ども、”こっしぃ”です。

第5回では、DCU5での画像処理手順の2回目として、Laboratoryモードにおける編集候補画像リストを構築し、パラメーター調整に取りかかりました。今回はパラメーター調整の続きとして、階調の調整の仕方と、画像補正やノイズ除去に関する機能について見ていきます。
>>第1回から読む
>>前回から読む

第6回 DCU5のワークフロー(3) 階調の調整といろいろな画像補正

パラメーターの調整(3):露出/トーン

本パネルでは、写真の濃度や階調に関する調整を行います。

増減感

図1 増減感/覆い焼き

写真全体の濃度を明るく(増感)したり暗く(減感)したりすることが出来ます(図1上)。調整可能な範囲は露出段数(EV)で±3段に相当し、1/6EVステップで調整することが出来ます。これは、カメラの露出ステップより細かい調整を可能にするためと、一般的に使われている露出ステップである、1/3EVステップの値と1/2EVステップの値を同時に設定可能にするためです。撮影時に希望の露出が得られている場合は、必ずしも調整が必要ではありませんが、画像全体の濃度を撮影時の状態から変えたいときは、画像プレビューとヒストグラムで、白飛びや黒つぶれの状態を見ながらスライダーを調整して下さい。元々白飛びしていた画像を減感したり、黒つぶれした画像を増感したりした場合、潰れていた部分が色転びしたり一様なグレーになったりすることがありますので注意して下さい。

覆い焼き

画像の濃度の薄い(明るい)部分を濃く(暗く)し、濃い部分を薄くするという調整を、スライダー一本を操作することで適応的に行います(図1下)。画像の一部が局所的に暗すぎたり明るすぎたりしている場合に有効です。第1回で実際に覆い焼きを掛けた例を紹介していますので参考にして下さい。

シャドー補正

図2 シャドー補正

カメラの設定と連動した機能で、シャドー部の明るさを補正します。シャドー補正が搭載されているカメラのRAW画像の場合、デフォルトでは「撮影時の設定」が選択された状態になり、カメラで撮影時に設定したシャドー補正の効果が適用されます(シャドー補正非搭載のカメラの画像の場合は、「撮影時の設定」はシャドー補正のドロップダウンリストに表示されません)。DCU5では、「オフ」「弱」「中」「強」から選択することが出来、「強」で一番シャドー部が明るく調整されます。

トーンカーブ

図3 トーンカーブ

トーンカーブは、処理前の画素の明るさと処理後の画素の明るさとの関係を曲線で表したものです。グリッド内を左クリックすることで、曲線を操作するハンドルを追加出来ます。またハンドルは右クリックすることで除去することも出来ます。追加したハンドルを操作することで、かなり細かく画像の階調を調整出来、またデフォルトのRGB共通のほか、R、G、Bそれぞれ独立に調整することも出来ますが、思い通りに調整するにはかなり慣れが必要です。もし弄りすぎて思うような調整が出来なくなってしまった場合は、初期化ボタンを押してトーンカーブをリセットしてからやり直してください(4本全てのトーンカーブが全てリセットされることに注意して下さい)。

図4 RGB個別トーンカーブ調整例(左: 調整前、右: 調整後)

R、G、Bのトーンカーブを別々に調整した例を示します。図4のトーンカーブ調整前写真は歩道の花壇を撮影したものですが、シャドー部に引っ張られて明るめに撮影されていたために花の色が薄めだったので、0.5EVほど減感して覆い焼きでシャドー部を少し持ち上げたところです。しかし、比較的赤っぽい葉の緑をもう少し濃いめに表現したいな、と思ったとします。ホワイトバランスで調整することも出来ますが、画面全体に影響が出て、花の色も青っぽくなってしまいます。そこで、Rのトーンカーブを図5のように調整してみました。中間調を下げ、ハイライト部を持ち上げることで、葉の緑を強調し、花の赤みをなるべく損なわないようにしています。Gのトーンカーブは弄っていません(図6)。Bはおまじないでハイライトを上げてみました(図7)が、画像内に明るいBの成分がほとんど無いためあまり意味をなさない様です。ちなみに奥の方の紫色の花はRとBのシャドー部を上げると出てきますが、歩道のシャドー部の色味に影響して不自然になるので今回は上げていません。

図5 図4のRトーンカーブ調整状態

図6 図4におけるBトーンカーブの状態

図7 図4のBトーンカーブ調整状態

図8 レベル補正の調整例

レベル補正
撮影時に適切な露出が得られていてトーンカーブを大きく調整する必要が無く、かつ階調の一部を反転するなどの特殊な効果も必要無い場合は、レベル補正で画像の白レベルと黒レベルを調整する(図8)だけで、階調のつながりを大きく変えずに画像にメリハリを与えることが可能です。

