2月のお題は…『銀残し』
カスタムイメージのパラメーターと銀残し特有の色味を駆使し、美しい光による空間を切り取ってください。銀残しの色味は調色をベースに入れることによって大きく作品のイメージを変えることができます。赤系統がマゼンタ寄りになる、彩度が全体的に抑え気味等の傾向がありますが、そういった特徴をしっかりと把握して世界観を構築してください。
瀬尾拓慶 師範からの2月のお題は『銀残し』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。
2月の挑戦者その1:ひろみちゃんさん
山寺の池に落ちた紅葉に、最後の輝きを感じました。
その色合いとハスの葉の緑を印象的に表現しようと考え「銀残し」を選択。
CPLフィルターで水面の反射をコントロールしています。
長野県在住、男性。風景写真をはじめて5年あまり。日常の中の輝きを切り取りたいと思っています。PENTAX K-3とsmc PENTAX-DA★50-135mmF2.8ED[IF] SDMで撮影。
師範の判定結果は・・・
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残念ながら・・・
紅葉の最後の輝きと蓮の葉の緑を印象的にという発想は良いと思います。
色や光の浮かび上がり方もとても美しいです。
ではなぜ門前払いという判定になったか。
それは、せっかくの美しい光が構図全体に分散しまっている為、作品の意図は伝わりますが、どこをどのように見せたいのかが不明瞭となってしまっているからです。また、構図の右下真ん中寄りに写っている葉っぱが暗い中にぽつんと中途半端に入ってしまっている為に、そこに目線がいってしまいます。
ですので、例えばこのように光の流れを意識した縦構図等で空間を構成すると更に作品を意図したものとして完成させることができます。
落ち葉が散乱している様子をどうしても横で撮りたい場合は、中途半端な写り込みを避けるだけでも美しい写真になります。設定に集中してしまうと構図の細かいところまで意識が行きにくいので、設定を整えた後、構図の中で一度自分が見せたい要素がしっかりと表現できているかを確認すると良いと思います。
50-135mmを使用しているのであれば、少し離れて斜め上からパンするイメージで撮影するのも良いでしょう。そうすることにより、平面的な世界に奥行きが生まれ、表現の幅が広がります。その場合は手前から奥まで全ての葉にピントを合わせる必要もありません。手前の方にピントを入れて奥をぼかすことにより、さらに見せたい光を明確化させることができます。
カスタムイメージの設定としては、美しい色味が表現できていると思います。欲を言うとすれば、ホワイトバランスでマゼンタとアンバーをほんの少し入れる等、赤みを少しだけ加えると色味が深くなり活きてくると思います。
また、美しい作品をお待ちしています。
2月の挑戦者その2:ekarumawasさん
遠出もままならず、ずっと雨続きだった梅雨の時期、
せっかくの防塵防滴なのだからと近所の高原に出掛けて撮った写真です。
長野県在住、男性。長野県で主に風景を撮ってます。PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA★ 50mmF1.4 SDM AWで撮影。
師範の判定結果は・・・
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残念ながら・・・
霧に包まれた幻想的な森、色味も美しいです。
ですが、門前払いと判断いたしました。
理由としては、まず構図です。意図したものかもしれないですが、構図が真ん中で上下に分かれてしまっているのは気になります。
ekarumawasさんの見せたい部分、強調したい要素はどこなのでしょうか。雨に濡れて淡く光を反射する道を見せたいのであれば、もっと地面の面積を大きくしてしまい、地面にピントを持ってくるのも良いでしょう。それこそ、奥の森の抜けの少し上くらいまで写っていれば幻想的な森が奥にあるということは分かります。
また、森に満ちる霧を主題としたいのであれば、しゃがみこんで地面が少し写る程度に抑え、空が写り込まないレベルの角度で煽って撮るのもアリだと思います。強い意図がない限りに於いては、真ん中で分けてしまうのは避けた方がよろしいでしょう。あまり現状から崩したくないようであれば、少しだけ地面の比率を落とすだけでも構図が整います。
また、この場面の様子ですと横構図も美しいと思います。現在写っている範囲を右に持ってくる(林道が右に配置される)構図にしてみると、幻想的な光の森の中に道がある様子が表現されると思います。31mmあたりの少し広角のレンズですと尚良いです。50mmは撮影しやすい画角ではありますが、森の中等では少々切りとれる範囲が狭くなってしまう場合があります。
色味、光の表現がとても美しいです。銀残しの独特な落ち着きと渋さが出ていると思います。更にここから調色ベースに、色温度を数字で設定してみてください。もっと自分の出したい色へと進むことができるはずです。特に左の木が潰れずに、幹のディティールがしっかりと表現されているのが素晴らしいです。
カスタムイメージの設定は最終的には構図により活かされます。
次の作品を是非おまちしております。
2月の挑戦者その3:yuu-changさん
銀残し、私も好きな表現です。
私が銀残しを使う時には、主に露出補正で表現を調整します。
この作品の場合は一段プラス補正ですが、マイナス補正でもしっとりと決まる時はあります。
岡山県在住、男性。ペンタックスK-S1で一眼レフに入門してからのペンタックスファン、今はペンタックスKPで街角スナップをするのが趣味です。PENTAX KPとHD PENTAX-DA21mmF3.2AL Limitedで撮影。
師範の判定結果は・・・
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残念ながら・・・
彼岸花は色も造形的にもとても美しい花ですね。ですがそれに伴い、とても表現が難しい花の一つです。
色味のはっきりとした、よく見かける彼岸花の写真とは逆のしっとりとした雰囲気がとても良いと思います。
ではなぜ門前払いとなってしまったのか。
それは銀残しというカスタムイメージをまだ使いこなせていないからです。カスタムイメージは選択するだけでも独特な色味を与えてくれます。それだけでも自分の作品が変わり、表現の幅が広がります。ですが、カスタムイメージの価値はその先にあります。
特に銀残しはその特殊性が強く、マゼンタが強調されるという長所にも短所にもなる特徴があります。この特徴を生かすことにより、しっとりとした世界にさらなる深みを与えることができます。そのためにはパラメーターをしっかりと調整してください。特に今回の場合は調色を入れると良いでしょう。ブルーもしくはパープルあたりをベースに入れて、色温度を少し低めに設定してみてください。そしてAMGBを微調整してみてください。そうすることにより、深みが出てきます。
また、この作品は中心の光を浮かび上がらせると更によくなります。
露出を少し上げ、キー(中間光量)のパラメーターを少し下げ、コントラストを上げてからシャドーをプラス(明るめ)に振ると良いと思います。更にハイライトも上げると、光の線が出やすいです。そうすることにより、このしっとりとしたイメージを残しつつ、光をはっきりとさせることができるはずです。
コントラストのシャドーとハイライトの調整パラメーターは、KPの場合はシャッター奥の右手人差し指にかかるダイヤルを回すと出てきます。こういった線の細い被写体にはファインシャープネスがオススメです。
構図としては右上の空いてしまっている空間が気になります。全体的に下に重心がかかっている構図になっているので、日の丸構図になっている中心の彼岸花がもう少し上に来る構図にするだけで印象が変わります。そうすると、それに伴い右上の空間が閉じられて構図が安定します。
しっとりとした空気感を選択された事は表現の方向性として素晴らしいと思います。
KPは様々な、自分がしたい表現に答えてくれるカメラですので、この先にあるカスタムイメージの詳細設定を用いた段階へと進んでみてください。
次の作品をお待ちしております。
記念品のお届けについて
ひろみちゃんさん、ekarumawasさん、yuu-changさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!
記念品は3月上旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。
以降のお題へのご投稿もお待ちしています!