2月のお題は…『銀残し』

瀬尾拓慶 師範

カスタムイメージのパラメーターと銀残し特有の色味を駆使し、美しい光による空間を切り取ってください。銀残しの色味は調色をベースに入れることによって大きく作品のイメージを変えることができます。赤系統がマゼンタ寄りになる、彩度が全体的に抑え気味等の傾向がありますが、そういった特徴をしっかりと把握して世界観を構築してください。






瀬尾拓慶 師範からの2月のお題は『銀残しでした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

2月の挑戦者その4:リュウさん

昼下がり、近所の公園をカメラ持って散歩中にお見かけした、ご年配の男性とお孫さんだろうか?
楽しそうにボールを蹴っていた。
冬の日差しに木々に囲まれた広場での微笑ましい日常。

リュウ
千葉県在住、男性。カメラを始めて4年目になります。試行錯誤の毎日ですが、楽しく撮影できるよう心がけてます。PENTAX K-1 Mark IIとHD PENTAX-D FA★50mmF1.4 SDM AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

瀬尾拓慶 師範からの添削コメント

 

寒空の下でお孫さんと遊ぶ姿がなんとも印象的な光景ですね。
美しい光が入っているので全体の雰囲気も良いです。

では何故今回の結果なのか、解説をしていきます。
まず一番大きなポイントは構図です。

内容としてはとても素敵ですが、この構図がとても勿体無いですね。具体的には右下の人物たちが構図の下に寄りすぎているところです。このシチュエーションで大切な要素は、まず空間全体の光です。そして、人物の動きと影です。上の空間を、左の影が出ている木の根元上くらいまで切ってしまい、その分下の空間をもっと空けましょう。そうすることにより、人物の影がしっかりと入ります。
また、人物の影の下にも少し空間が空くと美しくなります。そして上に配置されている大きな木の枝や空間がなくなることにより、左の木の影が強調されます。もし手前の木が邪魔でその構図が取れないのであれば、立ち位置の変更をしても良いでしょう。移動するのであれば右側です。人物の左の空間が大きいので、右に移動することによりもっと奥の木の影と人物を近づけることが出来ます。その際に縦の構図を取っても良いですね。

設定の面は、この淡い印象がとても美しいです。コントラストのパラメーターをもう少し調整してみると、更に陰影が増して、作品を引き締めることが出来ます。その際に、コントラストのシャドーをプラスに振ることで、メリハリがつきつつも潰さないように調整が可能です。

光の捉え方はとても美しいです。
こちらの作品は、上記のように構図を修正するだけで全く違う作品になります。どうしても撮影時は人の動きや設定等に意識をとられがちになってしまいますが、最終的に全てを決めるのは構図です。

ぜひ、この部分を鍛えてください。

更なる素敵な作品をお待ち致しております。

2月の挑戦者その5:capriさん

シャッターが目立つ商店街。
それでも、地元の人にとっては大事な生活道路。

capri
埼玉県在住、男性。スナップ、風景写真を中心に写真を撮っています。愛機はK-1 Mark II、KP、GR III。PENTAX KPとHD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRで撮影。

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

瀬尾拓慶 師範からの添削コメント

 

非常に美しい光を捉えることが出来ています。
色味の構成も素晴らしいですね、WBで太陽光を選択したことが功を奏しています。シャドー部分が潰れずに残っている点も高評価に値するポイントです。

では何故免許皆伝ではないのかを説明致します。
これはもう、ほぼ構図です。
この作品は見た瞬間美しいと分かる素晴らしい光の表現がなされています。ですが、その一歩先に進むことが出来ていません。

左右対象の構図で印象的に見せようとされているのだと思いますが、写真展等の中に紛れてしまうと綺麗な写真だという認識で終わってしまうのです。群を抜いて印象的な一枚というのは、記憶にふと残る作品です。ですからこの中に更に動きと臨場感を出していく必要性があります。

重要なポイントは立ち位置です。
もっと一、二歩ほど前の右によって正面から45度ほど体を左にひねることにより、センターの光が右に寄るため、左にある光を受けているお店のひさしがもっと広く写ります。右側のシャッターは緑の柱手前くらいまで入れると構図が安定しそうです。そうすることにより、より印象的にシャッターがしまっているお店たちを強調することが出来ます。

この作品はもちろん美しい光と中央の人物が主役ではありますが、もう一つの主役はこのシャッター群だと思います。ですので、空間の印象や美しさに囚われないように気をつけてください。美しい光はそれだけでも作品となり得ますが、その分作品を単純化させてしまうという落とし穴があります。