図9 図8のレベル補正を行う前(左)と後(右)の画像

なお、PENTAX FILM DUPLICATORを使用してネガフィルムを複写した画像など、明暗が反転した画像を処理する場合は、通常右上がりのトーンカーブを右下がりにする必要がありますが、そのようなときは、反転初期化ボタン(Ver.5.4.2から搭載)を押すと、トーンカーブを簡単にネガポジ反転した状態にするすることが出来ます(ネガ画像の詳しい調整方法については第3回を参照して下さい)。

パラメーターの調整(4):レンズ収差補正

図10 レンズ収差補正パネル

レンズ収差補正パネル(図10)では、カメラのレンズの収差による画質低下を改善したり、補正のための画像処理を生かして独特な効果を与えたりすることが出来ます。本パネルの補正機能のうち、周辺光量補正・ディストーション補正・倍率色収差補正には、手動補正と自動補正とがあります。手動補正は理論的なアルゴリズムを用いた画像処理による補正で、全ての画像に適用可能です。一方、自動補正はレンズ固有の特性情報を利用した画像処理による補正で、対応レンズと対応カメラを組み合わせて撮影したRAW画像にのみ適用可能です。また自動補正はカメラの設定と連動しており、デフォルト(DCU5の自動補正が「撮影時の設定」になっているとき)ではカメラでのオン/オフ設定が反映されます。

周辺光量補正

周辺光量補正は、画像の四隅が暗くなる周辺減光という現象を補正する機能です。周辺減光は斜めに入射した光が口径食(光束がレンズの径などに制約され断面が楕円形になる)・コサイン4乗則(光軸に対する入射角をθとすると、照度がcosθの4乗に比例して小さくなる)・撮像素子の画素シェーディング(受光部が深いところにあるために全部の光が当たらない、いわば画素ごとの口径食のようなもの)などによって、中心部に比べて光量が落ちることによって生じるもので、厳密にはレンズの収差ではありませんが、レンズに原因の一つがあるため、レンズ収差補正パネルにまとめてあります。
PENTAX K-3のFWバージョン1.10以降でレンズ情報が利用出来る場合は、DCU5 Ver.5.1.0で追加された自動補正のドロップダウンリストが有効になります。機能としては当該画像を撮影したカメラの機能と共通で、撮影時の設定の他、オフ/弱/中/強/オートが選択出来ます(DCU5 Ver.5.3.0以降)。オートを選択すると、レンズの特性に応じた標準的な周辺光量補正が掛けられます。図11に、自動補正のオフと強の比較画像を示します。

図11 周辺光量補正の自動補正オフ(左)と自動補正強(右)の比較

手動補正は、35mm換算焦点距離と補正率の二つのスライダーで設定します。設定した焦点距離によって理論的な補正を行いますが、実際には設定する焦点距離が短い(スライダーを左に動かす)ほど周辺部に行くほど強く補正が掛かるようになり、補正率をプラスにする(スライダーを右に動かす)ほど明るくなり、マイナスにするほど暗くなる、という動作を踏まえて、プレビューを見ながらお好みの調整を行って下さい。

ディストーション補正
レンズの歪曲収差を補正します。歪曲収差は直線が直線に写らず、方眼紙を正面から撮影した場合に、対角線方向に伸びて辺がへこんだり(糸巻き型)、反対に対角線方向に縮んで辺が膨らんだり(樽型)、それらが中心部と周辺部で変わることで線が波打ったり(陣笠型)する収差ですが、特に陣笠型歪曲収差の補正は手動では調整に手間が掛かります。レンズ情報が使える画像ファイルでは、自動補正が使えますので、調整が難しい陣笠型のレンズでも、ドロップダウンリストで「オン」を選択するだけで、適切な補正が掛けられます。
手動補正では、補正バランスで画像の中心部と周辺部の補正度合いを変え、補正率で強度を調整することで、陣笠型を含む歪曲収差を調整することが出来ますので、レンズ情報が使用出来ない画像を処理する場合は、プレビュー画像で効果を確認しながら調整してみて下さい。

倍率色収差補正

光の波長により像倍率が異なるために、画像の周辺部に行くほど被写体の縁に色が付く現象を倍率色収差といいます。自動補正では、レンズの特性情報を利用して倍率色収差による色づきを補正します。
手動補正の場合は、画像上の黒い線の周囲についた色が目立たなくなるように、緑(G)の像の大きさに対する赤(R)の像の大きさと青(B)の像の大きさの変化量をスライダーで調整します。

