カメラを持って出掛けると、なんでもない日常が、光の輪郭をもって浮かび上がる。

さぁ、今日もカメラを持って出掛けよう。

第6回「雨の日は、」

雨の日、好きですか?

私は好きです。私が雨の日を好きな理由は、厚い雲のディフューザーによって作られる柔らかな光が好きだからです。ピーカンの晴天では、得られない光。光が柔らかいと言うことは、影も柔らかくなります。(←ここ重要です)

この柔らかな光と影が、人でも物でも強い主張ではなく、優しく語りかけてくるんです。するとこちらの気持ちも優しくなります。

 

 

もうひとつ雨が好きな理由は、空気が綺麗なことです。雨の日って、なんだか空気が綺麗な気がしません?

実際、雨は空気中のゴミや汚染物質を雨粒と一緒に地上に落下させてくれるんだそうです。撮影の前に、スーっと息を大きく吸うと、美味しい空気に、嬉しくなります。空気が綺麗だと色も綺麗です。植物の緑が、自然の中でも街中でも、晴れの日のパッキリとした発色ではなく、優しくしっとりとした美しさなんですよ。

 

 

私の父は、瓦職人でした。昔気質の職人ですから土日も休まず仕事です。休みと言えば雨の日。屋根の上での作業ですから、雨の日は作業ができないからです。

なので、子供の頃どこかに連れて行ってもらうのは、いつも雨の日ばかりでした。記憶にあるのは、車の窓から入ってくる優しい光と、フロントガラスの雨粒です。この記憶が、今の私の写真を作っているんだろうなぁと思います。

 

 

雨の日だから、今日は写真散歩に行けないなぁと思わずに、積極的に出掛けみててください。雨の日にしか出会えない景色が必ずあります。

例えば、いつも気にも留めないアスファルト。雨に濡れれば、キラキラと美しい幕を張ります。大きな窓のカフェ。あなたの前に座る大切な人にあたる優しく柔らかの光がいつもと違う一面を見せてくれます。雨の日マジック。嫌だなぁと思う雨の日も、ちょっとだけ気持ちを変えれば、待ち遠しくなるくらいに好きになりますよ。どんな日だって、自分の気持ち次第。せっかくなら楽しんだ者勝ちです。

 

林 和美さんの『カメラは感動増幅機』のその他の記事はこちら

第1回「さて何を撮ろう?」

第2回 「今日の獲物」

第3回「残したいもの」

第4回「切取りの美学」

第5回「旅写真のコツ?」