写真のように被写体に近づいてピント位置を手前にします。そうすると背景のボケの印象がわかりやすくなります。この写真も絞り F5.6 です。

 

さらにボケの印象をだしたいときは、ピントを合わせた被写体とボカしたい被写体の距離の差を大きくします。この写真の絞りは F6.3です。ボケというのは極端にいえばピントがあっていない状態です。絞りで変化するのはその柔らかさです。

確かにこの写真でも絞りを開ければ、さらにボケを柔らかくすることはできます。ポートレート撮影ではそのような使い方で人物を浮かびあがらせるというのも効果的ですが、街の場合は背景の雰囲気を活かすために少し絞って距離の差を意識してボケをコントロールするのがオススメです。

smc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited(以下 FA77Ltd)

このレンズをケイタはパーフェクトレンズと呼んでいます。

それは上の写真のように柔らかいボケ味と繊細なピント位置、さらに画面全体に広がる優しさが揃っていて、コンパクトなサイズで見た目も取り回しも良いからです。

確かに中望遠レンズで街を撮る、そんな発想はあまりないかもしれません。しかし、この画角で街を狙うと自分の好みを知ることができます。

このレンズでオススメの絞りは、ズバリ F2.5 です。

Limitedレンズに詳しい方ならなんで?と、思うかもしれません。それは、この絞りにするとF1.8という開放F値で使った時の絶妙に周辺が少し落ちる味わいをなくすからです。

実はそこが狙いでもあります。確かに開放絞りで使ったときの特徴は Limited 神話の大きなポイントとして語り続けられています。その良さを否定するつもりはありませんが、その個性はちょっと強すぎると感じることがあります。

 

上の猫の写真のように被写体の距離が離れれば、絞りF2.5でもボケの印象は弱くなります。これは先のFA31Ltdでも解説したように、被写体までの距離や絞りと被写体間の距離の差が関係します。

そのようなシーンではあまり周辺が落ちすぎないほうが前ボケの柔らかさが引き立ちます。もう少し細かくいうと画面周辺のコントロールは作品を仕上げるポイントです。あとでコントロールしやすいようにレンズの個性を少し弱めておく。そんな考えもあって少し絞った F2.5 にしています。

 

上の写真も FA77Ltd で絞り F2.5 です。中望遠レンズでも遠景を狙えば絞りを多少開けていてもシャープな印象が強くなります。こんなシーンでもレンズの特徴的な個性は少し抑えておくと他の写真と組み合わせやすくなります。

HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR(以下DA20-40Ltd)

最後に紹介するのは Limited 史上唯一の防滴構造を持ったズームレンズでファンも多いレンズです。そして、“このレンズはズームレンズではない”そんな噂を聞いたことがあるかもしれません。

その噂にこそこのレンズの絞りを決めるポイントがあります。ズームレンズと言っても20mmから40mmの2倍でそれほどの恩恵はありません。それよりもこのレンズの個性は絞り開放での柔らかさです。

望遠側でその柔らかさを活かすことを考えながら、広角や標準域で機動力を使いやすくするための絞りが F4 です。

そして、もう1つ、このレンズは30mmの単焦点レンズだと思って使ってください。

DAの30mmは35mm換算45.75mm相当の画角で、いわいる標準レンズの画角です。単焦点の標準レンズを使っているときに必ず感じるのが、あと少し引きたいや寄りたいという思いです。

このレンズのズームはその思いを叶えてくれるためのものなので、普通のズームレンズとは少し違います。

このレンズの30mmと20mmでの絞り F4 は少し絞られた状態になるので、優しさよりスッキリした切れ味が優先されます。40mm側では絞りが開放になるので、焦点距離も少し伸びた状態で優しさを使いやすくなります。

 

最初の写真のように雨の中の撮影で多少濡れても安心なのがこのレンズの良さでもあります。さらに30mmだと思って使うと自分の動きで変化をつけやすくなるので、とても使いやすくなります。

上の写真でもショーウィンドウに近づいて遠くの風景が映り込むようにしています。遠くの風景が映り込むとボケた印象も強くなってちょっと不思議な雰囲気を作りやすくなります。

 

上の写真のように高さを変えるのも変化をつける大きいなポイントです。雨が降っていたので、地面のしっとりした雰囲気と水の反射のコントラスが程よいアクセントになっています。

DA20-40Ltdの3枚は全て 30mm F4 です。街の撮影の基本は自分が動くことです。動けるようになってからズームの恩恵を使えばレンズの魅力をさらに引き出すことができます。

今回の絞りを固定しようや前回の露出補正を固定しようは、実は撮影時に考えることを減らすことが目的です。写真で一番大切なのはバランスです。撮影ポジションに始まり構図、露出、タイミングその全てのバランスを取ることが大切です。そのためにも考えるポイントを減らして瞬時にバランスを決める練習をしてください。

レンズがらみの話になるとついつい力が入って長くなってしまいました(笑)

 

次回は、デジタルフィルターを使ってみよう!です。

 

『ケイタのやってみようシリーズ』のその他の記事はこちら

第3回 露出補正を固定してみよう!

第2回 モノトーンの設定で撮ってみよう!

第1回 プロフェッショナルモードで撮ってみよう!