カメラを持って出掛けると、なんでもない日常が、光の輪郭をもって浮かび上がる。

さぁ、今日もカメラを持って出掛けよう。

 

第13回「写真家になりたくて」

 

私は東京・南青山で写真専門のギャラリー・NADAR(ナダール)を主宰しています。そこでは、年に数回著名な写真家さんや注目の写真家さんに企画展をお願いします。今までお会いした写真家さんには、色んなタイプの方がいらっしゃいました。でも、世に写真家として認められる方は、それはもう写真がなくては生きていられないという感じが伝わってくる人達ばかりでした。語弊を恐れずに言うなら、写真があるからギリギリ社会と繋がっていられる、そんな感じですらあります。

 

 

私には何かが足りない。そんな写真家達を目の前にすると痛感させられます。自分の内から出てくる想い、葛藤。まわりを圧倒させる程のパワーが足りない…。写真学生の時は教授に、大人になってからは審査員の方に、いつも「あなたの作品は弱い」と言われ続けました。弱いって何だ?強ければいいのか?ずっとずっと悩んでいました。

 

 

でも、テーマが曖昧とか作品が弱いと言われても、被写体を美しく切取る自信だけはありました。カメラを持っていなくても、目の前の被写体をどうやって切取れば一番美しいかをいつも考えていました。友達と話していても「何を見てるの?」とか「何を考えているの?」とよく聞かれました。そんな時は、ろくに話も聞かず、どうやったら美しく切取れるのかを見て考えていたのです。

 

 

美しく切取りとって作品にする。それが自分にとってどういう意味があるのか?どうしてその被写体に惹かれたのか?自分の芯とどう繋がっているのか?そもそも自分の芯とは何なのか?写真で、そうした沢山の疑問への答えを考え続ける。それが写真家だと思います。

 

 

どの世界もそうだと思いますが、本当は作家って「なりたくてなるもの」はなく、「気がつけばなってるもの」なのですよね。どうしようもなく。

 

林 和美さんの『カメラは感動増幅機』のその他の記事はこちら

第1回「さて何を撮ろう?」

第2回 「今日の獲物」

第3回「残したいもの」

第4回「切取りの美学」

第5回「旅写真のコツ?」

第6回「雨の日は、」

第7回「写真を学ぶ」

第8回「写真の意味?」

第9回「ギャラリーってどんなとこ?」

第10回「路上が教えてくれた事」

第11回「青春の写真部」

第12回「桜の気持ち、自分の気持ち」