上記は右寄りでしたが、今度は左寄りにした場合の説明です。
この瞬間左に寄って45度右に体をひねり撮影すると、今度は自転車に乗っている人物のシルエットがしっかりと光の中心にきます。そうすることにより、この人物の印象を底上げすることが出来、更にシャッターが閉まっている商店街の様子を強調することが出来ます。このように変化を与えることにより、メリハリが均一になってしまっている現状を打破し、動きとストーリー性を演出することが出来ます。

一瞬の判断にはなりますが、そこにもう一つ先の要素を加えてみてください。
あとは微妙に水平が取れていない点が気になります。

少ししゃがみこんで下から煽り気味で構図を取り、人物をもう少し下に配置すると、この光の空間を広く美しく見せることも出来ます。様々な選択肢がありますので、撮影現場で焦らずに色々と試して見てください。

今は太陽光を選択されていますが、今度は色温度指定モードで数字から調整をしてみてください。
調色と色温度の掛け合わせ等ストイックな調整と判断で追い込むことにより、更に深いご自身の一歩先の表現に進むことができるはずです。

その、一歩先の作品をお待ち致しております。

2月の挑戦者その6:プリちゃんさん

深い霧の中のマメザクラの撮影です。
倒木から咲いているマメザクラを優しい光が入るのを待って撮影しました。

プリちゃん
静岡県在住、男性。愛用のカメラはK-1です。PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

瀬尾拓慶 師範からの添削コメント

 

淡い霧に浮かび上がる桜、素晴らしい被写体です。
この場所の発見とシチュエーション、被写体の選択はネイチャーを撮影する上では腕の見せ所ですね。色味、光共にとても美しい空気感をまとっていると思います。

ではなぜ免許皆伝へと至らなかったのかをお伝え致します。
この作品の雰囲気はとても素敵ですが、その雰囲気を表現することへと意識が注がれているため構図がおろそかになってしまっています。

ポイントは四つあります。

1.説明文の中で倒木から咲いているという一文がありますが、この作品の主体となる要素の倒木を活かしきれていません。
もしこの倒木から生えている様子を説明したいのであれば、倒木の切れ方が中途半端です。この写真の様子を見ると、あと少しでも下が写っていたのであれば印象が全く変わったと思います。特に右下の詰まり方が気になります、木の下ギリギリで切れてしまっているのがもったいないですね。ですので、下に空間をもたせた方が良いでしょう。何かを目立たせるためには、一歩引いて構図を取ることも効果的です。そうすることにより、見せたい状況の説明もすることができます。

2.二つ目は、右上の木の写り込みです。
作品の内容が良くても、それを壊してしまうのは四隅です。この木が写り込んでしまっていることによって作品としてのレベルを下げてしまっています。ファインダーをのぞいた際に、一度しっかり四隅を確認してみましょう。

3.三つ目は、桜の入れ方です。
どうしてもメインとなる被写体を大きく入れたくなってしまうものです。ですがこの状況をもっと美しく見せるためには、少し引いての撮影の方が、この霧の中の桜を際立たせるには良いかもしれません。そうすることにより説明的な部分が削がれ、倒木の間から生えている、霧の中で佇む桜を自然に且つ印象的に演出することができます。具体的には、もっと引いて少し右下に桜の木を寄せてこの森の空間を切り取ります。メイン後ろの桜も活きてくるので、さらに作品の奥深さが出てきます。

4.そして最後に、縦構図で撮影しても美しいシチュエーションです。
このようなイメージで縦で構図を取り、もう少し引いて下の倒木の空間をもっと取り、上の空間も空けるとまたさらに違った印象を描き出すことが出来ます。確かにこの場所にいたら横構図を取りたくなると思いますが、印象的な被写体をさらに際立たせるには縦で強調する手法も効果的ですので、選択肢として増やしてみてください。

ポイントは以上です。

前述のように空気感や光、色味はとても素晴らしいです。
ここから更に光を出すためには、露出をほんの少し上げてキーを少しだけ下げてコントラストを上げてからハイライトをプラスに振ると桜が目立ってくると思います。
調色にグリーンを入れてから色温度指定モードでさらに補正(AMBGの補正をブルー寄りにして雰囲気を更に深めるのも効果的です。

またの美しい作品でのご応募をお待ち致しております。

記念品のお届けについて

capriさんには「免許中伝ミニ木札」、リュウさん、プリちゃんさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は3月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、2月のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

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以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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