回折補正

図12 回折補正設定

被写体の近いところから遠いところまでピントを合わせて、画面全体に解像感を得たいときなど、レンズの絞りを絞って撮影することがありますが、反対に絞れば絞るほど、回折(光が障害物を回り込む現象)により像がにじみ、解像感が低下することが知られています。対応カメラ/レンズの画像で回折補正(図12)を設定すると、回折により被写体の細部に発生する像のにじみを改善し解像感をアップすることが出来ます(図13)。

図13 回折補正オフ(左)と回折補正オンの比較

フリンジ補正

図14 フリンジ補正設定

被写体の一部に強い光源などのハイライト部があるとき、軸上色収差などの原因により、その周囲にパープルフリンジといわれる紫色の縁取りが付くことがあります。この紫色の縁取りを除去する機能をフリンジ補正と言いますが、PENTAX K-3(FW Ver.1.1)以降の機種では、カメラ内RAW展開時にレンズ情報を利用したフリンジ補正を掛けることが出来ます。DCU5ではVer.5.4.2からこれに対応しています。フリンジ補正は処理に時間が掛かることもあって、撮影時に適用する(すなわち保存形式をJPEGにして撮影する)ことが出来ませんので、特にパープルフリンジの出やすいレンズにおいては、RAW撮影しておいて帰宅後DCU5でまとめてフリンジ補正を掛けるという使い方もおすすめです。フリンジ補正は、カメラで撮影時に設定することが出来ないため、デフォルトではオフになっており、ドロップダウンリスト(図14)でオート/弱/中/強のどれかを選ぶことで適用されます。

図15 フリンジ補正(強)適用例(赤枠内を図16で拡大表示)

図16 フリンジ補正オフとフリンジ補正強の比較(図15の赤枠内)

パラメーターの調整(5):ノイズリダクション

図17 ノイズリダクションパネル

ノイズリダクションパネル(図17)では、画像データを解析して後処理を掛けることにより、デジタル画像における各種のノイズを除去します。基本的に本パネルの機能は場合によって画質の低下を伴う処理になりますので、それぞれの機能による画質改善効果と、画像処理の副作用による画質低下とを確認しながら、バランスを取った調整を行うことが必要になります。それぞれの機能にはチェックボックスが付いており、チェックを入れて有効化したあと、スライダーを操作(または連動するスピンエディットに数値を入力)することで調整を行います。

ランダムノイズ除去

暗部や一様な部分にざらざらした様に見える輝度ノイズを低減します。PENTAX一眼レフカメラでは、高感度での撮影においても比較的ノイズを残して解像感を優先する絵作りになっていますが、どうしても気になるノイズについては、ランダムノイズ除去のスライダーを右に動かすと目立たなくすることが出来ます。しかしスライダーをあげすぎると画像が全体的に平坦になってしまいますので、注意が必要です。

ノイズ整列

輝度ノイズが縞状に発生していたりむらがあったりする場合、これを一様にして目立たなくします。これも掛け過ぎると被写体のエッジが目立たなくなったりします。

偽色信号抑制

色ノイズを低減する機能で、RAW画像からカラー画像を生成するときの信号処理に起因して被写体の細かい線などに生じる色づきや、高感度撮影時にランダムに発生する色ノイズなどを抑制します。ちなみに「偽色信号」は「にせいろしんごう」といって偽の色信号という意味であり、元々はアナログのカラーテレビ放送技術に関する用語でした。それが、ベイヤー配列などの単板カラーイメージセンサーから得られた各画素についてR、G、Bのどれか一色しか無い画像データから、全画素についてRGBの3色がそろった画像データを生成するためのいわゆる画素補間処理によって生じる偽の色が付いた画素データが、アナログ信号処理で生じる偽の色信号との類推で偽色信号と呼ばれるようになりましたが、後にデジタルカメラが一般市場に出回ってきた頃、言葉の切り方が誤解された結果「信号」が切り離され、「偽色」(ぎしょく)と呼ばれることが多くなったようです。DCU5では原義を尊重し、”偽”なのはあくまでも”色信号”であって、被写体(=写った像)の色ではないという意味も含めて、本機能の名称を「偽色信号抑制」としています。

フリンジ除去

画像のハイライト部の周囲に発生する色づきを低減します。レンズ収差補正パネルの「フリンジ補正」はレンズの情報を利用していますが、本機能は画像データの情報のみからフリンジ部分を判別して処理するということから、ノイズリダクションパネルに搭載しています。スライダーを右に操作すると補正が強く掛かります。

今回は、DCU5におけるワークフローの一環として、露出/トーンパネル、レンズ収差補正パネル、ノイズリダクションパネルの機能についてご説明いたしました。次回はワークフローから一旦離れて、PENTAX K-3 Mark III対応版としてリリース予定のVer.5.9の新機能についてご紹介します。

 

「誰にも聞けないDigital Camera Utility 5」の記事一覧はこちら